プロローグ
『隠れオタクな腐女子たちは召使いな俺にデレてくれない』、略称『隠デレ』!
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俺、海野零斗は今、手足をロープで縛られて地面に正座させられている。
「……なんでこんなことになってるんだ?」
「「「はい?」」」
目の前には三人の女の子。俺を取り囲むような状況は、まるで魔女裁判の様相だ。
「どうしてって、そんなこと決まってるでしょ!」
「あなたが、知ってはいけない私たちの秘密を知ってしまったからよ」
「ふふふ~。先輩は、もう逃げられませんよ~」
その容姿から『文化部の三大美女』なんて名前を付けられた、三人に見降ろされている。いや、言葉を濁しても仕方がない、三人に見下されている。
事は数分前、カーテンが閉められ電気も消された真っ暗な部室に足を踏み入れた瞬間から始まった。
「かくほーーーーーーーーーーーーーー‼」
一人の合図によって、残り二人も揃っていきなり飛び掛かってきた。いくら俺が男だとしても、不意を突かれ襲われては抵抗のしようがなかった。
その結果、手足をロープで縛られ地面に正座させられ、その前に三人の女の子が仁王立ちするという構図が完成した。
既にカーテンは開かれて、部屋の電気も付けられている。窓から入ってくる日差しが目に痛い。それも間違いなく彼女たちがそうなるように位置取りしたに違いない。
さっきの一悶着で眼鏡がなんか歪んでる気がする。なんか上手く鼻にかかっている感じがしない。とは言えちょうどいい位置に直そうと思っても、手を縛られてるから直せないのだが。
「なにキョロキョロしてるのよ! ちゃんと私たちのことを見なさい!」
そう言って俺の顔をつかんで正面を向かせてくる仁王立ちの女の子は、『文化部の三大美女』が一人、照川陽里。
俺と同じ二年生で、肩にかからないくらいの長さの明るい髪をカールに仕上げた、いかにも可愛らしいという言葉が似合う少女。去年の文化祭の人気投票で三位に入賞するほどの人気が、そのことを裏付けている。
けれどもそんな人気者は今、その可愛らしさからは考えられないような冷たい視線を俺に浴びせてくる。
一部の男子なら、このシチュエーションはよからぬ妄想を働かせ、ご褒美でしかないと言うかもしれない。
可愛い女の子からの冷たい視線、確かにご褒美になるのかもしれない。ただし、それは二次元に限った話で、三次元では何らトキめくものがないと、今初めて学んだ。
「私の話を聞いてるの‼︎」
そんな考え事をしていたことさえも見抜かれる。……少なくとも、彼女の怒りは簡単には収まりそうにない。だから、助けを求めるべき人物を変えるべきだと、二人目に視線を移す。
「……逃げないんで、このロープ外してくれませんか、先輩」
「残念だけど零斗くん、それはできない相談ね。そのロープは、あなたが為すべきことをしてくれるまでは外さないと決めているの」
視線の先、腕を組みつつ右手を顎に当てている佇まいの女性。そんな一つ一つの動作が洗練されているようで美しい月影涼子先輩に助けを求めるものの、あっさりと却下されてしまう。
『文化部の三大美女』の二人目、月影涼子。ストレートロングなその髪と整った顔を持つ、まさにクール美少女。その容姿に一目惚れをして告白した男子は数知れず。しかしそのすべてを撃沈させてしまったことから、いつしか『難攻不落の月影城』なんて別名も付けられている、一学年上の三年生。
そんな美人の先輩に今のように見下される、一部の熱狂的なファンならお金を払ってもいいと言うかもしれないシチュエーション。
けれども俺からすれば、それはあくまで二次元でなら同意できるのであって、現実で実際に受けてみると怖いという感想以外何も思い浮かばない。
「……為すべきことって、いったいなんなんですか?」
「それはもちろん先輩が~、私たちの秘密を墓場に持っていくということですよ~」
ニコニコとした笑顔を浮かべながらも、おでこから目のあたりまで影がかかっているような顔をした、星井弥美が俺の質問に対して代表して答える。
『文化部の三大美女』最後の一人、星井弥美。肩にかかるくらいの長さの髪をサイドテールでまとめた、少し幼げが残っている一学年下の一年生。入学からたったの一か月で、既に俺の学年にまで「めちゃくちゃ可愛い女の子がいる」と噂が聞こえてくるくらいの女の子。
そんな後輩の前に跪いているこの状況。一部の狂信者たちなら大喜びする状況なのかもしれない。
だが三度繰り返そう、こういう状況は三次元じゃご褒美でも何でもない。
「それじゃあダメ。私たちのいない場所で秘密を話すかもしれないし」
「そんなことするつもりないんだけど……」
「そうね、確かに零斗くんはそういうことをする人とは思えないわ」
「先輩……!」
「けれども照川さんの言う通り、保険は必要ね」
「えぇ……。そんなの必要ないですって……」
誰彼構わずに、人の秘密を暴露するつもりなんて最初からない。そもそも、彼女たちの秘密が他の誰かに知られれば、俺にも大ダメージが跳ね返って来るのだから。
「分かってないですね零斗先輩~。大切なのは先輩がどう思っているかじゃなくて、私たちがどう思うかなんですよ~?」
「それについては私も星井さんと同じ意見ね」
「私も二人に同じ」
いつもは全く波長が合わなくて、言い争いばかりしているはずの三人が今日に限って完全に結託している。確かに喧嘩していないということ自体は、俺にとってもうれしいことだ。
でもこんな状況はちっとも望んじゃいない!
「……そもそも、被害者はどちらかと言えば俺の方じゃないか?」
「なに言ってるの?」
「なにを言ってるのかしら?」
「なにを言ってるんですか~?」
小声で呟いた言葉は、三人同時に一瞬にして否定される。
「どさくさに紛れて、人の胸を触ったくせに……」
「倒れた拍子に私のパ……、下着を見たのは誰だったかしら……」
「私から逃げようとしたと思ったらいつの間にか抱きしめていたのは誰でしたっけ~……」
「「「はぃ?」」」
三人の声がより低いものになって、より恐怖感を増す。
「その節については大変申し訳ございませんでした!」
三人に気圧されて、土下座することしかできない。
「もし零斗が」
「本当に悪いと思っているのなら」
「私たちのお願いを聞いてもらえますか~?」
これまででは考えられないくらい、本当に息ピッタリな三人。普段からこれくらい仲良くしてほしいものだ。
「……その、お願いっていうのは?」
はっきり言って嫌な予感しかしてこない。けれどもそれが何かを聞かなければ話が進まない。だから勇気を振り絞って、彼女たちに問いかける。
「それは、私の便利な道具になってもらうこと」
「それは、私に従順な執事になってもらうことよ」
「それは、私の言うことを聞いてくれる犬になってくれることですよ~」
「…………やっぱり」
どうしてこんな事態になってしまったのか。
それはこの部室で拾った、一枚の写真が全てのことの発端。
天井を仰いで思い出す。あの日からの出来事を……。
海野零斗を中心とした物語が始まります!
最も、零斗にとっては既にクライマックスって感じですけどね笑
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