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05 VSバグ


 俺、シリウス・ヴァーン。この国の宰相の息子であり幼少の頃大精霊を顕現させた神童ともて囃され、婚約者(男)はこの国の第二王子ジーン・フォン・サファイア殿下。義弟には、ヴァーン家の養子となって二年後に世界でも稀少な光属性を開花させたナイル・ヴァーンが居る。


 そんな大精霊とジーン王子、そしてナイルと過ごし早五年。俺は十五歳のタイミングでジーン王子とゲームの舞台である学園へ入学した。精霊魔道士として勉学を学び進級試験も大精霊の力のおかげで難なくクリアして魔法学園の二年生へと進学した春。此度、俺の弟ナイル・ヴァーンことヒロインが一年生として入学する。

 ここで、各人物の好感度ステータスを見てみよう。


 -ジーン・フォン・サファイア-

【好感度】非表示


 -ナイル・ヴァーン-

【好感度】非表示


 -大精霊-

【好感度】非表示


 全員見事に数値の開示不可の状態である。

 十三~十四歳のタイミングで順番に非表示になっていった事があった。このことを大精霊に問うと「好感度80パーセント越えたタイミングでお楽しみ要素として全キャラ非表示になる」と開き直った様子で口にした。

 誰にとってのお楽しみなのだろうかという事はさておき、一先ず全員俺への好感度80を少なくとも越えているということである。どうしてこうなった。何故こんな事にと思う反面、彼らとは数年の付き合いとなりそんな人間達に多少の好意を向けられている事は素直に嬉しい。友愛である事を祈るばかりだ。


「シリウス義兄様と同じ校舎で過ごせる事幸せです。今日は義兄様と同じ部屋の同じベッドで寝ても良いですか?そしておやすみのキスが、」

「シリウスの弟のナイル、お久しぶりです。僕の婚約者とは相変わらず仲が良いですね」

「“今はまだ”義兄様の婚約者のジーン王子じゃないですか、こんにちは」


 ナイルとジーン王子は馬が合わないようで、ここ数年お互い顔を合わせるとよくピキるようになった。

 ナイルがまだ九歳だった頃、俺に婚約者がいると知ったときは大泣きして大変だった。そして王子が屋敷へ訪れた際には可愛い顔で威嚇をし出すものなのだから、既にナイルとジーン王子のヒロインと攻略キャラの関係は崩壊している。王子ルートはほぼ断たれた状態だろう。

 ジーン王子もナイルも子供の頃から既に完成された美しさではあったが、十五歳と十六歳になった今の姿も大変美しい青年へと育った。さすがゲームタイトルはクソゲー臭がきつくても日本中の乙女を虜にさせたゲームの登場キャラクターである。

 だがそんな二人に負けない、人間離れをした造形を持つのが俺の隣に居る大精霊だ。


「ヒロイン“を”取り合うのではなくヒロイン“が”取り合う事になったシナリオにどんな事をしたらなるのだ」


 言い争っている二人を隣で不満そうに見ているのは、銀髪の長身の美青年。彼こそが神もとい大精霊様である。自分で「本来の私はもっと身長も高い圧倒的な美形」と自負するだけの事はあり、二人とはまた違うもはや芸術品のような美しい男へと俺らの成長に合わせて変化していった。大精霊というポジションでなく人間として転移していれば、彼を求めて国同士の争いすら起こったのではないかと思う美しさだ。


「もうシナリオ通りに行こうとするの、お互い諦めね?」


 今の所何一つ上手くいかなかったのだ。

 元の世界に戻るためにこの乙女ゲームとして成立させるために行動しようと努力はしたが、そもそもバグだらけでヒロインは男になっているしヒロインとヒーローは犬猿の仲になっちゃうし、そもそも悪役令嬢男だしでここ数年何も上手くいかなかったのだ。ナイル入学でこの舞台の幕が開けた訳だが今更上手くいく気がしない。もう諦める心づもりもできてしまっていた。


「馬鹿を言うな。俺が他の神に馬鹿にされる」

「まだ言ってんのかそれ」

「もう既に馬鹿にされるネタがあるのに、自分が管理する世界もまともに維持出来なかったと知れたら二度と顔を合わせられない」


 子供の頃は大して変わらなかった身長差だったというのに、今は俺を見下ろすようにそう口にする大精霊。

 この大精霊も、ステータス表示的には俺へ好感度が80以上向けている事となる為、昔好感度のことについて変に上げるなよ~と文句を言った事がある。

 だがその時に「何かあれば人の事ドラ○もんみたに報告し私に話しかけてくるお前のせいだろうが」とキレられた事があるのでこいつの場合義務ステータス上昇のようなものだと思っている。態度も出会った頃と対して変わらないのが何よりの証拠で、これも一種のバグ表示のようなものだろう。


「というか既にってまだお前何かやらかしたのか」

「……まぁな。私にとっては世界の均衡的にも――そういう意味でも、邪魔なあの2人同士がくっついてくれたら片付けが色々楽だという話だ」

「よく分からないけどお前ってうっかり本当に多いな」


 何故私が転生者のスキルごときに影響を……と最期は尻すぼみになりながらぶつぶつぶつと蹲り何かへこみだした。俺の大精霊はここ数年で出会った頃よりも情緒不安定になってしまった。


「大精霊様抜け駆けはお止め下さい」

「むっつり大精霊様、シリウス義兄様に必要以上に近づかないでください!」

「五月蠅い。世界のバグその②とその③」


 きっとバグその①は俺の事なんだろうな。

 まだナイルが入学式を終えて間もないというのに、三人は人目も気にせずギャーギャーと揉めている。だがこれも俺にとってはいつも通りの風景となりつつある。男の婚約者とヒロインの義弟と最強大精霊と悪役令嬢ミスマッチ男という奇妙な関係だ。……良くないことが、俺は割と今のこの関係が案外嫌いじゃない。

 ジーン王子は男の婚約者というややこしい関係ではあるが真面目で素直なところが人として好きだし、ナイルは俺の事をずっと尊敬してくれているが本人自身努力家で可愛くて可愛い。大精霊も――……なんだかんだ良い奴で一番頼りにしてしまっている。


「バグらしい思考なんだろうな、これも」


 俺は本来この世界にとっては間違いの存在で、この世界も乙女ゲームとしては成立しない世界だけれど、せめて“俺達”としてこのバグまみれな学園生活(原作ゲーム)をスタートさせる為騒ぐ3人の元へ急いで向かった。

……きっとこれからも全部上手くいかない、でもきっと全部悪くない日々が続くのだ。



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