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勇者の独白2

「とりあえず、鑑定士の所へ行こうか?」

 アントンが困惑気に言う。アントンは俺の様子を見て、首を傾げている。嫌な予感の説明が難しくて、俺は言葉にする事が出来なかった。もし見当はずれの場合、俺の責任にすれば良いのだから…。

「そこはもう行ったよ!とっくに終わったって言ってた!」

 ウェインが勢いよく言う。

 その辺を歩いているメイドに、マリアンの居場所を聞くが知らないと言う。そのメイドが、他のメイドにも聞いてくれたが、そこに何の騒ぎかと、侍女が現れた。

「マリアンの居場所が分からないのです。何処にいるか、ご存知ないでしょうか?」

 金髪をきっちりと結い上げた彼女は、ほんの一瞬動揺を見せた。…怪しい。

「…申し訳ありませんが、お答えする事は出来ません」

「何故でしょう?立場が上の人間に、口止めでもされましたか?」

 その言葉に、侍女の明らかな動揺を見てとって、俺は確信を深めた。

「上の人間を出せ!マリアンを監禁してたら、許さない!!」

 怒りで、魔力が漏れ出て周囲の人間を威圧してしまう。だが、そんな事は、どうでも良かった。武器を取り出さないだけの理性は残っていたのだから。

「違います!聖女様はご無事です!落ち着いてください!」

 焦る侍女は、マリアンの事を『聖女』と呼んだ。


「何の騒ぎだ?」

 凛としたバリトンの声が響く。メイドも侍女も、慌ててその人物に首を垂れる。現れたのはエヴァレット マヴァール公爵閣下、この国の黒髪の宰相だった。この世界に来た日に、挨拶だけは交わしていたのだ。ただ、その時の彼の表情は厳しく、後になってその理由を知ったのだが。彼は召喚の儀に反対していたらしく、こちらを見る瞳には憐憫が含まれていた。

 琥珀色の瞳と、俺はしっかりと目を合わせる。

「マリアンの居場所を、知りたいだけです。そこの侍女が隠しているので、問いただしていました」

 冷静になるように意識して、魔力を抑制するが、身体の中を渦巻く熱は中々収まらない。

「本当か?何故隠す必要がある?」

 宰相の声には、不思議と嘘を許さない響きがあった。

「それは…殿下が…」

 侍女は、マリアンの鑑定結果を見た第一王子殿下が、彼女を連れて行ったと言う。他の異世界人達には、知らせるなと念押しして。その行動自体が、後ろ暗い事があると、言っているようなものだ。アントンもウェインも厳しい顔をして、侍女の話を聞いていた。

「私が、直接出向こう」

 付いてくるかと問われて、俺達は頷いた。この宰相は、話がわかる人物らしい…。召喚に反対していた人間だから、良く思われていないと思っていたが、認識を改めた方が良いかもしれない。


 黒髪の宰相は、長い廊下を迷いなく進んで行く。まるで、王子の居場所を把握しているかのように。途中で騎士から、詳しい居場所を聞いたが、ただ確認の為のような会話だった。

「王族の居室ではないから、手続きなしで進めそうだ」

 歩きながら、宰相は俺に話しかけた。

「そこだと、問題があるのですか?」

「子供が大人からの圧力に耐えられる時間は、そう長くない」

 時間がかかると、まずいのだろう、色々と。焦る気持ちを見透かされたように、俺たちに向かって宰相は大丈夫だと頷く。

「もし、何か契約をしていたとしても、責任を持って無効にすると約束しよう」

「契約?」

 黒髪の宰相には、王子が企んでいる事も、理解し、把握しているらしい。

「そもそも、未成年者の契約は、保護者や後見人の許可がいる。心配要らない」

 その声には不思議な事に、とても安心感があったのだった。

やっとまともな時間に投稿出来ました。

ダメな私を見捨てないでいてくれる、あなたに感謝!

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