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無能力

「痛ってて、」

僕、阿南 健人はそこで目を覚ました。

ここ、何処だっけ?そう思い周りを見てみることにした。

辺りを見渡せば知らない景色広がっていた。

見たことがないくらいに大きな木、そして透き通った湖。遠くには大きな町も見える。

「いや、街というか国だな。」

いやいやそんなことより、

「何でこんな所に居るんだっけ。」

確か僕は、、、

「あれ?」

上手く思い出せないな。何とか思い出そうとしてもなかなか思い出すことが出来ない。

自分の名前、そして昨日までの記憶ははっきりとしている。

でも、

「今日僕は確か、、、」

そうしてそこで断片的だが思い出す。

「今日起きて学校に向かって、そして、、、」

そこまでだった。

僕の記憶はそこで途切れていた。

何かここで目を覚ましてから違和感もあるしどうしたものか。



そうやって悩んでいたその時だった、

「アンタ、誰だ?」

後ろから声を掛けられた。

そして僕が振り向いたころには首元にナイフが当てられていて、

「そんなモン向けないでくださいよー。何かしたなら謝りますから。」

流石に死にたくないので会話を試みる。

急にナイフを当ててきてどんな奴かと見てみれば騎士のような人が三人、一人は俺にナイフを向け二人は何かを後ろで隠しているように見える。

「僕は敵じゃない!」

そう言って両手を上げながら、騎士二人が隠そうをしているものに目を凝らす。

「お姫、様?」

僕が思わずそう声を漏らすと、

「何だ?お前知らないのか?」

何のことだかさっぱりわからない僕は、

「何をですか?」

そう聞き返す。

「今俺達ゴオト王国騎士団は、そこにおられるアンナ王女の護衛をしている途中なのだ。」

そうだったのか、ってえ?

そんな国聞いたことないしこの幻想的な場所、そして騎士団。

これは異世界、という奴なのか?

「てっきりアンナ王女を狙った輩だと思ったのだが、違うのか?」

そう聞かれ僕は、

「王女どころかここが何処かすらわからん。」

まだ疑心暗鬼といった様子の騎士は警戒しながらもナイフを下ろした。

争いは出来るだけ起こしたくない。

しかも僕は何も武器を持ってないし人数不利。

それ故に、

「僕を王国に連れて行ってくれないか?もちろん何もできないように手足を縛ってくれて構わない。」

それを聞いた目の前の騎士は、

「まだ信用ならぬな。そう言って能力を使って殺そう、そう思っている可能性もある。」

そう言われてしまった。

能力、か。

異世界ならそんなものもあっても違和感はない。

ならどうしたものか、そう思考していると今まで後ろで姿を隠しているアンナ王女とやらが前に出てきてこう告げた。

「私の能力を使いましょう。この私の能力、真偽を見分ける能力で。」

ほう、そんな能力があるのか。

異世界系だったら炎や雷などの攻撃する能力が真っ先に頭に浮かぶが、アンナ王女の能力も使い道が沢山ありそうだ。

「で、どうです?僕は嘘をついていますか?」

数分経っても反応がないので聞いてみる。

「いえ、貴方はどうやら正直者のようです。私たちゴオト王国は正直者には消して悪いようにはしません。ガルデさん、このお方も連れて行きましょう。」

「分かりました。さっきはすまなかったな、ええと、、、」

そこでガルデとやらは一瞬考える素振りをして、

「名前は何なんだ?」

そう聞かれた。

確かに一回も名乗ってはいなかったか。

「僕の名前は健人、まあ呼び名は何でもいい。それより早く行こう。お腹がすいてるもんでな。」

「ええ、そうしましょう。」



そうして僕はアンナ王女一行とゴオト王国に向かう。

移動中僕はあることを考えていた。

ガルデは能力があると言っていた。だったら、ナイフを持っているのは少しおかしい。

ガルデともう二人の騎士が戦闘向きの能力を有していたらナイフを持っていてもナイフで近づいてこないはずだ。

能力があるなら近づくのはリスクがある。

しかも王女を護衛となると相当強い護衛が必要だ。

その護衛が能力を持っていないとなるとこの世界の事情は理解していないがこの国は国としてはかなり弱いんじゃないのか?。

「まぁ、いいか。」

小声でそう呟く。

「なぁ健人お前何であそこにいたんだ?あそこは魔物や盗賊が出やすい森だぞ。」

あー、そこらへんを説明してなかったな。

「記憶があんまりなくて気づくとあそこにいたんだ。」

「じゃあお前どっか違う国からここに迷い込んだりしたのか?」

そう聞かれ、どうやって誤魔化そうか迷った結果、

「いや、記憶喪失なんだ。だからどこの国から来たのかもわかんない。」

僕がそう言った瞬間、アンナ王女がこちらを睨んできた。

やべ、アンナ王女は真偽が分かるんだったな。でもそれを言わないのを見るに僕のことを少し考えてくれているのかもしれないな。

「な、なんだ!?」

ガルデがそう声を上げる。

王国にもうすぐ着くといったところでいきなり森の飛行生物が一気にどこかに逃げていく。

僕達は歩きで王国に向かっているので今ここで敵にあったら逃げられない。

「後ろよ!」

アンナ王女が後ろを指す。

「アンナ王女!我々の後ろに!」

ガルデにそう言われたアンナ王女は言われた通りに後ろに隠れる。

そして現れたのは体長3mくらいのイノシシだった。

でも何か様子が変だった。

自我が無いような、まるで操られているような動きだった。

そして能力、武器を持ちえない僕は何をすればいいか一瞬で思考する。

「ガルデ!僕はどうしたらいい!」

「王女様の近くにいてくれ!一体だけじゃないかもしれない!」

それを聞いた僕はすぐにアンナ王女の方に移動する。

でもその刹那、僕とアンナ王女のすぐ近くにガルデの体が吹っ飛ばされる。

「ちょっ!ちょっとガルデ大丈夫!?」

そうアンナ王女は聞くがガルデの意識はなくなっている。

僕はガルデの体をごそごそと漁り、ナイフを手に取る。



(アンナ王女)

私は地面に座って怯えていた。

ゴオト王国で数少ない能力持ちではあるが、戦闘向きではない。

それ故にこの戦いに介入することは出来ない。

いや、体が拒んでいるんだ。

そして私がこんなことを考えている間にほかの二人ももう地に伏している。

多分皆まだ息はある。

でもあのイノシシはこちらを見た瞬間こちらに歩みを寄せる。

あと数mといったところ。

そこでイノシシは止まる。何故かと私は不思議に思い立ち上がる。

「!?」

私が立ち上がった瞬間、イノシシは倒れる。

そして私は見てしまった。

イノシシが倒れて、その後ろには。

「け、健人!?なんでそこに!?」

数秒経ってやっと理解した。

彼がこのイノシシを倒したのだ、と。



僕はガルデが吹っ飛ばされた瞬間ナイフを手に取り森の中に姿を消した。

真っ向勝負ではあの大きさのイノシシ相手に勝つことは不可能。

だからこそ僕はガルデ以外の騎士二人も倒れるまで待った。

そしてあのイノシシがアンナ王女にフォーカスする瞬間そこを狙った。

出来るだけ殺意、気配を消して近づき急所を狙う。

そう皆思うだろう。僕は最低だ。必死に戦った彼らを囮にしてそこを狩る。

まあでも、僕はもともとこんな人間だった。

そうだ、普通の世界でも情なんてないも同然。

いや、そんなこと考えている暇はないか。

「大丈夫か!?アンナ王女!」

「え、えぇ大丈夫よ。あなたのお陰でね。」

「そうか、」

僕はそれを聞くと、ガルデ達三人を引っ張り一旦森から抜け出す為に移動する。

もうすぐで森を抜けれるといったところでイノシシと接敵したので案外すぐ抜けれた。

でもこのまま王国へは流石に体力が持たないので近くに拠点を作って一泊してガルデ達の体力が戻り次第出発の予定になった。



そしてもうすぐ寝ようとなった時、アンナ王女が、

「少し、お話良いです?」

そう聞きながら僕の隣に座る。

「あぁ、いいがどうした?」

「貴方が移動中記憶喪失と言いましたね、でも私には嘘がわかります。本当はなぜあそこにいたか教えてもらえませんか?」

「まぁ、気付いたらあそこにいたのは本当だ。今までの記憶はある、でも今日の記憶だけないんだ。」

「そうなんですね、それはもしかしたら今世界で悪事を働こうとしている能力者集団レディアナイトの仕業かもしれません。」

「レディアナイト、か。」

「えぇ、ゴオト王国の軍事力では対抗するのはきっと難しいです。その理由は世界各国の能力者をレディアナイトがそそのかして組織を大きくしているのです。」

「そうなのかこの世界に国はいくつくらいあるんだ?」

ある程度の事情を把握したいため聞いてみる。

「この世界には今、4つの国があります。私たちのゴオト王国は北に位置していて、東、南、西に1つずつ国が存在しています。そしてレディアナイトは主に南を中心に活動していると聞きます。」

「そうか、ありがとう。まあ大体は分かった。もう夜遅いからそろそろ寝た方がいい。僕は見張りをしておく、安心して寝ると言い。」

するとアンナ王女は微笑を浮かべ、

「分かりました。寝ることにします。健人さんもつらかったらすぐに寝て大丈夫ですよ。」

それに僕は頷く。

するとガルデ達がいる寝床の近くでアンナ王女は横になった。

なんか危なっかしい世界に来たもんだ。

まぁ、大丈夫か。

取り敢えず目の前にある問題をいろいろと解決していくか。

そしてある程度時間が経ち、睡魔に襲われた僕は目を閉じ、意識は闇に落ちていくのだった。

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