kokorocentury ― 心の世紀 ―
――これは、心が放つ光が、世界を照らし始める物語――
夜になると、優は決まってスマホを手にする。
毎晩23時、たった一つだけ更新される謎のチャンネル。
その名は――「kokorocentury」。
画面には、誰も知らない風景が映る。
遠い星の静かな海、空に文字が流れる都市、
そして、世界中の誰かが心に抱えた“痛み”と“祈り”のような断片。
最初はただの美しい映像だと思っていた。
だが、ある夜、映像の中に見覚えのある場面が映った。
それは、優が小学生の頃に泣きながら立ち尽くしていた公園だった。
誰にも気づかれず、ただひとりでいた日。
「なぜ……知ってるの?」
画面の中の優に、見知らぬ声が語りかけてきた。
「あなたの感じた孤独は、世界中の誰かの助けになる。」
「あなたの優しさは、まだ見ぬ誰かを救う光になる。」
その瞬間、優の胸に何かが灯った。
kokorocentury――それは、心の記録を未来に届ける放送局だったのだ。
この世界の「誰にも言えなかった想い」が、宇宙を超えて放たれ、
同じように苦しむ誰かに届いていく。
そして、選ばれた者には、ある使命が託される。
それは、「多くの人々の心を救うため、自らがその“発信者”になること」。
優は気づく。
自分がこのチャンネルを見られたのは、偶然なんかじゃない。
自分の感じたこと、傷ついたこと、泣いた夜――
すべてが、誰かの希望に変わる。
「なら……僕も、始めよう」
優は、初めて動画を投稿する。
タイトルは――『ここにいるよ。あなたと同じように。』
再生数はゼロでもいい。
きっと、それを“受信できる誰か”が、どこかで見ているから。
画面の奥に、ひとつだけコメントが届いた。
「あなたの光は、時代を越えて届きます。ようこそ、kokorocenturyへ。」