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33.穏やかな方が怒ると怖いですわ

 ドレスデザイン決めももう三日目に突入していた。一日目でドレスデザインが決まったが、エイダーの衣装で民族衣装を一部取り入れようという話になり再度ドレスデザインを修整して今に至っていた。


「やっぱり婚約衣装はシンメトリーでなきゃ。この文様をドレスの袖と侯爵様の裏側にしたいですわね」

「裏地は、地味すぎじゃないかしら。侯爵様の上着の胸ポケットに文様を刺繍した薔薇の造花を入れるのはどう?」

「薔薇を胸元に刺すなら侯爵家の薔薇を挿したいですね。カルノーどうしたんですか」

「皇室から手紙だ」


 カルノーが手渡した手紙には、皇室の象徴であるデザートローズとドラゴンの押印がされている。エイダーは、受け取って手紙にすぐに開けた。


「皇帝は、とても暇らしいですね。とても愉快な手紙を送ってくれたものです」


 エイダーは、青筋を浮かべ皇帝からの手紙を握り込んでいる。あまりの気迫にデザイン論争をしていたシャネルとミラレスが黙るほどだった。


「ミラレス嬢、同時並行で皇帝へ謁見するドレスを作っていただきたい。民族衣装モチーフは、謁見用のドレスで使用しましょう」

「皇帝と謁見? 新年の宴では遅いのですか」

「先に謁見を済ませなければ婚約誓約書を受理しないと返答してきました」


 エイダーは、エルメスにも手紙を見せてくれたが間違いなくそんな内容が書かれている。


「アタクシ、高位貴族のお客様もおりましたわ。でも婚姻ならばともかく婚約誓約書で皇帝と謁見が必要なんて聞いたことがありません」

「もしかして皇室にエルメスを迎えたいのかも」

「私を? そんな話聞いてないわ。お姉様」


 エルメスは、結婚に向けて先に伯爵家に行っていたもののシャネルとの会話を欠かしていなかった。それなのになぜ知らないのか。


「馬鹿伯爵と結婚した時にシュルプリーズ家の当主だから、前伯爵と話をしたのよ。ただ前伯爵が近衛隊長で忙しいから皇城でということで行ったら皇帝がいたの」

「皇室陛下が? 前伯爵に呼ばれて行ったのですわよね」

「えぇ、そうなの。でもそのときに息子達と年齢の釣り合いが取れれば嫁に来て欲しかったと言っていたのよ。でもうちは、子爵家じゃない?皇室へ嫁に行くには家格が低いから冗談だと思っていたの」


 侯爵と子爵でも高いのに皇室などまずありえない。あるとすれば側室だろうが、そんな打診もされていない。


「それは婚約してすぐはシュルプリーズ商会が立ち直っていなかったからではないですか。お客様の噂で耳にするのは、皇室は、嫁入りに入る財産が欲しいのでしょう」

「年々中央の砂漠化が進んで農産物が育たなくなっています。他国からの輸入だよりです。何かしないと国庫が空になる」


 エルメスも気がついており伯爵領を盛り立てていた。穀物が優先されるものの肉も必要なことくらいわかる。


「それだけではなく皇室は、アフェクシオンを煙たがってましてね。初代が優秀で何代か優秀な当主だったので反乱や独立を恐れていたんです。力をつけて欲しくないのでしょう」

「閣下、伯爵領の出だから他領がわからないんですが家の興りが皇族なんですよね? 何を恐れているんですか」

「同じ王族でも母の一族が異なります。皇室は、中央でも力があった正妃になった部族。アフェクシオンは、南の方で力があった側妃の部族と聞いています」

「多民族国家だからそういうこともありますわね。本当の身内扱いされないということですのね」


 初代皇帝は、帝国を建国後内乱が起きないように各地の有力者の娘を娶ったとされている。


「そういう背景もあって数代前の時に津波被害を受けて税収が下がったのを理由に公爵から侯爵に下げられています」

「だから侯爵なんですね。平民でも皇帝の子どもは、公爵家に嫁ぐって聞いていたから不思議でした」

「テナシテ嬢は、伯爵領の職人でしたね。まだ平民の教育は進んでいないと思っていました」

「エルメス様が子どもの教育をしてそのついでに私も聞く機会があったから知っていたんです。珍しいことですか」

「とても珍しいです。貴族は、労働力として見ていて教育するのは愚かだというのものもいます。でも僕は、領民が自ら考えて身を守れるようにしたい」


 エルメスには、エイダーが最終的に何をしたいのかわからない。でもエイダーならわかるまで根気強くエルメスに教えてくれるだろう。


「エイダー、私あなたがどうしていきたいのかわからないわ。だからもっと詳しく教えてくださる?」

「もちろん」


 エイダーがエルメスの手をとって見つめ合うと咳払いが聞こえた。


「それぞれやることやるために解散でいいんだよな。エイダー」

「カルノー」

「これから忙しくなるんだろう。時間が惜しいじゃあな」


 カルノーを筆頭に部屋から出ていってしまった。


「気を利かせすぎではありません?」

「でも大事な話だからよろしくお願いします」


 夕食で呼ばれるまでこれからどうしたいのかエイダーと話し合った。過去や今の話ではなく大事な人と未来を語れるのは、有意義でとても楽しい時間だとエルメスは思っていた。

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