献血2
「…………やっぱり、私の血も飲む?」
クロードの首筋から離れたエメリックに、綾が問いかけると、クロードがギョッとした顔をした。露わになった首筋と鎖骨が色っぽいなぁ…と考えつつ、綾は自分のブラウスの第一ボタンを外す。
「…あ、アヤ?」
クロードがどこか呆然として、エメリックと綾の様子を交互に見ている。
「俺は、歓迎だけど?」
ガーネットの瞳が、綾とクロードを見ながら面白そうに輝く。
「じゃあ、どうぞ」
椅子に座ったままの綾のところにエメリックが来て、肩に掛かる黒髪をそっと後ろに流した。
「遠慮なく、いただきます♪」
嬉しそうに顔を綻ばせたエメリックが、綾の首筋に噛み付く。クロードも、綾が味わった気分を、感じれば良いのだ…そんな事を考えながら、ゆっくり綾は目を閉じた。
「………あの、アヤ?」
エメリックが綾から離れると、おずおずとクロードが話しかけて来た。
「これで、おあいこだね」
綾はボタンを直しながら、クロードににっこり笑いかける。クロードは言いたい言葉を飲み込んだのか、眉尻を下げて溜息をついた。
「やっぱりアヤって、面白いよね?」
満足気にお腹を摩りながら、エメリックが笑う。
今度から献血する時は、非常事態以外だが、二人同時にやろうと綾が提案するとクロードは、苦笑しながらも了承したのだった。だってどっちかがモヤモヤするのは、なんだかフェアじゃない気がするのだ。
「あー、魔力がぐるぐるしてるー。気持ち良いー」
談話室に場所を移し、エメリックはだらしなくソファーに横になっている。ガーネットの瞳が、眠そうに蕩けていた。
「人の魔力って、取り込むと気持ち良いの?」
反対側のソファーに、クロードと並んで座りながら綾は疑問を投げかける。
「相性が良ければね」
「それって人間も変わらないの?」
「吸血鬼族ほどじゃなくても、気持ち良いものだと思うよ?キスとかしてると、気持ち良くない?」
綾は、ぼぼっと顔が一気に熱くなってしまう。隣のクロードの顔をチラリと見た綾は、彼の耳が赤くなっているのに気付いてしまった。…自分だけが恥ずかしいわけじゃないみたいだ。こういう話をする時、エメリックは本当に綾より年上なんだなと実感する。
「自分じゃない体液を身体に取り込むと、気持ち良くなるんだ。性交とかは多分、魔力の交換による快感もあると思うよ?」
「へ…へぇ」
また綾は、知らないディープな異世界情報を知ってしまった。
「昨日の夜は違ったみたいだけど、そのうち実感するんじゃない?ねぇ?」
大人な会話に、どう切り返すのが正解か分からないまま、綾は曖昧に頷く。
「………そう言えば今朝…ソフィア様にじっと見られていたのは…もしかして?」
「………アヤ、その話は聞いてないが?」
避妊薬を4本も貰った話をクロードに言うと、彼は頭を抱えていた。ぶつぶつと、ありがた迷惑だとか呟いている。
「綾の中にクロードの魔力があるかどうかは、見てたんだろうねぇ?俺も気になって見に行っちゃたけど」
エメリックは可笑しそうに笑う。何それ!?恥ずかしすぎる!!と思って、綾は思わず顔を覆ってしまった。
「普通の人間には、魔力見えないから大丈夫だと思うよ?」
「彫金棟の皆さんは、ほぼ魔族ですけど!?」
超個人情報筒抜け!?
「そうだねぇ?」
そう言ってエメリックは、まるで他人事のように笑った。