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綾とエリオットの邂逅3

 綾はマントのブローチに施された付与魔法をじっと解析していた。作ったクロ本人の魔力が宿っているからこそ、付与魔法が宝石に抵抗なく入っていくのだな…と感心してしまう。シリウスが付与魔法陣を構築して、焼き付ける役目をクロがしたのだ。連携作業の見事さに、溜息が出そうだ。

「そろそろクロードとメイナードの試合が始まる時間じゃないか?」

 シリウスの言葉に皆がハッとする。ちょっと調子に乗って、話し過ぎたようだ。主にクロちゃんが。綾とシリウスも乗っかたので、どっちもどっちだが。

「あの、アヤさんから聞いた言葉は、陛下のお考えと捉えても良いのでしょうか?」

 エリオットが、おずおずとシリウスに話しかけた。

「もちろんだ。この国が嫌になったら、我が国に来ると良い。他の者にも伝えよ」

 凛とした声でシリウスが請け負う。きっとシリウスとクロは、私達の話を聞いていたのだろうと、綾は思った。クロは聴力強化魔法で暇つぶししているぐらいだから、防音魔術のかかっていない場所など、何の障壁も無いはずだ。

「………ありがとう…ございます!」

「アヤにも言ったが、逃げ道があると知っているだけで、人は踏ん張りがきくものだ。上手く使うと良い」

 シリウスの度量が大きいのは、さすが皇帝陛下と言うべきか。はじめは取り乱した綾も、気持ちの面では凄く救われたのだ。エリオット達にも、シリウスの言葉が救いになる事を、綾は祈った。私達は、留まるのも出て行くのも自由なのだと、知って欲しかったのだ。

 そう、迷ってどの道を選ぼうとも、不正解などないのだから。

 


 シリウスが会場に転移魔術で送ってくれて、皆で席に戻った。

 綾はそわそわと落ち着かない気持ちで、クロードとメイナードの登場を待つ。休憩から戻って来たのか、王族も席に着いたようだ。

 何故か視線を感じる気がして、綾はフードを深く被り直す。ちらっと見た王族の中の一人が、こちらに視線を向けていた。シリウスやクロの魔力に気付いたのだろうか?でも背後のシリウス達ではなく、自分が見られている気がして、落ち着かない。休憩前までは、何も感じなかったのに…急に何故?

「第一王子が見てる気がする…」

 こそっと、隣のエメリックに囁くと、エメリックも頷いた。

「気付かれた?」

「うーん、微妙なとこだね。第一王子は魔力視出来ないはずだけど…ソフィア様のフードもあるのに…」

「でも、エリオット君は気付いてたけど…」

「エリオットって、『勇者』の名前?第一王子に、勇者程の能力があるなんて、聞いた事無いけど…」

 第一王子の青い冷ややかな視線が怖くて、綾は身体を縮こませる。気のせいにしてしまいたいのに…そうとは思えない。

「異世界人を見分ける、魔道具でも持っているのかしら?」

 ソフィアの言葉に、綾は息を呑む。

「気付いていても、いなくても、アヤに手出しはさせないわ」

 口元を扇子で覆って、ソフィアは不敵な視線を、第一王子に送り返した。

 すっと第一王子の視線が逸れて、綾の呼吸が楽になる。………視線だけで勝つ、ソフィア様凄い!と綾は心の中で、賞賛を送った。

「さすが我が妻!」

 クリストフの通常運転な賞賛に、綾は不安よりも安心が勝ってしまって、思わず笑ってしまった。


遅くなりました。本当に申し訳ない!

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