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外伝 なんででしょうね

 女性同士で気軽なお茶会をしている隣の隠し部屋では、エイダーとアルノーが聞き耳をたてていた。サージュに天気が良いからと理由をつけ、隠し部屋がある部屋でお茶会をするように勧めた。

 実際に天気がよく窓から覗く森や池が涼やかな部屋となっているのでサージュも疑問に思っていない。


「エイダー、使い方としては合っているんだろうが男として情けないぞ」

「最初意地悪してたのまだ根に持たれてて落ち込んでたヒトに言われたくないですよ」


 当時を知るエイダーから見てもアルノーが、意地が悪いことをしていたので当たり前だろう。


「なんて声をかければいいかわからなかったんだ。優しくっていうと兄貴と一緒だから嫌だった」

「それリューレントに知られないようにしなければ駄目ですよ。僕への忠誠心以上に弟が好きですからね」


 リューレントは、アルノーの兄でその優秀さと忠誠心を見込み王都の屋敷の管理を任せている。


「俺としては、いい加減弟離れしてほしいんだが」


 頬杖をつき心底嫌そうにしているがお互い認めあっているのがわかっているため、一人っ子のエイダーとしては羨ましい。兄弟がいれば両親がおらず辛かった時期も違っていたかもしれない。

 しかしそれは、想像でしかなく骨肉の争いが起きて後継者がいなくなった家がいくつあるかわからない。


「リューレントは、アルノーが好きな位の方が人間味があって楽しいですよ。そういえばメントルが、僕の推薦なら結婚するだろうから良い方がいないかと相談されましたね」

「あの親父がそんなこといったのか?」

「今までは臣下が先に結婚するのはと断っていましたが、僕がエルメスさんを連れてきましたから」

「なるほど」


 リューレントの言い分もわからないでもない、家族をもって安定するよりも仕事や生活が楽しいのだろう。結婚すれば利点もあるが家庭に縛られてしまう。


「兄貴は、家族を大事にしてくれるけどそれが負担だったりすんのかな。俺は、少なくともサージュと結婚してよかったと思ってんだけどさ」

「大事だから負担に……そうですね。そういう考えもあるかもしれません。でも助けるだけが家族ではないと思います。そういう方は大抵真面目で思いやりがあるとてもよい方ですから幸せになって欲しいものです」

「お前、途中からエルメス嬢のこと言ってないか」


 アルノーの指摘に途中から思い浮かんでいた顔がリューレントではなくエルメスになっていた。ただリューレントは、幸せになってほしいがエルメスは幸せにしたいと思っていた。


「なんであの態度が、高慢ちきなエルメス嬢に惚れたんだ? 普通あの性格の奴の近くに寄らないだろう。ずっと気にかけてるみたいだがなんでだ」

「そうですねぇ、アルノーが覚えているかわからないのですが。僕が港の方で迷子になった子どもを保護した時があったでしょう」

「あぁ、親の仕事でついてきていたっていう女の子か。まさかあの女の子がエルメス嬢か」

「そうですよ。当時から好奇心いっぱいで可愛らしかったですね」


 港にいたのだが積荷の中身が気になって見ていると迷子になっていった。不安なはずなのに両親からもらった人形を抱きしめて気丈に振舞っていた。


「俺に向かって悪態をついてたあれが? 可愛い?? 前々からお前の趣味が悪いって知っていたがここまでとは思っていなかったぞ」

「趣味が悪いとはなんですか。君にとってサージュが運命だったように僕にとっての運命がエルメス嬢だった。それだけのことです」


 また会いたいと思ったが見つけた時には、エルメスは結婚しており諦めた。


「運命ねぇ。ところでその運命の人と食事をするために仕事を頑張るって誓ってなかったか?」

「そうでした。こんなところで道草をくっている場合ではありませんでしたね。ほら、アルノー行きますよ。夕飯前に白薔薇の手入れと今日贈る薔薇を見繕わなくては」

「俺が邪魔したみたいな言い方してるけど。お前があの弁護士とエルメス嬢の関係わかんなきゃ仕事が手につかないって駄々こねたんだろうが。聞いてんのか」

「聞いてますよ」


 エイダーは、エルメス嬢が屋敷にいるというだけで楽しいと思っていた。しかし人間は、強欲なものでその先を求めてしまうようだった。今日より明日、明日より明後日好きになっていて欲しいと思う。


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