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こうやって向き合えば、お互い姉弟だなぁと絆は変わらないんだと思える。
「姉ちゃんの友達は俺の事なんて言ってるの?」
「かっこいいって言っていたわよ」
「まじかー?」
クールな容貌が少し崩れた。
「年上も悪くない」
「姉の友達と付き合う気じゃないでしょうね、あんた、彼女とかいないの?」
「いないなぁ。残念ながら」
智佐にとって自分の兄弟が自分の友人と交際するなんて言われたら、変な気分になる。とは言え、身近にない話ではない。自分のクラスメートの女子がそのまた友人の兄と交際しているケースもあった。妹も、自分の友人が兄と付き合うと言うのは変な感じだと言っていた。恋人同士も、その彼女と妹も良好な関係ではあるが。
姉の友人とは、智樹も一緒に遊んだ記憶が幼い頃にある。おままごとのの子供役をさせられてた。特に姉の間友達に対する特別な感情は無い。
「離れて暮らしている間の姉ちゃんの事とか聞いてみたい」
不純な動機ではないようだ。
「私の友達でも、友達のお兄さんと付き合ってる女の子がいるけど。姉妹として複雑な気持ちにならないもんなのかしらね」
智樹は幼い頃に姉の友人たちとの間に起きたある出来事について姉にも黙っていたことがある。それはまだ言えない。もしかしたら一生言わないほうがいいのかもしれないと思っていた。
「姉ちゃんの友だちって葵さんたち?」
悠木葵は智佐の幼稚園時代からの友人だった。家も近いし、よく遊んでいた。当然、智樹にも面識がある。今は陸上部に所属している。智樹の記憶と違って、今は褐色肌のスポーツ少女。
「おぼえてた? 葵たちは今さら聞いてこないょ。離婚したときにはすごく心配してくれたからよくお礼言っておいてね。わざわざ聞いてくるのは新しい友達たち」
「男の友達はいないの? 高校だって共学なんだし」
「そりゃたくさんいるわよ。学校には」
智樹はつとめて、変化のない表情を取り繕った。
「でもそんなに親しい男子はいないよ。学校の外では」
「ふーん」
「わたしの友だちにあっても変なことを聞かないでよね」
弟は答えなかった。何を知りたいのだろう。
「女子って男子の知らないところで何をしているのか気になるじゃないかじゃないか」
「なによ。それ」
女子からすると悪趣味な物言いに思えた。この弟にも闇があるのだろうか?