表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
145/175

クロちゃんの助言

 シリウスが、クロちゃんと戯れている様子を見ながら、クロードはシリウスに話しかけた。

 あの秘密の集まりの後から仕事が手に付かず、アルフィーに執務室を叩き出されたのだ。心配事が決着するまで戻って来るな!と言われてしまっては、クロードもモヤモヤと向き合うしかなくなる。そこで転移してマーレの屋敷までやって来ていた。


「本当に、例の男に何もしていないのですか?」

「ああ、何も」

 簡潔なシリウスの言葉を聞いて、クロードは落胆した。叔父の性格なら、身内認定した者の敵には、容赦しないであろうから。その叔父が何もしていないなんて、本当に信じられない。

「そうですか…」

「不服そうだな」

 くつくつと笑いながら、シリウスはクロードを慈愛に満ちた表情で見る。叔父は時々、こういう顔をするのだ。幼い子供を見る様な眼差しが、いい大人であるクロードに向けられるのは納得出来ない。年齢差を考えたら当たり前なのだが、子供扱いは切実にやめて欲しいところだ。

「心配しなくても、奴は『堕ちる』」

「………それはどういう意味なのです?」

「そのままだよ。立場、地位、金、人、ありとあらゆるものが手からこぼれ落ちる。チラリと覗いて見たけれど、反省もしていないようだったし確定だろう。あっちの神は結構人間に不干渉だけれど、気紛れに手を差し伸べる事もある。だが、彼は無理だな。神に好かれる要素がない。多分坂道を転がり落ちるように…『堕ちる』ね」

 確信に満ちた金色の瞳が、クロードの方に向けられる。

「…因果応報ですか?」

「まぁ、そうとも言う」

 シリウスの言う不確かなものでは到底納得出来ないが、クロードは不満を飲み込み一つ息を吐く。


 二人の話を、聞いていたクロちゃんが、不思議そうに首を傾げた。

「シリウスの『何もしていない』は、手を下していない…という意味だろう?嫌がらせは何かしたうちには、入らないのか?」

 クロードは波打つ黒髪の美少女の漆黒の瞳を見つめながら、ギョッとした顔をした。嫌がらせ?と疑問に思い、シリウスを見ると苦笑いしている。

「…ちょっと悪夢を見せるくらいの可愛いものが、『何かした』内に入る訳ないだろう?向こうの神も、黙認してくれたしね?」

 悪夢…か。精神的に追い詰めるのは、叔父の中では『何かした』内には入らないらしい。


 ほんの少しだけ、モヤモヤが晴れたクロードは執務に戻ろうと踵を返しかけるが、思い止まってシリウス達を振り返る。

 クロードは、シリウス達との秘密の集まりを経て、綾との距離感に悩んでいた。その事で助言が欲しかったのだ。

「やっぱり、他人の色を纏うのって、抵抗があるものでしょうか?」

 綾の過去を聞いて二の足を踏んでいるクロードは、綾に自分の色の宝飾品を身に付けさせるのを、躊躇っていた。綾の夜会への出席は決まった事とはいえ、無理強いはしたくないのだ。

「相手による、としか言えないな?クロはどう思う?」

 シリウスが、面白そうにクロに問いかけた。

「ウジウジ悩んでるくらいなら、相手との距離を縮める努力をした方が建設的じゃない?」

 可愛い見た目に似合わず、バッサリと言い切るクロは、他人の話を盗み聞きするのが趣味なので、ある意味助言は的確だった。

「………………ソウデスネ」

 クロードは数日後に迫った、収穫祭で綾との距離を縮めようと心に誓ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ