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29.巡り巡って楽しいわ

 カルノーの言葉通り、朝早くにサージュを伴って庭の薔薇を見にきている。エルメスが来た夏に比べて朝は肌寒くなっている。


「早朝に来てみたけれど本当にいらっしゃるのね」

「旦那様は、薔薇の手入れが日課ですから。それにエルメス様にお渡ししている薔薇は、旦那様が選んでいますから」


 侯爵だというのに豆なことだと思いつつ、昨夜熱があったのだから大人しく寝ていて欲しい物だとため息がでる。


「エイダー、熱があったのに起きていてよいのですか」

「エルメス嬢、おはようございます。どうしてもあなたに贈る薔薇を選びたくて。選び終わったら寝室に戻りたいと思います」


 いつもより上気しているエイダーの顔で、体調不良で無理をしているだというのがわかる。充分にエイダーの誠実さと真面目さを知った後だからこそこんなに無理をして欲しくない。たぶん今日は、大丈夫だといっても聞かないだろうからどうしたものか。


「旦那様、エルメス様を婚約者にすると領地と王都で発表をなさいますよね」

「そうだね。もちろんだよ」

「婚約式をするならばそれなりのドレスをつくる必要があると思うのです。婚約者のドレスを準備するのは旦那様にしか出来ません。万全の態勢で行いたくありませんか」


 サージュがエルメスに視線を向けるので何かもう一言欲しいのだろう。


「最近前より痩せましたのでデイドレスなども仕立て直すか新しく買いたいと思うのですが選んでいただけませんか。たぶんデザイナーなら既製品も持ってきて貰えるでしょうしその場で着て見せてもよいと思っておりますの」

「それはとても楽しみですね。そこまでいうのなら大人しく戻りましょうか。薔薇も決まりましたし」


 その手にあるのは、いつもより黄色味の光が強く温かい色合いの白薔薇。


「朝焼けに彩られる雲のように美しい薔薇ですわ」

「同じ品種なのですがごくまれにこのような薔薇になります。見つけるといいことがありそうでつい探してしまいます」

「そうですわね。でも早くお休みになってくださいな。昨日は、心配だったんですわよ」




「その、色々恥ずかしいいいますかなんといいますか。申し訳ありません、あははっ」


 エイダーは、顔を真っ赤にして屋敷の中に入っていったが照れ過ぎではないだろうかとエルメス達は思っていた。いつもより積極的な態度で戸惑うことがあっても嫌いではないので残念に思う。


「旦那さまはヘタレですわね。お優しいとも言えるのですが」

「そうねぇ、とてもよい方なのに自信がたりないのですわよね。そうだわ、いつものお返しをしようかしら」

「お返しですか? いったいどのような」

「感謝ってされるとうれしいしやってよかったと自信がつくものだわ。何がいいかしら」

「それなら手作りのものとかはいかがでしょう。料理とかならそれとなく出しやすいでしょうし。前カルノーが喜んでいたので」


 微笑みながら惚気るサージュが見れて眼福だが、その作戦には大きな穴があった。


「私、料理出来ないのよ。伯爵家では手出し無用と言われるくらい」

「それは難しい料理だったからではないですか」

「目玉焼きよ。黒焦げにしたわ。生焼けが好きではないからしっかり火を入れようと思ったのだけど」


 エルメスが作ったものは、裏が真っ黒で炭化し黄身も爆発していた。


「そこで私の出番ということですか。麗しの乙女たちの悩みはこのボレにお任せください」


 厨房のボレに尋ねれば胸をつよく叩いて了承してくれた。


「それにとても運がよいことに本日は、パスタにするつもりでした。パスタの成形作業をしましょう」

「それって料理にはいるのかしら」

「パスタの形は、家庭の味ですからね。人数がいるので色々な形状を作りましょう。まずは、親指大の生地にフォークを押し付けて回す。コンキリエ」


 ボレが目の前でお手本を作ると巻貝のような形状が出来た。簡単な作り方なのに曲線が美しい。


「もう一つは、薄くした生地をこの型でくりぬいて中央をぎゅっとするとリボンです。ファルファッレです」

「とても可愛らしい形状ですね」

「試しにやってみて好きな形状をやりましょう。どうぞ」


 それぞれ試しに作ってみたがコンキリエは、押しつぶすときの力加減が難しい。ファルファッレは、手を離すと元に戻ったり形が崩れる。


「難しいけど楽しいわ」

「はい」

「終わったらソレを使って昼食を作りますので楽しみにしてください」


 エイダーを勇気づける為だったけれど新しいことを知れて嬉しいとも思う。エイダーは、どんな顔をするかしら。


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