1 鳳凰学園2年A組集団失踪
UPそうそう、少しわかりにくい部分や、書き足しを加えました。
令和4年10月末日。 鳳凰学園2年A組の生徒36名全員が昼の休憩中に集団失踪した。
教室には食べかけの弁当やパンなどが残されており、食堂でラーメンをすすっていた生徒が他のクラスの生徒(多数の目撃者)の目の前で忽然と消え、購買部で並んでいた生徒も忽然と消えたと言う証言があった。
生徒たちが騒いでいたが何を馬鹿なことを言っているんだと教師たちは取り合わなかった。
が、5時間目の授業に2年A組に訪れた教師が生徒が一人もいないこと、机の上には食べかけの弁当やパンなどが残されていたことで慌てて職員室へと報告に行き、授業を受け持っていない教師、用務員、警備員で生徒を探すものの誰ひとり見つけることができず同日、14時20分に警察へ集団失踪として届けられた。
目撃者は多数いたものの話す内容が荒唐無稽なため集団ノイローゼと判断された。
目撃証言
1 食堂で目の前で話しながらラーメンを啜っていたw君が、見ている目の前で赤い魔法陣のようなものが浮かび上がり、驚いてみているとw君が足元から消失していった。
目撃者は17人。(赤い魔法陣に驚いて注目したため目撃者が多かった)
2 購買部の帰りに2年A組の教室の前を通りがかった生徒が、赤い光を目の端に感じて2年A組の教室を注視すると赤い魔法陣のようなものが足元から上へと上がっていき、魔法陣が教室の天井まで届くと生徒たちがいなくなっていた。
目撃者は4名。
3 2年A組の真上の教室1年A組の教室の床に数秒赤い魔法陣が浮かんですぐに消えた。
目撃者は24人。
4 運動場からの目撃者。2年A組の教室の窓から赤い光が数十秒程漏れていた。天井付近に赤い魔法陣を視認。
目撃者は31人。
5 購買部で順番を並んでいると2年A組(後で2年A組の生徒と判明)の生徒の足元に赤い魔法陣が浮かんで足元から消えていった。
目撃者は44人。(購買スタッフ3人も含む)
目撃者の氏名・学年・クラスは別紙記載。
警察と教師で生徒の携帯及び自宅へ電話をかけたものの、全員のスマホからは電源が入っていないとアナウンスが流れた。
自宅への電話はほとんどの親が留守にしていたため電話に出ることはなく、放課後から1時間経つまで登録連絡先に電話することは見送られた。
放課後1時間が経ち登録連絡先に連絡するものの、生徒の行方を知る保護者はいなかった。
同日18時、学校の講堂に保護者が集まるものの、説明できることはほとんどなく、依然として生徒の行方は解らないまま同日20時、保護者解散となる。
警察官200名を導入して生徒の捜索にあたったが、2週間経っても誰一人見つからなかった。
警察の積極的捜索は打ち切りとなった。
目撃証言の生徒氏名等、別紙記載。
後日記
令和5年4月10日(月曜)
2年A組の教室はそのまま残されるものの、生徒の消息不明のままである。
令和6年3月某日
2年A組の生徒を卒業させるか話し合われるものの、半数以上の保護者の反対があり、2年A組の教室はそのまま残すことが決定される。
令和6年4月8日(月曜)
2年A組の教室は生徒たちが見つかるまでそのまま残すことが決定された。
生徒は依然見つからないまま。
閲覧不可項目
令和6年7月3日 シンガポール
鳳凰学園の2年A組生徒だというX(若葉弘悦)さん(男性)が発見され、同年7月4日日本大使館で保護される。
令和6年7月6日
内密に日本に帰郷
事情聴取が行われるものの、Xさんの話す内容は荒唐無稽過ぎて理解不能と判断され、精神科の判定を受けてもらうことが決まる。
令和6年7月14日
Xさんが異世界転移を言い張るため、取調官と刑事課第7課課長の3人で地球上で転移を試みる。
警察官10名の目の前で一瞬にして3名が姿を消す。
Xさんに同行した3名はシンガポールのプンゴルビーチに行ったと証言。(現地の人に住所確認した)
その後何度も地球上で転移を試みて、Xさんは間違いなく転移ができることを実証した。
Xさんは異世界にも転移ができると話すものの、他者を異世界に連れて行くことを強く拒否した。
令和6年7月28日(日曜日)
鳳凰学園の講堂に2年A組の保護者一同が集められる。
Xさんが32人の2年A組の生徒を異世界から連れて帰る。
保護者と再会を喜び、自宅へと戻るものの8月4日戻ってきた32名全員が異世界へと帰ることを望み、Xさんが異世界へと送り届ける。
異世界から一度も戻って来ない4名は家庭に問題があり、同年7月28日に保護者も現れなかった。
Xさん曰く4名に関しては二度と戻ってこない可能性が大きいとのことだった。
無事かどうか確認が取りたいので1度連れ帰って欲しいと頼むとXさんは「聞いてみる」と異世界へ転移し、某警察署の会議室に当時担任だった幸田唯一さんと学園長、白葉紗絵子さん、他警察官7名、内閣官房長官、抛棄亀一氏の立ち会いのもとで一時帰郷した。
警察官7名の氏名は別紙記載。
4名の生徒は至って元気で異世界で楽しんでいるとのことで、令和7年早々にも魔王討伐ができるだろうと話していた。
何度も意思確認したが日本に帰ってくるつもりはないとのことだった。
3時間程の面会で生徒たちは其々食事を楽しんで「ごちそうさま」と言い残して異世界へと戻った。
* 注意
2年A組は異世界から召喚魔術で呼び出されたとのこと。
各々魔法の力を与えられ、魔王討伐のために日々レベル上げをしているとのこと。
魔王は既に誕生しているが今はまだ弱く、所在が掴めないため魔王との戦いはまだ始まっていないとのこと。
「魔王討伐に危険はないのか?」と問うと「海外に派遣されている自衛隊員に危険はないのか?」と逆に問い返された。
鳳凰学園2年A組のこの後の対応は内閣府が担当することと通達があり、警視庁が関わることは終了とする。
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内閣総理大臣・別東屋完陶は様々な分野の第一人者から話を聞いたが、理解できない。いや、認めたくなかった。
実際にXさんに会って、転移でホワイトハウスの前に連れて行かれて、初めて転移というものがあることを理解した。
転移したのは私とXさんの二人だけでSPも連れずに転移した。
Xさんに「この話は内密にお願いします」と打ち明け話をされた。
Xさんは異世界転移をすると魔法が付与されるのだと言うのだ。とてもじゃないが信じられん。
そんな話など信じられなかったが、実際Xさんは転移という魔法を付与されているので信じるほかなかった。
Xさんは「このまま異世界転移してみますか?」と聞いてきたので私は言葉もなく頷いた。
瞬時に景色が変わってどこかの室内だった。
内心ワクワクしていると瞬きひとつ分の時間も掛からずに、ホワイトハウスの前からの移動が終了してしまった。
Xさん曰く「異世界の召喚魔法を使用した国の王城の1室です。異世界転移したのでこの世界の言語はすべて理解できるはずです」と言った。
Xさんについて歩くとこの国の宰相だという人に人を介さず会うことができた。
もしかするとXさんはこの国で意外と重要人物なのかもしれない。
Xさんとは人を介さずじっくり話さなくてはならないと思う。
この国の宰相と会ってとにかく驚いた。いい歳をした・・・多分40代前半だろう宰相が、ピンク色の髪をしていたからだ。瞳の色はよく見ると紺色だった。
この異世界には男女平等など存在しない世界らしいので、宰相は勿論男性だ。
宰相の補佐をしている人はオレンジの髪色で、もう一人の人は真緑の髪色をしていた。瞳の色まで瞬時に観察判断はできなかった。
日本人には髪色や瞳の色を識別する能力が低いので仕方ないことかもしれないが、瞳の色もぜひとも知りたかった。
その他何人かの人を見かけたが地球ではありえない髪色と瞳の色をしていた。
Xさんは私のことをXさんが住む世界の宰相で完陶・別東屋だと紹介した。
異世界の宰相は真っ先に謝罪を述べてきた。
謝罪に頭を下げる習慣はないようだ。ただ真摯に謝罪しているのは理解できた。
召喚者だけでなく不思議なことに転生者も結構な人数がいるのだという。
転生者が理解できなかったので後でXさんに教えてもらった。
生まれたときから地球の知識がある者、成長途中に突然地球のことを思い出す者、色々な理由で思い出す者がいるらしい。
今までの召喚された人たちが、数名の転生者と話をしたところ、地球の日本生まれの日本育ちに間違いないとのことだった。
転生者の過去の名前が書かれた紙を渡されて、調べてみて欲しいと頼まれた。
渡された用紙は日本のコピー用紙と寸分たがわない紙が使用されていた。
Xさんは地球と異世界を行ったり来たりしているんではないだろうか?
本当に一度ゆっくり話してみなければならない。
そして50年前にも異世界召喚をしていた人がいる事を聞かされ、その時には異世界転移ができる者がいなかったため、地球にその当時の召喚者を帰すことができなかったとまた詫びてきた。
ただ私には50年前の失踪事件に心当たりはなくて、後でこれについても調べてみなくてはならないなとため息が出そうになった。
その人達の当時住んでいた住所・氏名が書かれた紙も同じく渡された。
どうやら新たな課を発足させなければならないと感じた。
私が地球を長く不在にできないため2時間ほど話をして、これからも対話をする約束をして時間切れで地球に戻ることになった。
帰る間際Xさんが「総理は炎属性なのですね。指先に蝋燭の炎が灯るのを思い浮かべて「着火」と詠唱してみてください」と言われたので「着火」と唱えてみると右手の指先の少し上に蝋燭の炎と同じ炎が現れた。
「ど、どうやって消せばいいのかね?!」
「イメージで消してください」
頭の中で炎を消すと指先の炎も消えた。
「なんと!!」
「これで総理も魔法使いですね。寝言で『着火』と言わないように気をつけてくださいね。家が燃えちゃいますから」
そう言ってXさんは笑った。
「これで解ってもらえたでしょうか?異世界に簡単に地球の人を連れてこれないことが」
「君がちゃんと考えてくれる人で助かったよ」
「そう言ってもらえてホッとしました。正直五十年前の魔王討伐で召喚されて、今も生き残っている人の中には地球に帰りたいと言っている人がいるんですが、日本での年金も支払っていない、年が年だから働くこともできない人を日本が抱えることになった場合の事を考えるとちょっと怖くて・・・全員魔法使えますし、レベル高いですし、その力を振るったらと思うと・・・」
「・・・そうだね。日本に送り返すときには相談して欲しい」
「僕は総理の許可がない限りこの世界にいる人を地球に戻したりしませんので安心してください。僕も責任取れませんし・・・」
「そうしてくれるとありがたい」
「ただ一つお願いがあるんですが・・・」
「なにかな?」
「この世界の金や宝石を買い取ってほしいいのです」
「それは紙などを買うためかい?」
ちょっと悪い顔をしてやるとXさんは気まずそうな顔をした。
「まぁ、それもありますが、クラスの皆が欲しいものがあるんです。女の子に至っては下着類は日本のもののほうがいいらしくって、それを買うための日本円が必要なんです」
「金や宝石はありがたいくらいななので相場が崩れない程度ならかまわない。ただその時時の相場通りでしか買えないよ」
「勿論それで構いません。信じてもらいにくいかもしれませんが、僕達この世界では億万長者なんですよ」
「そうなのかい?」
「魔物を狩って素材を売るだけでもそれなりの収入になるんですが、国から給料も支払われているんですよ。日本では稼げないような金額を」
「だから地球には帰りたくないのかな?」
「あー・・・それもあるかもしれませんね。実を言うと秘密裏にできることなら僕たちは高校を卒業したいと考えています。知識はあればあるほどいいですから。でもそれも魔王を倒してからのことになりますが」
「そうか・・・。少し考えておくよ」
「よろしくお願いします」
地球に戻ってからは頭が痛いことだらけになった。
異世界転移・転生者課を立ち上げたほうがいいかもしれんと思った。
異世界のことを日本国民に話すべきか話さざるべきか・・・。
きっと私の頭がおかしくなったと思われるんだろうと思うと頭を抱えたくなった。
次話、内閣総理大臣・別東屋(笑)から発表があります。