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朝食での話

 綾は朝食を食べながら、不思議に思っていた。クロードはいつもと変わらないものの、レナードが疲れた顔をしていたからだ。山道を歩いても、綾はその現場を見た事はないが魔獣を狩っても、疲れた顔一つしないレナードの普段の様子を知っているだけに、不思議でしかたない。思わずレナードを見て、首を傾げた。

「そうだ、アヤさん!今日はお休みなんですって?」

 ソフィアが食後の紅茶を優雅に飲みながら、綾に問いかけた。

「え、そうなんですか?」

 綾は初耳である。

「ああ、伝え忘れていたけれど、魔道具を設置した後は数日放置して計測結果に異常がないか確かめるんだ。今日と明日はお休みでいいよ」

 レナードがうっかりしていたと綾に謝り、綾は今日の予定がポッカリと開いてしまった事に少し戸惑う。

「…そうなんですね。…何しようかな?」

「アヤさん、やる事がないなら、大きなお世話かも知れないけれど、回復魔法を覚えておいた方がいいわよ?誰かさんが忘れる場合もあるし……ね?良ければ私が指導するけれど?」

 レナードの顔色が悪いが、どうしたのだろうか?それよりもソフィア直々に教えてもらえるとは…綾は光栄に思う。

「良いのですか?」

「もちろんよ!」

「レナードに傷を作って、練習しましょうか?」

 何でもないことの様に、ソフィアが提案した。

「え!?」

 レナードは、途端に青い顔になって震える。クロードはレナードに憐憫の眼差しを送っている様に見えるが、綾の気のせいだろうか?ってそれより、断らなければ!

「申し訳ないのですが…いきなり人間相手は、荷が重いです!!」

 綾の回復魔法の訓練に付き合ってもらうのは申し訳ないし、はっきり言ってその為に人を傷付けるのは、怖いし絶対に遠慮したい。

「あ、そうだ!!貝!貝はどうですか?仕事にもなるし、一石二鳥ですよね!!」

 真珠養殖の手伝いが出来れば、申し訳なさが薄らぐ気がして綾はソフィアに提案した。

「遠慮しなくていいのに…でも、とても良い思いつきね!そうしましょう!」

 ソフィアの決定に、レナードは胸を撫で下ろした。心なしか、クロードの表情も和らいだ気がする。

 もしかしたらソフィアは、魔族だからなのか、少しズレているところがあるのかも知れないと綾は考えた。


「そう言えば、お姿が見えないのですが、シリウス様は?」

 いつも美味しそうに朝食を食べているシリウスが、今はいないので綾は不思議に思っていたのだ。ちなみにブラッドはマヴァールから戻ってすぐに、騎士団の駐屯所にある転移陣で先にクラデゥス帝国に帰っていたりする。皇帝陛下は居なくても大丈夫だが、宰相はそうではないらしい。

「お兄様はマヴァール公爵家の別荘に居るわ。マブダチの両親に挨拶して来るって。向こうでもお世話になったみたいで、昨日伺ってそのまま泊まったみたいね」

 多分気に入った料理を振る舞われて、ご機嫌で過ごしているに違いないとソフィアは話す。

「さようでしたか」

「クロちゃんを放っては置かないはずだから、その内戻ってくると思うわ」

「クロちゃん?」

「黒竜のクロちゃんよ?」

 あの黒竜は、そんな可愛らしい名前だったのか…意外。今は騎士団のマーレ駐屯所にある獣舎でのんびり過ごしているのだとソフィアは話す。クロちゃんに乗せてもらった事がある綾は、黒竜に怖さを感じる事はない。今度差し入れを持って、訪ねてみようか…?などと綾は考えた。

「今日は午後からマヴァール前公爵夫妻と会う約束しているのに、お兄様ったらせっかちよねぇ?一日ぐらい待てなかったのかしら?」

「思い立ったらすぐ行動の伯父上ですから、無理でしょう」

 クロードが淡々と事実を話すと、レナードもそれに頷いた。……そう言えばせっかちだったな…と綾は過去を振り返りながら納得する。


「そう言えば綾、ブランの民の長自ら出向いて、綾に謝罪したいと言ってきているがどうする?」

 クロードのアクアマリンの瞳が、少し心配そうに綾を見る。

「大事にはしたくないので、頂いた謝罪の書面だけで大丈夫です」

「だが、向こうが納得しないかも知れない」

 ブランの民は今回の事を重く受け止めている様で、誠心誠意謝りたいと思っているのだとクロードが話す。

「う〜ん…私としては、今後交流していく上で、信頼関係を作っていけたらそれで良いのですけど」

「そうか。ではその様に伝えておこう」

 この時の言葉が、少しばかり婉曲に伝わってしまうのを、この時の綾はまだ知らない。


 いつもお読み頂きありがとうございます!

 ちょっと年度末でバタバタしています。週一で投稿出来るように頑張りますが、無理だったらごめんなさい!

 では、また⭐︎あなたが楽しんでくれていますように♪

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