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結婚式は一度でいい

ブックマークありがとうございます!

マルファは六月の花嫁さんなので、結婚式の話となります!

マルファとヤスミンの会話はポンポン弾むので、書いていて楽しい二人です。

 クラルティには教会が無い。

 よって、私とヤスミンは私の両親の領地であるルクブルール伯爵領にある教会にて式をまず挙げ、そこからクラルティに戻って来て、クラルティの大通りを披露宴会場にして町のみんなから祝ってもらう、そんな計画だった。


「誰がそんな計画立てた?」


 私の婚約者は最終確認の場にて婚約者である私に凄んだ。

 ぜんぜん怖くない。

 だって彼は私から三メートル離れた位置に立っている。


 私の明日を台無しにしないために、自分がジャッカルさんになってヒヨコを食べてしまわない距離を保っているのだそうだ。

 だったら真夜中の寝室に忍び込んで来ることこそ、大きな間違いだと私は思うのだけれども。


 でも、明日が終わればいつもあなたの傍にくっついていられるのね!


「止めてくれ!君を責めた俺が悪かった!」


 あら、口に出して言っていたみたい。

 でも、心からの真実なので、私はヤスミンを期待を持って見つめ返した。


 三メートル離れていた男は、また一歩と後退した。


 あれ?


「ヤスミン?帰るの?」


「うん。もういい。明日は面倒くさいなって、駆け落ちしたくなっただけだから。ほんと、この間まで必死でお国を守ろうってしていた自分を呪ってやりたいよ。」


 私は、ごめんなさい、しか言えない。

 私の本当の父が、バージンロードを娘と歩きたいと言い出し、我がルクブルール伯爵家はお忍びでいらした大群の王様御一行でぎゅうぎゅうでもある。

 そこで、ヤスミンの部屋がルクブルール伯爵家代々の子供達が使用していた子供部屋、そんな扱いになっている。


 ちなみに、ヤスミンの兄で今回の式ではヤスミンの父親のような立場で参加される侯爵様は、奥さんであるエマがクラルティに到着したのをいいことに、ヤスミンの家で一般家庭のようなささやかな家族団欒を体験しているそうだ。

 でもってエマは妊娠中の大事な時期なので、式の参加は侯爵だけだ。


 クラルティの披露宴パーティの方で、エマとフェリクス、そしてオーギュストの三人が揃って祝ってくれるんだからそこは別にいい。

 実は私こそ、明日の面倒そうな結婚式の方をすっ飛ばしたいのだもの。


 まず、父に手を引かれた娘、という前提で、私は二人の男に手を引かれる。

 ルクブルール伯爵である養父と、この国の王様である実父だ。

 ヤスミンに引き渡す右手をどちらが引くかで揉めたそうだが、両手を引っ張られる姿となる私は、嫌々ながら嫁がされているって構図に見えないだろうか。


 全く、最近私が王様の娘だったと知ったからって、娘のイベントに父として参加したいと我儘し放題だ。

 十七の誕生日なんか、私の誕生日プレゼントにするために、ヤスミンの収監日数を伸ばしてしまったろくでなしだ。


 まあ、ルクブルールの方の父も良い父かと問われれば、微妙、としか答えられないので、バージンロード問題には私は何も言わなかった。


 と、いうか、私は結婚式に関してはドレスの事にしか関わらなかった。


 だって、母と自認する人が私にはたくさんいるの。

 私の一つの提案に、四人が、ここはこうしたら、とそれぞれ言ってくるのであれば、四人で相談して決めて下さいな!にした方が私が楽である。


 だって、私の一番を考えて下さるのだから。

 と、言う事に私はしたのである。


「明日が終われば。俺達は二人で二人だけで暮らせるんだよな。」


 私はその通りになればいいって思って、彼に微笑んだ。

 彼は大股で私の元に歩いてくると、私の唇に唇を重ねた。


 チュッというだけの、唇が重なっただけの一瞬のキス。


 ヤスミン、って目を開けたら、彼はもう目の前にいない。

 なんと、戸口の方に逃げていた。

 足が悪いはずなのに、本当に行動が早い人!


「ヤスミン。」


「悪いな。明日を考えると俺はお前を担いで逃げたくなるんだ。その場合、俺は国家反逆者として牢屋に入れられて、きっと解放された日にはお前の四人の母親に刺殺されるだろう。すまないな。」


「いいのよ。私も面倒で、式の準備を全部母達に任せちゃったのだもの。こんなことになってごめんなさいね。」


 ヤスミンはぴたっと動きを止めた。

 そして私をまじまじと見返した。


「どうしたの?」


「式は、お前が最高のものにしたくて、それでお前が色々と詰め込んで、こんなくそ面倒なものになったんじゃ無いのか?」


 私は違うという風に手をパタパタと振って笑った。


「違うんだ。」


「だって私はあなたの花嫁さんになることしか考えていないもの。」


 ヤスミンは私に微笑んだ。

 そして大股で私の元にやってくると、出会ったばかりを思い出させるような酷い事を私にした。


「いたい!あしたは一番きれいにしなきゃいけない日なのに!どうして頭をぐりぐりしてくるのよ!髪の毛が千切れちゃったらどうなさるおつもり!」


「こんくらいでなんねえよ。それよかお前!ぜんぜん関わっても無かっただと?お前の望みの為ならどんな面倒な式だって笑顔で耐えてやろうと思った俺の純情を弄びやがって。お前こそ反省しろ!」

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