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31.姉妹は似ると誰が言いましたかしら

 エイダーの体調不良がすっかり治ったころ、アフェクシオン侯爵邸に帝都からの客人が訪れた。


「エルメス! 会いたかったわ。あらやつれたんじゃないの?」

「姉さん、健康的な生活をしていたので痩せたのですわ。お姉様は、相変わらずお元気そう」

「可愛い妹に会うのに元気が出ないわけがないじゃない」


 シャネルは、力いっぱい抱きしめるので変わらないなとエルメスは苦笑した。エイダーは、あまりの勢いにびっくりしたようだった。シャネルの後ろでは、こういうことに慣れっこの笑顔のルイが立っている。位が高い方から声をかけるのだが、私的な場なのでエルメスが間に入ることにした。


「エイダー、姉のシュルプリーズ子爵シャネルと甥のルイですわ」

「はじめまして、アフェクシオン侯爵のエイダーです。帝国一の商会長に会えるのを楽しみにしていました」

「私も、未来の義弟に会えてうれしいわ」


 シャネルは、挨拶の後にエイダーへルイを紹介した。ルイは、満面の笑みを浮かべて挨拶する。


「閣下お会いできて光栄です。閣下が知らないエルメスお姉さんの話が出来そうで嬉しいです」

「流石エルメスの甥は、賢いですね。未来のシュルプリーズ商会長、子爵に会えて嬉しいですよ」


 エイダーがルイへ手を差し出すと微笑ましいはずなのに少し不穏に思うのはなぜなのか。エルメスは、まだ少年でも貴族の子息として成長してきているということかもしれないと思っていた。


「そういえば姉さん、これから新年の宴にむけて忙しい時期なのにどうしたの?」

「あなたに紹介したい人がいるの。今のエルメスを見たら特にそう思うわ。アフェクシオン侯爵呼んでよいかしら」



 エイダーが快諾すると同時に、扉が勢いよく開け放たれる。


「エルメスさま! お久しぶりですわぁ」


 エルメスへアッシュグレーの短い髪を揺らしずんずんと歩いてくるのは、帝国一のブティックを持つミラレスだった。伯爵家にいたときに駆け出しだったミラレスのセンスに惹かれ宣伝したのがきっかけで仲良くなったのだった。


「ミラレス、どうしてここにいるの。あなたも忙しいはずじゃないの」

「聞いてよ。あなたの元旦那が脱税したとか言って店の商品を全部持って行ったのよ。もう! 最近、最高級生地が手に入って何を作ろうかって楽しみにしてたのに最悪よ!」

「ちょっと、確かに嫌でしょうけど貴方は、店の顔でしょう? 落ち着きなさい」


 ミラレスは、エルメスの言葉に落ち着きを取り戻すと出されたお茶を一気に飲んだ。


「それでも注文や抱えているお針子がいたでしょう? どうなさったの」

「騎士団に乗り込まれたブティックで仕立てられないと注文が全て取りやめになったのよ。こうなったらあの家柄だけの節穴坊ちゃんにぎゃふんと言わせたくて手伝って欲しいの」

「もしやエルメスのドレスが作りたいという話しでしょうか」


「その通り! 逃がした魚が大きいのと原点回帰でエルメスさまのドレスを作らせていただきたいのですわ」

「素晴らしい! 腕とセンスの良い方を探していたんです。なんなら工房とお針子も紹介しましょう」

「あら、そういえばどなた? 話がわかる良い方ね」

「ミラレス落ち着きなさい。この方は、アフェクシオン侯爵よ」


 ミラレスは、侯爵と聞いてひくかと思いきや顔を見てからぐるりと一周して頷き始める。


「なら噂のエルメス嬢の婚約者ね。あらあら色見は地味だけど顔立ちは整っているわね。これは、化粧とデザインで化けるわね。ぜひ閣下も含めて新年の宴の服のデザインを作らせてくださいませ。楽しみだわ!」

「そうそう、近くの港町にテナシテが工房を構えているの」


 時々様子を見に行っているが南の穏やかで明るい気性が会うらしく楽しそうに仕事をしていた。


「伯爵領にいた方ね。まぁまぁ、やりたい放題出来そうで良いわ。うふふふぅ」

「デザインについては、ぜひ僕も混ぜてください。はじめて二人で出られる公式行事ですから」

「思い出の一品になるように善処いたしますわぁ」


 エルメスとしても、エイダーとテナシテの勢いに少し引き気味になる。


「楽しそうなお話ですね。シュルプリーズ商会も噛ませて欲しいですわ。あの男に一泡吹かせたいと思ってたもの」


 シャネルまで乗り気になったのを見てどうなるのだろうかと不安になるのだった。


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