デパートデート 1
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短いので本日の夜にも一話アップします!
クリフ様が、日に日にやつれていくような気がする。
目の下に隈を作って、ぼーっと朝食のパンを咀嚼しているクリフ様は、今朝も庭を走ったらしい。
すごく疲れていそうなのにさらに庭を何周も走って、クリフ様は大丈夫なのだろうか。
「クリフ様、お疲れのようですし、今日はゆっくりなさったらどうですか?」
「いや、大丈夫だ。今日は休みの最終日だし、デートに行こう。今日からデパートでドール展をやっているらしいんだ」
バレル王国では昔から人形制作が盛んだ。
それは、女の子が生まれたら、その子が三歳の時に同じ色の髪と瞳の人形を作るという伝統があるからである。
これは貴賤問わずに行われる昔からの慣習で、わたしもストロベリーブロンドにキャラメル色の瞳の女の子の人形を持っていた。結婚する時にも持って来ている。
そんな人形だが、今日から人形作家たちが作った渾身の力作をデパートで展示するというイベントが開かれていた。
見て楽しむだけではなく、その場で製作の依頼もできるという。
お父様が客寄せのために考えたイベントだが、これがことのほか人形作家に好評らしい。
彼等は客の方から連絡をもらって人形を作るのが基本で、自らの力量をアピールする場はこれまで存在しなかった。
特に新人の人形作家は、展示会で目を引けば顧客がつくと大喜びだという。
「わたしも一度覗きたいとは思っていたんですけど、本当に大丈夫ですか? 今日は暑くなりそうですよ?」
体調が悪そうなのに出歩いても問題ないのだろうか。
わたしは心配になったが、クリフ様は首を横に振って「大丈夫だから見に行こう」と言った。
「新婚だからな。仲がいいと世間にアピールするためにも、人が集まる場所に行った方がいい」
なるほど、そういうものか。
わたしが頷いていると、クリフ様はごにょごにょと小声で「それに将来必要になるかもしれないし」と呟いた。将来、初恋の女性と再婚して娘が生まれた時のことを想定しているのだろう。
……今のうちからめぼしい人形作家に目をつけておくのね。
クリフ様がほかの女性との間に生まれた女の子を抱っこしている姿を想像すると、ずーんと気持ちが沈みそうになる。
わたしは沈んだ気持ちを顔に出さないように気を付けて、ちょっと無理をして微笑んだ。
「そう言うことなら、もちろんご一緒します」
「ああ、午後から行こう」
クリフ様がホッとしたように笑う。
そしてまた、ぼーっとしながら朝食の続きを食べはじめた。
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