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団体戦3

短い上に、遅くなってごめんなさい!

 ざわりと周囲が湧き立つ。それがクロードが笑みを浮かべたからだと、綾は気付いていなかった。ただ、のほほんと、珍しいクロードの騎士服姿に見惚れていたのだった。


 カトラル地方騎士団と、ウラール地方騎士団の団体戦が始まる。

 開始の笛が鳴り、黒い騎士服と赤い騎士服が動き出す。深緑のマントを翻し後方に下がると、クロードは的に強力な結界を張った。団体戦でのクロードの役割は、的を守る事なのだ。

 毎回ウラール地方騎士団にとって団体戦は、若い騎士に経験を積ませる場になっている。ガーランドやロスウェルは指揮する為にいるが、ほとんど戦闘には参加しない。なぜなら、ベテラン騎士達が参加すると、勝負が一瞬で終わってしまうからだ。もちろん、ウラール地方騎士団の圧倒的勝利という形で。

 この模擬試合は民衆や貴族の娯楽なので、盛り上がりに欠けると後で文句を言われてしまう。そんな事情もあるので、新人騎士の見せ場を作る意味でも、団体戦は若い騎士が選ばれるのだ。もちろん選ばれる時点で、その騎士達の実力はかなりのものなので、何も心配はいらない。クロードの鉄壁の守りがあるからこそ、若い騎士達も全力が出せるのだった。


「シンディ!凄い!戦いながら魔法攻撃全部躱したり、結界で防御したりしてる!」

 綾は興奮しつつ、シンディを目で追った。

 目にも止まらぬ速さで繰り出される魔法攻撃を、鮮やかに躱しつつシンディは攻撃を仕掛ける。素早さを生かし防御する赤い騎士服達を蹴散らしながら、一つの的に辿り着く。そして防御魔法に守られた的に氷魔法を叩きつけた。だが、防御魔法の方が優れていたのか、的は砕けない。シンディを守る様に他の騎士達も、カトラル地方騎士団との混戦にもつれ込んでいる。

 だがそこでもシンディは、冷静に剣を構え、魔力を纏わせた剣で的を斬りつけた。音を立てて的が砕ける。上がる歓声に見向きもせず、次の的に向かうシンディ。次は別の若い騎士が的を斬りつけ、シンディは援護にまわっている。そして、また別の若い騎士が的を破壊し、終了の笛が鳴った。ウラール地方騎士団の応援席からは、大きな歓声が上がり、綾も旗を振って声援を送った。

 結果として完全勝利を納めたウラール地方騎士団だが、護りが強固だからこその若手騎士達の活躍があるのを、戦闘の経験がない綾でも分かった。やっぱりクロードは凄いのだと思い、綾が熱い視線を注いでいると、クロードも綾に微笑んで手を振りかえしてくれる。嬉しくなって綾は叫ぶ。

「かっこ良かったよ!」

 クロードは蕩けるような笑みを浮かべて、『個人戦も観ててくれ』と言った気がした。視力強化した綾は、それが間違いでない事をエメリックに確認する。

「ちゃんと言ってたよ」

 エメリックは、ニヤニヤ笑いながら頷く。

「皆んな驚いてたねー」

「何が?」

 綾は不思議に思って、首を傾げた。

「ふふふ、クロードがあんな表情するからよね」

 ソフィアも扇子で口元を隠しながら、おかしそうに笑う。


 そこで少し目立ってしまったのかもしれない。こちらを伺う視線が増えた事に、綾は気付いていなかったのだから。

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