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フレデリックとマークとレナード2

「アヤさんとの接触って、話をするって事?」

 レナードは眉を顰めて、フレデリックを見た。

「いや、警戒されるのは嫌だからね。姿だけ確認出来ればそれで良い」

 フレデリックの言葉に、構えていた分だけレナードは肩透かしを食った気分になる。

「それって意味あるの?」

 ほとんど存在確認だけじゃないかと、レナードは首を傾げる。

「警戒されて逃げられたら、笑えないからさ。第一王子に彼女が確保されるのも避けたいし、私がここに来た事も出来たら秘密にしたいんだ。兄は私の動向を覗っているからね。公式に会うのは、彼女が私に会っても良いと思えてからだろうね。その時も兄に見つからない様にこっそりと会えたら良いけど…」

 第一王子派には気付かれない様に気を付けて欲しいと、フレデリックは続けて言った。

「フレデリックは、召喚された異世界人達との交流には、難儀したようだから…」

 マークが苦笑しながら、肩をすくめて見せた。

「第一王子が拗らせてくれていたから、難しいのなんのって…」

 まるで警戒心剥き出しの野生動物を相手にする様な感覚だったと、フレデリックは話す。綾を見ていても、レナードはそんな感想にはならなかった。初対面こそ緊張した面持ちだった綾だが、警戒はされなかったように思う。クロードやクリストフが、綾の警戒心を取り去ってくれていたのだろう。

「アヤさんの事は、バドレー侯爵に任せてくれるって事で良いのかな?」

「それが、最善だと思っているよ」

「言質は取ったからね」

「ああ、バドレー侯爵には、陛下から密書が届くと思う。正式な文書だよ」

「陛下もフレデリックの考えを支持しているって事?」

「立太子までに、多くの貴族からの支持を集める事に繋がるなら、嫌な顔はしないと思う。陛下って、意外と融通が利くんだよ。対立を避けたいからだと思うけど、国の舵取りは大変だからね」

 確かに議会が対立していては、政策などの案も通りにくくなる。こういう苦労をする事になるのなら、側妃なんて持たない方が良いよねぇと、側妃から生まれたフレデリックはのたまう。


「第一王子派を切り崩す、秘策でもあるの?」

「第一王子と第一王子妃は、別居中なんだ」

 え!?とレナードは目を見開いた。

「原因は、王妃が子供の教育に口を出すからだってさ」

 嫁姑問題って、何処にでもあるんだなと思いつつ、レナードは頷く。

「そんなことで?」

「そんな事って言うけど、アラバスター公爵家で息子を預かるって言われたら…ねぇ?」

 王妃は三歳になった第一王子の息子を、魔法教育の行き届いたアラバスター公爵家に預けて教育する事を提案したのだとフレデリックは話す。子供を取られる事に危機感を抱いた第一王子妃のステファニアは、西南のグラント地方にあるカルヴァート公爵家の領地に引きこもってしまったのだ。

「何だってそんな、王妃様はメチャクチャな提案をしたんだ?王城に教師を招けば良いだけじゃないか」

「大方、孫をアラバスター公爵家と、親密にさせたかったのだろうよ」

 やれやれと首を振るマークも、第一王子派には辛辣だ。


「私は甥っ子に会う名目で、カルヴァート公爵家にちょくちょく顔を出しているのだが、義姉上の愚痴を親身になって聞いているのだよ」

 だからなかなかに親密な仲なのだとフレデリックは笑う。

「第一王子は何してるんだ!?母親と妻との仲裁もしないのか?」

「義姉上が実家に戻られてから二年になるが、一度もカルヴァート公爵家を訪れた事がないそうだよ。甥っ子のロイスはもう五歳になるが、成長が気にならないのかな?」

 そう言いながら、フレデリックは肩を竦めて見せた。

「夫婦仲も冷え切ってるって?それ、かなりヤバくないか?」

「まぁ、元々兄はシェリー様が好きだったからね。シェリー様はレナードも知っての通り、君の兄上のメイナードを選んだ。兄と二歳差だったステファニア様は、仕方なく王家に嫁いだっていう経緯だね」

「………なんか、ゴメン」

「レナードが謝る必要は無い。兄の努力不足が原因だからね」

「…………なぁ、コレって僕が聞いても良い話?」

「王城では有名な話だけど、義姉上が実家に帰った理由は秘密でね」

「うん、分かった」


「フレデリックが王太子って事は、時期チェンバレン公爵は、シェリー義姉上って事になる?」

「特例でそうなるだろうな」

「兄上もその子供達もチェンバレンを名乗る事になるから、バドレーの後継者がクロード兄上と、僕だけになるじゃないか!?」

「バドレー侯爵の婚姻は急務だな」

「ああ、バドレーにとっては一大事だ!」

 アヤ、お願いだからクロード兄上を選んでくれないだろうか!?そんな事を考えているレナードは、自身の婚姻の事は頭から抜け落ちている。


「兄よりも、自分の婚姻の心配はしないの?リシェルが、レナードに会いたがってるよ?」

 リシェル王女殿下は、側妃から生まれたフレデリックの妹で二十歳の朗らかな性格の姫である。レナードは、王立学園時代にフレデリックを通じて交流し、仲良くなった。

「手紙でのやり取りはしてるよ?」

「リシェルも、避暑でバドレーを訪れたいって言ってたよ」

「でも王家は、いつも違う場所で避暑するでしょう?」

 レナードはエナリアル王国有数の観光地である、高原の避暑地を思い浮かべた。

「ふふふ、今年は合同演習があるから、私と母上と妹は、避暑地はバドレー領のマーレにしたんだよ。王家の保養所もあるし、マヴァールの別荘も近いから、母上も気軽にお祖父様とお祖母様に気軽に会いに行けるし?その事もその内連絡が来ると思うよ?」

 レナードは、目の前の友人達を見て、今日何回驚かされるのだろうかとため息を吐いた。

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