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第一話 生贄制度(side玉藻)


『あんたの顔は腹立つのよ!!』


 ヒステリックに叫ぶ母から顔面目掛け熱湯をかけられたのは私が十二歳になった年の冬だった。

 生まれた時、愛らしい顔をしていたらしい私は、美しさで人々を魅了した『玉藻前(たまものまえ)』という美女にあやかって、『玉藻(たまも)』という名前をつけられた。

 その名前の通り、成長していくたびにどんどん愛らしくなっていく私に、母は嫉妬し、熱湯をかけた。

 私の顔面の右の額から上頬までは酷い火傷で人前に出ることもできなくなり、中学校もまともに行かず、ほぼ登校せずの中卒で亡霊のように過ごす私を家族も村の人々も良く思わないんだろうと薄々気付いていた。


 私は、独学で高校卒業レベルの学力は身につけたものの、教養は全く教えられなかったので、これからどうしようかと思っていた十八の秋、かの有名な『酒呑童子(しゅてんどうじ)』という鬼の子孫であると言われている、鬼王(おにおう)家の次男、雲雀(ひばり)さんの花嫁に行け、と、通知が来た。


 所謂、代々続く生贄制度である。

 鬼王家と私たちの住む地域には花嫁という生贄を捧げられる代わりに、鬼は地域で悪さをせず、災いから地域を守るという、そんなしきたりがあった。


 鬼、なんて信じていなかったけれど、私の名前の由来になった玉藻前も九尾の狐だったというはなしもあるし、調べれば調べるほどに泥沼に入っていく感じがした。


『愛されたい』なんて希望じみた願望もあったのかもしれない。

 実家でいても、地元でいても疎まれるだけならいっそ、ここから鬼でも王子様にでも助け出してもらおう。なんて、バカなことを思った。


『鬼』のことを何も知らないのに。

『自分』のことも何も知らないのに。


 きっと、幸せになれると信じて、私は、『生贄』になることを了承した。


「お家のため。私は死んだも同然と思うことにします」


 そんな嫌味を『家族』に残して。


ーつづくー

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