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13.戦う前に必要なこと

 時は金なりという言葉は、流れの商人から帝都に店を構えたお祖父様の言葉だったとか。だからこそシュルプリーズ家は、決断を早く行い入念な下準備をした上で実行していた。実行するまでは、方向性を変更することが出来るのだからその前の下準備に時間をかける。


「ということで訴えると決断したならば下準備が重要ですわ。そのうえでお聞きしたいのだけれども裁判? もしくは示談にしますかしら」

「お恥ずかしいのですが、示談とはなんでしょうか」

「そうね。一般的な言葉ではありませんでしたね」


 帝都では、新聞の普及とともに浸透してきたものなのだが普通に暮らすには縁遠い。


「お話し合いで争いを解決することですわ。弁護士を間に入れて双方の条件を提示し、金銭や条件でお互い合意出来ればそれで終わりに出来るというものよ」


 ライチは、これだけではわからなかったようで眉尻を下げていた。


「裁判は、期間が長くなりやすく金額がかかるのが難点です。示談も時間が必要だけど双方で妥協すれば短く済んでお安くすみますわ」

「そんなに長いのですか」

「一年以上かかる場合があると聞くわ。私が理解している理由としては、証拠不十分で論争が長くなってしまったの」

「それでは、裁判は諦めた方がよいということでしょうか」


 エルメスとしては、わかりやすい説明をしたつもりだったが諦めさせたかったわけではない。これから大変になるライチに向けて終着点のメリットデメリットの話が必要だと昨晩考えていた。


「いいえ、どちらもそれ相応に大変ではあるわ。お金、時間、名誉、何より大事なあなたの未来」

「未来ですか」

「そうですわ。これからずっとまた暴力や権力に怯える日々は嫌ではなくて? 安心して暮らすために戦うのですわ」


 エルメスは、貴族として領民を見捨てられず離婚をしようと思わなかった。しかし夫人の立場で夫の協力を得られないのならばと、離婚を決めた。


「裁判という公の場でお金も名誉も取り返し決別したいのなら裁判。お金と時間をかけずに早く終わらせて次に進みたいのかしら」

「私は、私を傷つけてのうのうと生きる上司が許せない。だから裁判して辞めさせたいです」

「ということですわ。先生」


 扉が開かれると木の枝のような男が部屋の中に入ってきてライチの緊張が一気に増した。


「君が煽って誘導尋問したようにしかみえないんだけども」

「あの、あなたは?」

「小生、ヴォルフガングと申します」

「それはあだ名で、お名前がウルフというのですわよ。その方。そして今回弁護してくださる弁護士ですわ」

「ウルフという名は気に入っていないのです。今だにパピーと言われるのですよ」


 弁護士のバッチを見せながらウルフがため息をつくと子犬呼びが面白かったらしいライチが吹き出した。


「お嬢様方、それよりも裁判で勝利するための証拠や作戦を話たいと思うのですが。いかがか」

「ライチさんよろしいかしら」

「はい! 頑張ります」




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