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 二人は自室のある二階へ階段を上った。


「智樹が引っ越しして、部屋が広くなっちゃった」


「懐かしいな」


 小学生の頃は二人で8畳の部屋をあてがわれていた。智佐はその時の学習机をそのまま今も使っている。成長に合わせて高さを調節できるタイプだった。当時は子ども用のマットレスと布団を敷いて床の上に寝ていた。今は、部屋の隅にシングルベッドが置かれている。


 パステルカラーのカーテンや小さなぬいぐるみがいくつか置かれていて女の子の部屋らしいが、壁には男性アイドルのポスターなどは無かった。


 デスクの上には部活のメンバーなのか、クラスメイトと一緒に写った写真たてが置かれている。その隣には、


「いつの頃かな、これ」


 智樹がそれを手に取る。


「お父さんたちが離婚してお母さんとあなたが家を出て行く時に二人で撮ったじゃない」


 その写真はこの部屋で二人並んでタイマー撮影したものだ。


「自撮りみたいだ、あの頃はスマホ持ってなかったのに」


 二人は頬を寄せ合って、上半身だけが写真に収まっている。


「現像するときにトリミングしたのよ」


「ずっと飾っててくれたんだ」


「智樹はわたしの写真を持ってくれてた?」


 弟はポケットからスマートホンを取り出して姉に画面を見せた。


「あ!」


 待受画面が自分の写真であることに姉は驚いた。顔が赤くなる。


「これ、2年前の」


 そう言えば、見覚えのある写真だった。二人が最後に会った日に弟が「写真撮らせて」と言うので応じた時のものだった。


 その日は、普段東京から離れている母が出張でやってきたのに合わせて智樹もついてきた。夜、合流して食事をすることにしたが、昼間、母が仕事をしている間、姉弟で渋谷と恵比寿をめぐり歩いていた。


 恵比寿では周囲がカップルばかりだったのを覚えている。


「姉ちゃん、そこ座って」


 教会の前でスマホのカメラを向けられて撮影された写真だ。白いファーの付いたジャケットで、寒風のせいで頬が赤くなっている。


 我ながら可愛く撮れているとは思うのだが。


「いやだ、待ち受け画像にしてたの? どんだけお姉ちゃんのこと好きなのよ?」


 智佐は照れ隠しで言ったのだが、智樹は屈託の無い笑みでいる。姉としては、学校で友人たちにからかわれないかと心配にもなる。


「だって、次はいつ会えるかわからないし」


 姉としては純粋に胸が熱くなるセリフだった。弟は年上女性に愛される術を知っているのだろうか?


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