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伯爵令嬢と育てられましたが、実は普通の家の娘でしたので地道に生きます  作者: 蔵前
マルファとヤスミンの結婚式までのできごと
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将来を話し合おうか?

お読みいただきありがとうございます。

本日二回も投稿してすいません。

此方は本文は短いです。

あとがきが……長くてすいません。

マルファ視点しか本文は書けなかったので、裏事情が出せなかったのです。

「お前は将来を考えているのか?」


 ヤスミンは父親よりも偉そうに言って来た兄の顔を見返した。

 プラチナブロンドに水色の瞳に整った顔立ちという、絵画の中の神様ぐらいに美しい男だが、この顔は亡くなった父そっくりだとヤスミンは懐かしく感じた。


 年を重ねて尚更に似てきていやがる、とも。


 だが今は昼食の席であり、このテーブルに並んでいる昼飯は、ヤスミンがヨタカの森亭のクロエから購入し、ヤスミンが温め直したりもしたものではないだろうか、と思い当たり、ヤスミンの感じる懐かしさは反発にとって代わった。


 大体ヤスミンは疲れているのだ。

 ヤスミンの土曜は、ムウチョと町内追いかけっこで半日が終わり、彼はかなりの体力と面目を失った。

 その後は発情した馬とムウチョは一緒にできないと、疲れた体に鞭を打って、土曜日曜かけて馬房の直ぐ隣りにあった空き店舗をムウチョ専用の馬房に作り変えたのである。


 そのためかヤスミンは朝の犬の散歩の後は仮寝のはずが爆睡し、マルファと過ごすはずの午前中を失ってしまったのである。

 その鬱憤が、今まさに、爆発していた。


「当り前のように俺の飯を食っている奴に、俺の将来言われたくねえよ!」


 父に似た兄は、父がヤスミンには向けなかった呆れたという瞳を向けた。

 それから、叱責のような事を言い返してきたのである。


「どこでもその答え方では、目上の方々に受け入れられる訳は無いだろう。」


 ヤスミンの眉毛は一本につながった。

 どうして子供のような叱責を兄から受けねばならないのだろうか、と、不満ばかりの彼は兄の指導役に視線を動かした。


 執事だが家族のように食卓を囲っている男は、ヤスミンの視線に気が付くと食事の手を止め、お聞きなさい、と口パクだけして自分の食事に戻った。


 ヤスミンは復讐の決意をそっと呟いた。


「今夜はウナギパイだな。」


「わん。」


 ヤスミンは甥の足元に転がっている犬を見つめた。

 彼女はヤスミンの家に居着いているが、朝の五時の散歩さえ終われば、その後はフェリクスにばかりにくっついている。


 ヤスミンの犬であることを止めたどころか、朝の散歩担当者扱いしかしなくなった元飼い犬は、飼い犬だった時の察知能力は残っていたようだ。

 ヤスミンに抗議の視線を向けていた。


 アタシはそんなもの食べないわよ?


 よって、ヤスミンはウナギパイの購入は取りやめた。

 犬も食わないパイをヤスミンが食べる事になりそうだから、と。


「ヤスミン。話は終わっていないのだけどね。」


「お父様。お父様がヤスミンをご心配なさる気持は僕はよくわかります。だから、午後は僕達も付いて行きませんか?僕達が、特にお父様がいらっしゃるなら、メイゼルさんもアンナさんもヤスミンに意地悪は出来ませんよ!」


 フェリクスが自分の父親に掛けた言葉で、ヤスミンはようやく兄からの意味の分からない叱責の意味を知った。

 彼は彼なりに自分の事を心配していた?


「ヤスミンはマルファがいるとついふざけてしまうんですよ。だから、お父様が付いてくだされば、真面目なヤスミンになると思うのです。それで僕は、ヤスミンが真面目でいられるようにマルファをソフィに会いに行こうって言って連れ出します。以前に家庭教師をして下さったマルファに、僕の勉強の成果を教えてあげたいですし。」


 ヤスミンは、あ、と声を上げていた。

 それしか出来なかった。

 兄にそっくりな外見の甥の中身が、まさにデジール家そのものという、糞ろくでもないものだったと改めて知ったからだ。


 甥は父親と二人きりという状況に、すでにウンザリ、している!!


 ヤスミンはマルファと会える時間に、甥と兄も加わると思うと、いや、甥にマルファを奪われた上で、兄と鬼婆二人という四人でお茶会というウンザリどころか恐怖な時間を過ごすことになると気が付き、酷く慌てた。


「てめえ、こら。どうして俺のフィアンセをお前が独占するんだよ?俺こそ何日マルファに会えていないって思っているんだ!」


「あら、僕はソフィに会いたいだけですよ。僕はソフィが大好きだから久しぶりにソフィとたくさん話したいんだ。お祖父ちゃんだって、ソフィを手に入れろって僕を応援してくれています。」


「あのくたばりぞこないが!」


 ヤスミンは兄に向き直った。

 そしていつもにもまして真面目な顔を兄に見せつけたのである。


「兄上。いつもご心配をおかけして申し訳ありません。ですが、大事な女性の大事な方々の心配を払拭できるぐらいの話し合いは一人で出来ます。」


 ヤスミンの兄、オーギュスト侯爵は、ヤスミンが父を思い出すぐらいの素晴らしい笑顔をヤスミンに初めて返してくれた。

 ヤスミンの胸はそれだけで温かくなり、実の兄弟というものは素晴らしい存在ともなり得るのだと感動した。


「では、私もフェリクスとソフィの馬車に乗ろう。荷馬車を御すのは初めてだが、私は馬車を御すのは好きなんだよ。」


「確かに、お前は二人乗りの暴走専用馬車が好きだったよな。」


「カブリオレと呼べ。だが、確かにそうだ。若い頃はスピードを友人達と競って遊んでいたな。そうだ!遭難していたお前を迎えに行ったというお化け馬車も使えるか?それに乗りたいってフェリクスが強請るんだよ。」


「あ。」


 ヤスミンは呆気にとられた顔で兄を見返すしか出来なかった。


 この悪辣な兄親子は、自分達が楽しく遊ぶ事しか考えていない!!


 そう気が付いたからだ。


 ただし、甥の顔は兄の言葉に笑顔で頷いてもいるが、その顔は曇ってもいる。

 ヤスミンは自分の察知能力の素晴らしさに、この無駄な働き者めと、心の中で大きく罵り声を上げていた。


「お化け馬車はマルファと交換だ!あいつは俺が死んだと思ってあの馬車を作り上げたんだ。あいつにその時の事を思い出させたくない。で、一度、お出掛けしたフェリクスがマルファを返してくれたら、おい、フェリクス、お父様とお化け馬車を渡してやる。それでいいな?」


 フェリクスはヤスミンに大きな笑みを作って返した。

 ヤスミンが甥に甘いのは、甥の顔が亡くなった父に一番似ているからであろうと、ヤスミンはその笑顔を眺めながらしみじみと思った。


※カブリオレ 幌が折りたたみできる二人乗りの小型の二輪馬車 

 映画やドラマ、そして、ヒストリカル系の恋愛小説で、金持ちのボンが女の子を乗せて喜んでいたり、スピードを競って遊んでいる時に乗っているのがこれ。

 オーギュストは侯爵家のボンとして貴族の子弟が経験する事は全て享受しているが、ヤスミンは十四まで父の付き添いをしており、その後は結果としての放逐で貴族の若者の経験できることはできていない。


設定

オーギュスト ヤスミンの兄 プラチナブロンドに水色の瞳という神か天使な外見の男

父親アルセーヌと同じぐらい情が深いが、侯爵家跡継ぎで英才教育を受けているので、不器用すぎる人になっている。

ヤスミンを寄宿舎に入れずに手元に置く父親に心配していたので、父親の死によってヤスミンを寄宿舎送りにするが、オレリーによってヤスミンが貧民街に身ぐるみはがされて捨てられるという結果になる。

また、エマに余計なことを唆した召使いによってエマに結婚の申し出も出来なかったという過去もある、実はとてもいい人なのに報われなかった人。

よって彼の執事となったエヴァン様は、素晴らしき彼がこれ以上不幸にならないように色々と精力的に動いている。


エヴァン様

スーパー執事 

ほんのちょっと腰を下ろすつもりでルクブルール伯爵家の執事となっていたが、幼いマルファの特性を見抜き物凄く彼の興味を引いてしまった。

そこでマルファに教えられるだけの悪事(マルファは素晴らしい提案としか考えていない)を教えたりと可愛がるのに夢中となっている。

彼女がどんな行動を取るのか、ワクワクしながら見守っているというお方。

ただし、ムウチョに関しては素直に自分の失敗を認めている。

伯爵家を追い出されたマルファが無事にヤスミンの家にまで行けたのは、彼が下男にマルファを護衛させていた、という裏設定があり、その下男の報告により、マルファを家に引き込んだのが「ヤスミン・デジール」という英雄で侯爵家の人間とエヴァンは知ることになる。

だから、ヤスミンによるププリエ伯爵家への転職勧誘は彼には渡りに船だった。

そして彼は、お嬢様が恋したヤスミンが、とっても揶揄いがいがある子、だと好感を持っている、

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