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外伝 次代、兄として

 帝城の奥に王族たちの宮がある、その中で白と紫を基調としたルピナス宮は、皇帝が第一王子ナルソスに贈ったものだった。


「カストル、息災そうだな。アレの様子はどうだ」

「変わらずですね。本当に馬鹿のボンボンですよ」


 青獅子騎士団副団長カストルは、出された茶に手をつけず不貞腐れていた。


「親の七光で騎士団長になったのに偉ぶることしか出来ないんですよ。俺副団長じゃなくて団長になっていいっすかね」

「まだその時じゃない。俺が成人する三年後まで待て」


 親の七光の馬鹿でも同じ馬鹿を釣り上げるために役にたつ。類は友を呼ぶという名言を言ったのはかつて賢者と言われた者だった。


「俺が十年早く生まれていたら、俺か兄弟の婚約者に指名したものをあのボンクラ親父め。お気に入りの騎士の息子の嫁にするなんて。アレは、王家で囲うべき血筋だ」


 亡き王妃にそっくりな美少年は、足を組みながら苛立たし気に指でテーブルを叩いている。


「高貴な生まれってことですか」

「高貴ではない。だがシュルプリーズ商会と提携している商会はノウハウを教えられて業績を伸ばし、税を多く支っている」


 ナルソスは、お茶を一気に飲み干した。なぜ大人たちは、こんなことに気が付かないのだろうか。


「攻められる周辺諸国がない帝国は、戦争に頼っていた財政が傾くのが目に見えている。食料不足や貧富の差の拡大なんてはじまりに過ぎない。それを是正するためにも経済や金融に強い人材をいれるべきだ」

「子どもの発言とは思えませんね」

「それじゃあ大人がしっかりしてくれないか。このままでは、俺が皇帝になる前に帝国がなくなりかねない」

「それは困るっすねー」


 カストルの軽い調子にナルソスがキレ始めそうになっていると、廊下からぱたぱたと走る音がした。カストルが軽く剣の柄に手を乗せた時、盛大に扉が開いた。


「兄上! 聞いてください」

「カルロ。聞いてやるから落ち着け」


 第二王子カルロは、皇帝に似た面差しの血気盛んな少年だ。そして兄であるナルソスを非常に慕っている。

 カルロの様子を見ていると人懐っこい犬を見ているようだった。


「ということがあったんです」

「それはアンバーがというよりお前が馬鹿だよ。ほら一緒に謝ってあげるから行こう」

「わかりました兄上」


 カルロは少し不満気だが、兄のいうことならと落ち着いたようだ。本当にこの兄弟は、仲が良い。


「先の内乱で失ったものは、そうそう取り戻せるものじゃない。そして俺は、例え立場が違うとも兄弟を争わせる世の中にしたくない」

「御意に」


 若い主が言いたいことを理解し、とりあえずまだしごかれているだろう後輩たちの所に行くことにした。

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