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幸せな日々

遅くなって申し訳ない!

 コホンと咳払いが聞こえて綾が顔を上げると、クロードがクリストフに向き合っていた。

「ええ、そうします」

 と真顔で答えるクロードに、綾は頭を抱えたくなった。先ほどのクリストフへの返事なのだろうが、二人の時はイチャつくつもりなの!?と綾の顔は益々赤くなる。何だこれ?どういう状態なの!?と若干パニックに陥っている綾は、頭の混乱具合とは裏腹に何も言葉を発する事が出来なかった。

「お前は本当にクロードなのか?中身が、誰かに入れ替わっているのではあるまいな?」

 常に無い回答だったからか、クリストフも頬を引き攣らせてクロードを凝視している。確認ですけど、お宅の御子息様ですよね!?

「相変わらず、失礼ですね」

 そんな中、クロードだけが、いつもと変わらない表情で淡々と返している。

 態度はいつもと変わらないというのに、言葉の破壊力よ…!いや、いや、違う!好きとか言われた訳じゃないから!!黒色が好きってだけだから!!!たまたま、私と色が被っただけだから!!!!そう!そうよ!別に狼狽える必要なんてなかったのよ!!


 頭の中で絶叫して、少し冷静さを取り戻した綾は、クロードをチラリと見た。綾が頭の中の嵐に翻弄されている間に、クロードはクリストフと打ち合わせを再開している。話題は綾の髪飾りに移っており、完全にお仕事モードだ。綾はほっと息を吐き出した。

「アヤ、髪飾りを着けてみても良いか?」

 クリストフから実際に着けて状態が見たいと言われ、綾は頷く。

「本当は髪を結い上げてから使うのだが、当てて見せてくれるだけども良い」

 仕事中に使っているシュシュを使って綾が髪を簡単なお団子状にすると、クロードが銀細工が繊細な髪飾りを、黒髪の間に挿し込む。自分ではどんな感じか分からないため、クロードとクリストフを見上げると、その場でゆっくり回るよう指示された。ゆっくりと回りながら、注目されるのは、案外緊張するものだな…と綾は感想を抱く。それから、首を傾げる様に指示をされたり、この場でクロードとターンしろと言われたり、その度に素直に従う。やっと満足したらしく、クリストフはうんうん頷きながら改善点が分かったと綾の髪から髪飾りを抜き取ると、そのまま自分の作業ブースへと消えてしまった。これから作業に取り掛かるのだろう。

 クロードと綾は顔を見合わせ、どちらからともなく笑い合った。その笑顔は、完全に気の抜けたもので、綾は何だか胸の部分が満たされた様な感覚すらするのだから不思議だ。


「収穫祭の日も、髪を結い上げて欲しい」

 祭りの日は、女性は髪に花を飾る習慣がある様で、クロードは綾が自分の作業スペースに戻る時に、そう声を掛けて来たのだ。クロードの話によると、沢山の花を髪に挿して貰えると幸運が沢山訪れるのだとか。男性は帽子やポケットに花を差し込まれるので、人気がある人ほど花だらけの姿になるのだと笑う。

「…ええ、そうします」

 綾はクロードが花だらけにされる様子が簡単に想像出来てしまって、クロードに釣られて笑ってしまった。



 きっと毎日が楽しくて、何気ない日々が幸せで…だからふと不安になってしまったのだ。幸せな日々を蝕む原因はないだろうかと…対処を誤ったら…簡単に壊れてしまうと綾は知っているから………。

 短くてごめんなさい!キリの良い所で区切りました!

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