表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

魔王健人

魔法、そんなものが約千年前まではこの世界にあった。

種族が人間以外が存在しているのもこれが理由だろう。

魔法を使えない者は虐げられ、魔法を使う者達はある時その力を使って世界を征服しようとしていた。

それには大体の魔法使いが賛同し、その時世界の人口の半分が魔法使いによって被害にあった。

だが能力という異端の力を使いだす者が続々と現れ始めた。

一人の魔法を使えぬ研究者がその力を初めに覚醒させ、他の者にもその能力を付与した。

世界征服を企む魔法使いの人数は500前後。

でもその能力を持つ者の数は10倍の5000人程と言われていた。

能力は魔法より優れないが、その分人数と創造性のある力が多くあった。

例えば、記憶に干渉する能力だったり、真偽を見分ける能力だったりと。

そしてその能力者達によって魔法使いは滅ぼされた。

僕、阿南 健人は魔法使いでも類い稀なる才能で最強と謳われていた。

だが戦争が嫌いだった僕はその戦争に参加することは無く、気付けば魔法使いは僕一人になっていた。

魔法はどうやって生まれたかは不明だが、自分の子孫に受け継がれる可能性が高く、魔法が使えない者から生まれるのは稀だった。

それ故に魔法使いを完全に滅ぼす為に世界が僕を殺そうとした。

僕は自分が無害なことを説明しようとしたのだがそれを聞き入れてくれる人はおらず、その身を隠しながらひっそりと生きていた。

でもある時僕の正体が一人の女性にばれてしまったのだ。

その女性はエルフで、世界で最初に能力を覚醒させたらしい。

そして僕はその人と二人で話すことになった。

その女性の名前はアリィ。

アリィは記憶に干渉する能力をその身に宿していて、僕が本当に危害を加えないのを理解してくれた。

アリィがそれを説明するが民衆はそれを許すことなく、魔法使いは滅びるべきだ......や、信じられるワケがない.....などの意見が寄せられ、僕は民衆に暗殺されそうになる。

このままだとアリィの地位が危ないと思った僕は、いっそのこと死のうと思い自殺しようとするのだが、アリィに見つかってしまい止められてしまった。

そしてそんな僕を、アリィはとある場所に連れて行った。

研究室のような場所だった。

それは洞窟の奥深くにあって、とても人が来るような場所ではなかった。

そこでアリィは僕に聞いた。

まだ生きたいか、と。

僕は不老の秘術をつかって寿命が無い。

だからこそ生きようと思えばいつまででも生きれるのだ。

それ故に僕はアリィに、僕はどうでもいいと伝えるもアリィにはいい案があると言う。

それは..........まず僕の記憶を無くして別の記憶を作る。

そして、僕を千年間眠らせると同時に、アリィの力を使って世界から僕と魔法に関するの記憶を消すとのことだ。

アリィの考えでは、世界に能力を使うことによって体が耐え切れず死ぬ可能性が限りなく高いらしい。

それを聞いて僕は止めようと思った。

だって僕にはそこまでされる理由が無いからだ。

でも彼女は聖女、と言われているのだ。そこまでするのも納得がいけると言えばいける。

それでも考え直してほしいと思ったから止めようと思ったが、時すでに遅し。

彼女は僕に能力を使って、最後に僕に笑顔を見せてその扉から出ていく。

今だからわかる。きっと彼女は誰にも見つからない場所で息を引き取ったのだろう。




「じゃあイリア、お前はアリィの子なのか?」

記憶をある程度思い出した僕はアリィと瓜二つのその少女、イリアにそう問いかける。

「そうだよ。私は健人の記憶からそれを知ったの。」

そうか........っていうか僕は今、記憶を取り戻したというか記憶を失う前の人格に戻ったみたいな感じか。

まぁそれでも、大体の性格は同じみたいだが。

そんなことを考えているとイリアは僕に、

「健人、これからどうするの?」

そう聞いてくる。

どうしたものか、記憶が戻ったとはいえ今の僕に目的なんてものは.........

そこまで考えて僕はあることを思いついた。

そして僕はイリアに、

「イリア、僕は今日から第二の人生を歩むことにするよ。」

僕のその言葉で察したのかイリアは少し悲しそうに、

「そうなんだ.......頑張ってね!健人!」

イリアのその言葉に僕は背を向けて、

「あぁ、ありがとうなイリア。しばらく会えないかもしれない。いや、一生会えないかもしれない。でも、僕はお前に本当に感謝してるぞ。じゃあな。」

そう別れを告げて部屋を出る。

その間イリアは声を掛けてくることは無く、僕は少し罪悪感を感じる。

でも、僕にはやらないといけないことが出来た。

「僕は...........魔王になる。そしてこの世界の敵になるとしよう。」

今の世界は腐っている。

国同士で争っているのなら、僕が魔王となって国同士が手を取り合うよう共通の敵として君臨することにしよう。

そうすれば国同士の争いは消え、きっと平和になるだろう。

僕の命は千年前に無かったも同然だ。

だからここで命を落としたって変わらない。




そんなことを考えながら僕は城を去り町に出る。

魔王になって人間に恐れられるにはどうしたらいいものか。

取り敢えず南を中心としているレディアナイトを潰しに行くとするか。

能力者を殺せば殺すほど世界は僕のことを脅威と思うだろう。

そして噂を流させることにするか、魔王が現れた........と。

そうして僕はこの国の入り口となる門まで来た。

門番がいたが、姿を隠蔽する魔法で素通りすることに成功していた。

「この場所、結構お気に入りだったんだけど仕方ないよな。」

そう呟き、僕は南へと足を運ぶのだった。




「アンナに無断で国を出てしまったが、まぁ大丈夫か。」

この先きっとアンナとは出会うこともないだろう。

アンナは王女なのだから戦いに参加することは無い。

それに、

「魔王となった僕を見たら、何て言うんだろうな。」

雲一つない空を見つめながらそう呟く僕だが、そこで妙な気配を察知する。

盗賊か、丁度よかった。

噂を広めるなら早いうちにやっておいた方がいい。

そう考え、僕は身体能力強化の魔法を使ってその10人近い能力者の大半を気絶させる。

そして僕はそいつらに告げる。

「俺はこの世界の魔王だ。機嫌がいいから今回は見逃してやる。だが、次にまた俺の目の前に現れたらその命は無いと思え。」

だが、そう言っても戦う気がまだあるらしい。

なので僕は腹を括る。

どうせ魔王になるんだ。

人を殺せないようじゃ世界を恐怖に陥れるなんて不可能だ。

だからこそ心を殺せ。

そして僕は雷の魔法を目の前にいる3人の内、一人に放つ。

しかも最大威力で。

範囲を広げると周りの奴らも巻き込まれるので、一人に一点集中する。

すると、喰らった奴は跡一つ残らず消し炭になる。

そしてそれを見て戦意喪失したそいつらの横を通り過ぎながら、

「次は無いからな?」

と言い残す。




はぁ、心を無にするってのは難しいもんだな。

知らない奴だったからまだいけたが、知っている奴が目の前に来たら僕はどうもできないな。

でもやるしかないんだ、それが僕の存在価値。

アリィがかつて戦いに勝利し平和を収めたように、僕も違う方法ではあるがこの世界に平和を取り戻して見せる。

そのためには、もっともっと殺さないといけない。

だからこそいま世界で悪事を働こうとしているレディアナイトを皆殺しにするんだ.............

でもふと思う。

こんな僕の姿を見たらアリィは何て言うんだろうな。

でももう決めたことだ。

しかもすでに一人殺してしまっているんだ。

後には引けない状況、僕にはこの道しか残っていないんだ。

そう考えながらただひたすらに前へ進むのだった。





僕はそれから南の国へ着くまで各地を転々とし、盗賊が出てきたら数人見逃して噂を流させる。

それを繰り返していた。

やがてそれを繰り返している内に、あまり栄えていない村にまでその噂が広まるようになっていた。

「魔王と名乗る者が出現して、出会うと襲い掛かってくる、か。」

良い感じに広まってきている。

でもまだ駄目だ。

こんなもんじゃない。

もっと世界が恐怖するような存在にならないといけないんだ。

だからこそ、もっと規模を大きくしないといけない。

南の国、リョーマ帝国を滅ぼすことできっと僕は本当の魔王になれる。




そうしてゴオト王国を出てから約1か月、僕はやっと南の国リョーマ帝国に辿り着いていた。

僕は面倒くさいことが嫌いだ。

だからこそリョーマ帝国に着いた瞬間巨大な炎の魔法を発動しようとする。

時間が経てば経つほどそれはだんだん大きくなって、やがて国一つ燃やし尽くしてしまうほどの大きさまでになる。

僕はかつて魔法使い最強と言われた。

別にやろうと思えば千年前、能力者どころか世界すら破壊できた。

でも何故やらなかったのか。

それは単純で面倒くさいしする意味がないと思っていたから。

だからこそ国一つ燃やし尽くすなんて僕にかかれば容易だった。

そしてその魔法をリョーマ帝国に向けて放つ。

その瞬間途轍もないほどの轟音が国中に響き渡る。

そして僕は燃えてゆくリョーマ帝国を眺めながら床に寝そべる。

よし、これでいい、これでいいんだ。

後は待つだけだ。

何を待つか?

それはいたって単純、この世界の魔王を討伐しようとする勇者達をただただ待つんだ。

そしてその時が来たら、僕の人生が終わる瞬間だ。

悲しいかな。

千年前までは何にも興味が無くて人にも無関心だった僕が、世界のために魔王になるなんてな。

でも、こんな終わり方が僕には丁度いい。

悪役として終われば僕を気にかける人もいなくなる。

そしてリョーマ帝国がある程度燃え尽きた後、僕は魔力探知の魔法を広範囲に使って眠りに入る。





(アンナ)

健人が居なくなって約一か月、世界には魔王という存在が誕生した。

そして魔王は南の国、リョーマ帝国を焼け野原にしたと今日報告が入った。

健人が居なくなっちゃったし、魔王なんてのが現れるし、私はどうしたらいいのか分かんなくなってしまっていた。

そしてそんなことを考えている私にガルデが、

「アンナ様!今、東の国リクト王国と西の国トーマ王国から話がありました。

内容はこの三国の能力者と騎士団を集わせ、魔王を討伐したいとのことです。」

魔王の討伐..........ね。

私は健人が居なくなってから元気がなくなっていくのを感じていた。

こうゆう時、健人が居たらきっと何か励ましの言葉をかけていてくれたんだろうか、それとも私を煽って怒らせたりしてくるのだろうか。

でも取り敢えずこの魔王討伐には賛成ね。

「えぇ、私もそれには賛成よ。世界の危機に力を貸さないわけにはいかないもの。」

「そうですか。ではそれを伝えておきます。三国賛成の場合日程は1週間後に転移の能力を使える能力者がリクト王国とトーマ王国を私たちの国まで連れて来て、そこから魔王が居ると言われているリョーマ帝国に転移するとのことです。」

「分かったわ。」

そして、私の異変を察したのか分からないがガルデは私を見て、

「アンナ様、あんまり気負いなさらないでくださいね。」

そう言って私の部屋を出て行った。

そしてガルデと入れ替わるように、イリアちゃんが私の部屋に入って来た。

それと同時にイリアちゃんは私に言う。

「アンナ姉ちゃん、今この世界に魔王という存在が現れたでしょ?それ、多分健人なの。」

そんな衝撃的なことを。

そしてイリアちゃんは健人が居なくなった日に起こったことを全部ありのままに説明してくれた。

それを聞いた私は呆気にとられていた。

「健人が千年前から生きてる?」

そんなことがあり得るのだろうか。

そして魔法、そんな異端の力を扱っているらしい。

確かに健人の力は途轍もなかった。

そして能力を二つ持っている人はこの世界に一人も居ない。

でも、

「だったら、私も魔王のところに行かないといけないわね。」

聞かないといけない。

健人が本当に本心でそんなことをしているのか。

もし、もしもだが、それが本心じゃなかったのだとしたら.........私は健人を連れ戻したい。

こっちの世界へまた、戻ってきてほしい。

でも、健人の意思でやっていることなのだとしたら?

私はどうしたらいい。

でもそれは行ってみないと分からない。

そして私は決心するのだった。

死んでもいい、それでも健人に会いに行くと。



そして一週間が経った。

やっとだ、この日が私は待ち遠しくてたまらなかった。

「アンナ様、本当に貴女も行くのですか?」

心配そうな顔でそう聞いてくるガルデに私は、

「えぇ、これだけは絶対よ。行かないといけない理由が出来たの。」

そう覚悟を決めた顔で言う。

その私の顔を見たガルデは笑みを浮かべて、

「分かりましたよ。では、全力でお守りいたします!」

私はその言葉にただ頷く。

そして三国全員が集まる。

それを見た私は、

「それでは行きましょう、魔王の元へ。」

そうして始まる。

私と魔王健人の物語が。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
楽しみすぎるwwwこれは期待
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ