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外伝 俺を見て欲しかった

「牛肉の取引をやめたい? うちの牛肉は、最高級だぞ」

「えぇ、ですがここ半年近くで質が落ちているんです。伯爵にはお世話になりましたが客も気がついて離れて来ているのですよ。来月から別の仕入れ先にさせていただきます」


 商会長が深々と頭を下げて応接間を出て行く。自分でも痛く思うくらい握りしめた拳の行きどころがない。


「質が落ちてる? 牛を育てる奴らが変わってないんだぞ」


 病気や悪天候の報告がないのでいままで通り順調のはずだ。何かが起こっているのに原因がわからない。

 せめて領地に行けば何かわかりそうだが、団長職が長期で離れられるわけがない。副長もヘラヘラするばかりでまるで使えない男だ。


「どいつもこいつも使えない。梟ギルドも失敗したくせに金の催促ばかりする」


 慰謝料など払いたくなかったが、裁判で有罪となったからには払わなければならない。支払えないなら職場に督促が送付されるとなれば揚足をとりたいやつらにネタを与えるだけだ。


「金の督促ばかりとはずいぶんないいがかりですね」


 梟ギルドが紙を持って現れた。あいも変わらず顔を隠しているが前と違い慇懃な態度がわかりやすい。


「そちらによる事実の隠ぺいにより依頼が失敗になったのです。それとも金銭以外の要求をしてもよいのですよ? 例えば皇帝に毒を盛るとか」


 まるで子どもへお使いを頼むように軽い声音で反逆を言ってくる。


「仮にも騎士に主を裏切らせようというのか。馬鹿にしすぎている」

「言い方を変えましょう。次の世代で貴方様が仕えたいと思う方は誰ですか。皇帝のご子息たちは優秀だと聞いております。皇帝は、過去の栄光にすがっています。騎士団長ならば皇帝に会うこともあるでしょう。前伯爵の話ばかりされませんか?」


 言われる通り会うたびに父ならば、と落胆の表情を見せられる。父は父なのに、誰もジャンのことを見ようとしない。


「次代の王子に引き継ぎさせるのですよ。若い王子たちですからきっと近くにいる頼りになる騎士団長に相談するでしょう」

「それは」


 皇帝が今逝去すれば間違いなく混乱が生じる、そこで的確な助言が出来ればジャンの地位も上がりそうだ。


「結論が出たようですね。コレをお渡ししましょう。丸薬ですが水に溶けやすいのでご安心下さい」

「うむ」


 ジャンは、怖いと同時に父のように皇帝の右腕になれるかも知れないという高揚感がある。そんな様子を梟ギルドは、冷めた目で見ていた。


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