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14.僕が君の立場なら

「エルメス嬢、弁護士の方が来たと聞いたのですがいったい何が」

「アクフェシオン侯爵閣下でいらっしゃいますね。小生、シュルプリーズ家の専属弁護士をしているウルフ・ヴェールと申します」


 エイダーは、ウルフが差し出した名刺を受け取った。


「ウルフには、私の離婚裁判の担当していただくために呼びましたの。ライチさんの事件の担当も頼むのに適任でしてよ」

「弁護を受けていただけるのですか」

「はい、小生は暴力や権力を傘に虐げる連中が嫌いでしてな。喜んで受けさせていただく」

「時に、エルメス様。人の心配だけでなくご自分の心配もなされよ。あちらに弁護士がついたと聞きましたぞ」


 ウルフは、眼鏡に手を当て食い気味に言う。


「あの内容で弁護してくれる奇特な方がいるとは思えませんわね」

「どうやら仕掛や隠蔽に長けた者を雇ったようですぞ」

「あの根回しや下地作りというのを母のお腹に置いてきた方がそんな人物に伝手があるように思えませんわね。騙されておりませんか」

「現状ではわかりませぬな。ただあちらが自滅するならば良いのではないですかな」


 エルメスとしては、それもよいとは思うが性分ではない。相手に土俵が違うと分からせてこそ本当の勝利だ。


「横からすまないのですが、それでは相手に逆恨みされるだけで誰に喧嘩を売ったのかわからないのではないかな」

「エイダーの言う通りね。私、あの脳筋の後悔するのが望みですわ。もう一度こちらに何かする気が起きることがないようにね」

「それが依頼人の意向ならそれで進めるでござる」

「ところでこの後すぐに、帝都に戻って裁判準備をするのかしら。お姉様に手紙をお出ししたいから頼まれてくれないかしら」

「お安い御用ですぞ」


 エルメスは、手紙を取りに行くと空気が一瞬で変わる。それは春の訪れのような温かみのある雰囲気から雪が降りそうな冬まで戻るかのよう。


「手紙を任されるなんてずいぶん親しいのですね」

「エルメス様の両親が健在のころからの付き合いですな」

「そんな昔からですか。あぁ、温かいうちにお茶をどうぞ」

「ありがとうございまする」


 ウルフが勧められたお茶は、ベリーが入っており甘酸っぱい。これは、エルメスが好きそうな味だと思った。初めて会った時もベリージュースを出された気がする。

 下町で目が悪くいじめられていたウルフに眼鏡を買い、遅れていた勉強を教えるように手配したのがエルメスだった。勉強は楽しく弱い立場を救いたいと願い弁護士になった。


「小生が弁護士を志すきっかけと機会を与えてくれたのはエルメス様です。侯爵とはいえ最近現れた人物に渡せませぬ」

「うん、そうだね。僕が君の立場でも同じことをいいますよ。でもね、僕だって昔からエルメス嬢を見ていたので今さら諦められないんですよ」

「昔から…? エルメス嬢と侯爵が会ったのはこの前が初めてではないのですかな」


 エイダーは、それ以上話すつもりがないようでうっすら笑みを浮かべて口を開かなかった。


「この手紙をお願いしますわ」

「えぇ、わかりました。しっかり届けます」


 人が良い騙されやすい侯爵だと聞いていたがうそだったというのだろうか。 





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