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外伝 悪事は法で裁かれた方がマシ

「あと少しでこの田舎からおさらばだ」


 男は、田舎とはいえ侯爵領の代官をしている。役職としては、箔がつくのだが田舎者と誹りを言われることがあった。ならば侯爵の側近として働くことを画策するが結束が固く入りにくい。側近がやらかせばトカゲの尻尾切をするのではないかと失態を招いたのだが、辞めさせることなくそのまま手元に置いている。アフェクシオン侯爵は、いつもへらへらした表情をしたぼんくらなので側近の失態が理解出来なかったのではないかと思えてきた。


「あの方への賄賂でよい地位をもらえるのが確約された。手土産として何か情報が欲しいところだがあまり嗅ぎまわると余計なものを釣りかねない」

「ほうほう、余計なものとはわしのようなものかね」 


 誰もいないはずの部屋に響いた声に男の心臓が大きく跳ねた。声の主は、目を輝かせながら微笑を浮かべた老人である。何も知らない人物ならば優しい笑顔というものもいるだろう。しかし男にとっては哀れな最後を迎えるものを嘲笑う表情にしか見えない。


「オンラード様、領都にいたのではないですか」

「うむ、そうじゃな。あの坊主が、嫁候補を連れてくるなんて真似をしてきたもんじゃから見極めが必要でのう。領民として侯爵夫人が誰になるかというのは気になるじゃろう」


 アフェクシオン侯爵が子爵令嬢に婚約を打診したと伝わってきたのはつい先日だ。手土産の一つになるかと探ったが子爵令嬢が有名過ぎて一般的なことしかわからなかった。


「あの令嬢は、面白い。女でも新聞を読み商売し欲深い」

「欲深いというのは令嬢として褒められるようなものではないような。女というのは、夫をたてるべきですから」

「その夫に欲がないから釣り合いがとれてよいのじゃよ。清廉なだけでは領主は、勤まらん。わしは、後継をアレに決めた」


 オンラードが指を弾くと音もなく人が三人現れる。


「だがまぁ、輿入れ前じゃから先に裏切りものを露払いにきたのじゃ。珍しく坊っちゃんが感づいたようで爺も嬉しいわい。色々話してもらおうかの」


 男は、小さく悲鳴を上げると意識を失った。

 その後、男は領主館の前に縛られた状態で発見され隣に悪事が書かれた立て看板が置かれていた。税金の横領や支給されていた手当を着服など領民として許せるものではない。領民の怒りが男に向かうかと思いきや、哀れになるほど震え詫て裁いてくれと騒いでいる。

 騒ぎを聞きつけた騎士が来てようやく男は、落ち着きを見せ言った。


「領主に見つかったあとの方がまだ優しい」


 大抵の者は、意味がわからなかったが男のように悪事を働いているものにとっては恐ろしい。慈悲深い領主ならば法に乗っ取り罰を決めるが、男が恐怖した相手は気にしないのだと。

 男が牢屋に入った後に、城の牢屋がいっぱいになったのを知るのは一部ののみだった。



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