表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
173/175

綾とエリオットの邂逅2

 エリオットの顔が幾分和らいで、綾とエリオットがお互いの近況を交換している時に、天幕の外が俄かに騒がしくなった。クオォオオとか、キエェエエとか動物の鳴き声が、綾達の耳に届く。だがその直後、それがピタリと止まった。

「何か、あったんでしょうか?」

 綾が首を傾げて、エリオットに話しかける。

「今の鳴き声、竜だと思う。普段は無駄に鳴いたりしないんだけど…?」

 犬はストレス溜まると、無駄吠えするって言うけど、竜はどうなんだろう?と思いながら、綾は外に出て確かめたい衝動に駆られたが、さすがに堪えた。王立騎士団の天幕の外になど、出られるわけがない。

「俺、見てこようか?」

 エリオットが席を立つと同時に、天幕の外から声が掛けられた。この声は…!綾は息を呑む。

「邪魔するぞ」

 そして天幕の布が持ち上げられた。そこに立っていたのは、黒いローブを纏った男、声の持ち主であるクラデゥス帝国皇帝陛下、シリウスだった。その後ろには黒い膝丈ワンピースドレスを着た、クロちゃんだ。

 彼らは目を丸くする、エリオットの返事を待たずに天幕に入ってくる。そして椅子がないことに気付くと、アイテムボックスから豪奢な椅子を二つ取り出して、座った。ローブのフードを後ろに払うと、白銀の美しい髪が現れる。

 綾が立ち上がって自分の椅子を勧める暇もないほどの、早業だった。さすが、元祖せっかち…。

「どうして、シリウス様が?」

「メイナードの役目を、代わってもらったのよ」

 クロが、珍しそうに天幕の中をキョロキョロと見ながら、綾へ返事を返してくれた。

「『勇者』と話す、丁度良い機会だったからな。アヤがいて良かった。迎えに行く口実が出来たからな。其の方、エリオットという名だったか?」

 固まっていたエリオットがハッとした顔で、シリウスを見た。金色の瞳に見つめられ、慌ててその場で膝をつく。………さすが身分制度の厳しい王城にいるだけの事はある…と綾が感心しつつも、自分だったら出来ないかも…と遠い目をしてしまった。色んな意味で、『勇者』は凄い。

「立って座ってくれ。これは非公式なものなのだから。私の横にいるのは、黒竜のクロだ。」

「…はい」

 シリウスに促され、エリオットは椅子に座るが、そわそわと落ち着かない態度だ。………分かるよ。


「外で竜が騒いでいたのですが、シリウス様が居たからです?」

 綾は首を傾げて、疑問を口にした。エリオットに心の準備をしてもらおうと、世間話をして時間を稼ごう作戦である。

「正確には、妾とシリウスが来たからじゃな。竜は、魔力に敏感だからの。歓迎とか言っておったが、ちょっと五月蝿かったから黙らせてきた。気にせんで良い」

 ………黙らせたんですね、クロちゃん。その様子が目に浮かびます!今は、もの凄く静かですね、はい。

「黒い色は好きか?」

 唐突に、クロはエリオットの話し掛けた。ちょっと、綾からすれば、神を信じますか?みたいで、怪しい感じなのだが、クロは全く気にしていない。ゴーイングマイウェイである。

「え?あ、はい」

 エリオットは、目を白黒させながら答える。

「そうか!好きか!白い服を着ていなかったから、そうかと思ったのだ」

 クロは満面の笑みで、アイテムボックスから黒い服を取り出した。それ、見覚えあるんですが!?

「えっと、俺は王立騎士団に所属していないし…白の騎士服は、恥ずかしいから…」

 エリオットは、クロの雰囲気に呑まれたように、話し出す。

「白よりも、黒の方が良いよな?そうよな!其方気に入った。褒美にこれをやろう」

 クロがエリオットに差し出した黒い服。見覚えがあり過ぎるそれは、クロちゃんのドレスを作った時に一緒に作ったものだった。それって、お針子さん達が、悪ノリで作った黒の肋骨服じゃないですか!?と綾は驚く。

「シリウスは、着てくれないのじゃ…」

 むすっとした顔で、クロは話す。

「私が専任の者の以外の服を身につけたら、その者が卒倒するだろう?」

 苦笑しつつ、シリウスはクロを宥める。

「ここに居る間だけでも良いのに…」

「彼奴はバレたら、泣き喚く故、面倒なのだ…」

 シリウスにも、人知れず苦労があるらしい。早速着ろとクロが、エリオットを急かせ、布の向こう(多分ベッドがある場所)へ追いやった。…せっかちって感染るのかな?

「あ、クロちゃんに貰った宝石を使った、マント留めのブローチありますよ!」

 その肋骨服にも合うし、丁度エリオットの瞳の色と同じだと綾は提案してみた。練習で作ったものだが、綾の自信作である。早速アイテムボックスから取り出したそれを、シリウスの手渡す。

 シリウスはブローチを、手にとって頷く。クロとシリウスが何事か呟き、ブローチが微かに光を帯びた。綾は仕事で付与魔法の光は見慣れているが、シリウスとクロの早業に、瞬きもせず魅入ってしまう。かなり高度な付与魔法である事が、綾には分かった。


 おずおずとエリオットが顔を出す。黒の肋骨服は、エリオットに凄く似合っていた。クロちゃんが土魔法で作ったサファイアを使ったブローチは、見栄えが良い。エリオットが元々纏っていた黒のマントに着けると、しっくりくる。

 シリウスも、クロちゃんも私も、満足げに頷いたところでハッとした。…これ、何の時間!?勇者を黒く染めてしまって、良かったのだろうか?………まあ、いっか。

連休中に投稿出来なくてすみませんでした!

サイレントウィッチを大人買いして、一気読みしてたら時間がなくなってしまいました。

面白過ぎなのが悪い!わけはなくて、私の意思の弱さです。

ではまた⭐︎あなたが楽しんでくれていますように♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ