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智佐は身長 165センチ、 顔立ちは父親に似ていて柔和、顔の輪郭と色の白さは母親似だった。今、後ろに結ってある髪を下ろすと肩の少し下までの長さ。4月から高校2年生になる。弟の智樹は 中学を卒業した。 同居を始めるにあたって姉と同じ高校を受験して合格した。制服はブレザーで彼の分も既に家に届いている。
両親が離婚した場合に母親が子供を養育することが多いのは、子供もそれを望むことが多いからだろう。 ヒステリックな母親に恐れをなして父親についていく子供もいるだろうが、 多くは父親の方が好き罪的に安定している場合に、双方の祖父母がそれを勧めるケースであろう。
母親の不貞により、離婚、あるいは家を出て行くことになったとした場合にも、父親が強く親権を主張すればそのとおりになるだろうが、それでも 父親が子供に強く執着しない限り母親の親権が認められることも多い。
母親が子供を引き取り、祖父母のもとで実家で育てる場合にはリスクが少ないのだが、娘を連れて夫の下を離れるときには母親の再婚が問題となる。 問題と言えば語弊があるが、父親並びに父方の祖父母は大いに心配である。 母親にも次の伴侶を探す権利がある。 その男にとって連れ子は血を分けた自分の子供ではないため虐待に至るケースもよく聞く。 ましてや連れ子が女の子であった場合には、性的虐待も心配しなくてはならないと言うのが智佐の祖父母の主張だった。加えて、再婚相手自身にも連れ子がいる場合には、 性別や相性なども考慮しなければならないというのが父親の主張だった。
姉弟の両親の離婚は、どちらかの不貞が原因ではなかったらしい。 長く一緒にいるといろいろあったらしい。ただ、その頃よく夫婦喧嘩をしていたのを覚えている。 そんな時、智佐が子供部屋で膝をかかえて泣いていると、弟がすぐに横に来て隣に座って2人は手を握り合っていた。 彼は涙を見せない子供だった。姉としても、彼には感情がないのではないかと時々心配になるほどだった。 そんな彼が自分を気遣って寄り添ってくれることが嬉しかった。弟が決してロボットではないのだと感じられた。
「お母さん!」
「智佐……!」
母はスーツケースを門前に置き去りに娘の体を抱きしめた。母の肩越しに 智樹と目が合った。 自分は母親よりは身長が高くなったが、彼も成長した。170センチ前後だろうか、 姉である智佐よりも背が高いと思われる。