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密かな集まり1

 バドレー領の会議室に、密かに集まった者たちがいた。あの綾が取り乱した事件から数日後のことである。

 領主であるクロード、その弟のレナード、前領主のクリストフ、その妻で前侯爵夫人のソフィア、前ウラール地方騎士団団長でクリストフの兄であり、現在は図書館司書長のメルヴィル、その妻であり侍女長のパメラ、クラデゥス帝国皇帝シリウスだ。身内の集まりとは言え、豪華な顔ぶれだが、彼らの雰囲気に明るさはない。

 それと言うのも、シリウスがとある話をする為に、彼らを招集したからだ。


「話と言うのは他でもない、アヤの事だ。ダリアから話を聞いて皆知っているだろう…」

 シリウス以外の皆が頷く。個人情報を共有するのは躊躇われるが、最低限の人には共有する事にしたのだ。シリウスは遠見の魔法で綾の話を聞いていたが、これは共有した方がいいと勘で思ったのだ。


「先日ちょっとアヤのいた異世界を、遠見で覗いたんだが…」

 シリウスが話はじめ、その内容に皆が息を呑んだ。

「は?ちょっと待ってください!エメリックを貸してくれって言うから、何をするのかと思っていたのですが、異世界を覗いた!?」

 クロードが話を遮る。綾が飛ばされたという森の中を、シリウスはエメリックに案内させたのだ。

「うむ。アヤがこっちに来た時の森の中に、痕跡が残っているだろうと思ってだな…」

 …クロード、いくら綾の事だからと言っても、取り乱し過ぎではないだろうか?とシリウスは内心呆れた。ソフィアが心配するのも、納得だ。

「魔力は、長時間残滓は残らないでしょう?」

 レナードも、疑問を口にする。そう言えば、綾に説明した時に、レナードはいなかったな…。

「魔力は時間が経てば魔素に戻ってしまうが、神気は時間が経っても薄れない。世界を渡る時に綾に付着していた神気と、森に残った痕跡を辿れば、覗くぐらいは出来ると思ってな」

 普通の人間には出来ないだろうが、シリウスは魔族の王である。魔法に長けた魔族の王は、伊達ではない。世界を超えての魔法行使も、凄く頑張れば出来るのだ。ただ、もの凄く疲れるし、魔力も枯渇寸前まで使うから普段はやらないだけだ。今回は綾の事だから、気になったからという理由で遠見の魔法を使った。

 ちょっと予想外の魔法を使ってしまったので、気を失う寸前だったが、ソフィアがそばに居たので何とかなった。だが意識朦朧な私に、バケツに入った魔力回復薬を飲ませるなんて、我が妹ながら鬼畜過ぎやしないだろうか…!?助かったけど!!


 シリウスはコホンと咳払いをして、説明の続きを話す。

「異世界人召喚は、ある特定の人物にしか作用しないのは知っているか?」

 しんと場が静まり返る。あまり知られていない事だから、皆が知らないのも無理はない。

「…未来の世界に、影響のない人物が選ばれる…だったか?」

 メルヴィルが顎に手を当てながら、思い出すように呟いた。さすが勉強熱心なメルヴィルだと、シリウスは感心しながら頷いた。

「つまり、近い将来命を落とす人物でなければならない」

 数人が息を呑む音がした。

「…………つまりアヤは、元の世界で命を落とす運命だった?」

 呆然としたクロードの顔色は悪い。シリウスはしっかりとクロードのアクアマリンの瞳を見据えて、頷いた。

「アヤは、部屋の中で召喚されたと…」

 クロードの声が、震えていた。

「そのすぐ後で、命を落とす予定だったのだ。アヤが怖がっていた人物に殺される運命だったのだろう…」

 よりによって、他殺とは、穏やかじゃない。だが、殺される前に召喚されたのだから、綾にとってはまだ良かったのではないだろうか。

「何故!?」

「私が異世界で観てきた事を、説明しよう…」

 シリウスは、徐に話し出した。

遅くなってしまい、すみません!

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