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人生舐めきった奴に仕事の仕方を教えてみた

※あの後スタッフが美味しく頂きました(前話と、ラストに繋がりありですがどうでも良いネタです)

「やめて!シータお姉ちゃんを連れてかないで!ぎゃあっ」


グレイシティの貧民街の大通りを10歳ぐらいの少年が鼻血を流しながら筋骨隆々の男に食ってかかる。何度弾かれても棒切れ片手に突っ込んでは殴られ、蹴られ転がる。

少年の姉らしき10代後半の少女は、観念したように頭を垂れて男について行く。


「これ以上弟に酷いことをしないで下さい、分かりました。私を連れていってください・・・・・・ごめんね、私が悪いの」


とりあえず街に戻って補給してから次に行こうと思ったら、人相の悪い男達が訳ありげな姉弟とトラブル起をこしている場面に出くわした。

見た感じ弟は暴行を受けているし姉の方も連れていかれることを良しとしている訳では無いようだ。


「まあまあ、お前ら女子供相手にまじになりすぎだろ?カッコ悪いからやめとこうぜ?」


馴れ馴れしい態度で男たちの1人の肩に手を置く。


「なんだ貴様は?半裸で鉄仮面なんぞ被りおって貴様こそなんのつもりだ!変態はすっこんでいやがれ!」


そう、今の俺は上半身半裸の上にアイアンヘルムを装着しているのだ。海で遊んでるうちに日光浴もしたらそのまま寝てしまい全身ヒリヒリの火傷になっていたりする。


男に振り払われた際に皮膚が擦れてビリビリしたので、思わず肩に掛けた手を力任せに握ってしまった。


「ぎゃああああ、や、やめろ、何をする!?」


「うるせえな、テメーのせいで俺の日焼けボディが痛えだろうが!」


どちらがゴロツキか分からないようなセリフが出ちまった。俺がその男を突き飛ばすと、仲間の男たちは俺の登場に形勢不利とみたのか突き飛ばされた男を回収して素直に逃げていく。


「く、これで済むと思うなよクソガキ共め!貸しは必ず返してもらうからなぁ!!」


「ふん、行ったか。大丈夫かボウズ?」


地面に倒れたままの弟を助け起こしてやると、姉の方もこちらに寄ってきてお礼の言葉を言う。なんか時代劇とかドラマの主人公ぽくて今日の俺いけてるぅ!!


「あの、ありがとうございます。私はシータと申します。こちらは弟のムスカです」


「うう・・・・・・痛てて、兄ちゃんありがとう」


なんか言ってるが、俺は言わずには居られなかった。


「おいボウズ、バ〇スって言ってみろ」


「ばるす?なんだいそれ?」


ギャハハハハ、笑わずにはいられない。ついでに目がああああ!!も言わせたいところだが、よりによってこんなネーミングの姉弟がいたとは、偶然とは恐ろしい。視線を感じて周りを見回す。突然笑い始めた俺が不思議だったの、物陰に隠れてやり取りを見ていた住人達が、変な奴を見る目で俺を見ている。見るなよ。


「で、あいつらは何だったんだ?」


「あいつら、姉ちゃんを連れてって強制的に店で働かせるつもりなんだ!!ちくしょう、俺にもっと力があれば・・・・・・」


「奴隷商かなんかかよ、ひでー話だな」


「いえ、彼らはそんなものじゃありません。悪いのは私なんです・・・・・・私が生きるせいでみなさんにご迷惑を・・・・・・」


女子供相手になかなか非道なことしてるようだしここは風天のアイアンヘルム、男はつらいよ編でお送りするかな。


「わかった、お前ら俺に任せな!またきやがったら話をしてやるよ」


「本当ですか!?私、お店に行かなくて良いんですね・・・・・・」


余程気を張っていたのか安堵したシータは気が抜けてその場でふらっと立ちくらみを起こす。それを弟のムスカが支える・・・・・・2人の間に僅かな希望が湧いたからか笑顔が見れた。ムスカでさえなければいいシーンだが、ムスカって・・・・・・誰だこんな名前にしたやつは!?


というわけでぇ!いつ来るか分からん男たちに備えて、2人の住んでるボロ屋の前の大通りにテントを貼る俺。


「ふんふんふんふん!!地面が硬ぇ!!なんでこの世界の地面は俺のテント設営にこんな逆らうんだ。後3本もペグ打つとかやべえな」


愛車のプラチナさんは美しすぎるせいか貧民街のガキ共に囲まれてはいるが見慣れないこともあり恐ろしいようで、触ろうとする猛者は出てこない。指紋つけたら怒るからな。


「ふう、ドワーフハンマーもうちょいでかいの買いに行こうかな。そうだ、今度ドワーフの街に行こう。欲しいギアが沢山あるんだよなぁ」


「兄ちゃんこれでいい?」


ムスカが薪を持ってきてくれた。路上で焚き火いえーい。日本でやったらアスファルト溶けるわ、ポリスメンから職質された上に説教されて色々と失うところだがグレイシティ外苑の貧民街はセーフ!

そして、本日の夕飯はこちら!魔海でとれた海鳥の丸焼きぃっ!!投網投げてたら鳥がたまたま潜ってたみたいで引っかかったんだよね。ついてない奴だ。だかしかし、これで肉が食えるぜ!!

バサバサと暴れる鳥の頭を容赦なく落として〆る。逆さに吊るして血抜きする間に焼き台を組み立てる。海でバーベキューしてた機材をそのまま展開する。ほんのり魚介臭い。ていうか磯臭い。海水で洗うのはやはりあまり良くなさそうだ、あとで真水で洗うとしよう。そういや中性洗剤ってこの世界売ってんのかな?


「塩、胡椒、ハーブ、適当に生えてた野生の香味野菜!!こいつらは内臓を抜いて空洞になった鳥の腹の中につめてっと、後はこれを回しながら焼くのみ。すでにうまそうだぜ」



ご機嫌なので口笛吹きまくってレパートリーが無くなってきた。風の精霊さんにいつものいかした音楽をお願いして待つこと1時間弱。近所のガキ共4人も交えて海鳥の丸焼き試食会が始まった。


「焚き火を囲んで肉食って歌って、後は寝るだけ。ゆとりって大事だよなあ本当に」


「兄ちゃんずっとここにいればいいよ!」


乳歯が抜けたばかりのマルコメみたいなチビが言う。


「ダメだよ、にいちゃは魔王やっつけにいくんだよ!」


隣に座ってたおかっぱの女の子がマルコメに反論する。


「マルコ、ブーカ、ダメよおにいさん困らせちゃ」


シータが2人のエキサイトしそうな雰囲気をやんわりと宥める。


コロコロしてる奴はデーブ。痩せっぽちの子はガリクソンと言うらしい。偶然の産物なんだろうけど親のネーミングセンスがやばい。最もこいつらは兄弟と言う訳ではなく弱いもの同士で助け合って生きているそうな。

俺は肉を適当に切り分けてガリクソンの口にねじ込む。


「おら、ガンガン食わないとでかくなれねーぞ!」


「俺も食う!」


デーブも負けじと肉を頬張る。いや、お前は少し肥満だから普通に食おう。



楽しい宴はキャンプファイヤーを囲んで踊ってたガキ共が疲れて眠くなったとの事でお開きになった。


「あの、ありがとうございました」


ムスカを寝かしたシータが改めて礼を言ってきた。


「礼は早いぜ、悪い奴らもオッサンがやっつけてやるから安心してお前さんも寝るといいさ」


最っ高にクールな紳士的なセリフを吐く俺は寝袋から鉄仮面がひょっこりしているという、くらい所で子供が見ればトラウマ物の珍妙な形態でテントからはみ出ている。言ってみて恥ずかしくなったのでローリングしてすっぽりテントにひきこもる。


「起きろー!兄ちゃんおきてくれよー!!」


「びえええん!!お姉ちゃんが攫われちゃったー!!」


むにゃむにゃ・・・・・・うっせぇなぁ。俺何してたんだっけ?


「にいちゃ、ねえちゃたすけて」


チビ助がなんかめっちゃ泣いとる。あ、そういやガキ共とキャンプファイヤーして寝たんだった。ん?もしや寝てる間にシータが攫われたのか!?


「おい、ムスカ!奴らどっちへ行った!?」


「あいつら、グルメールの手下なんだ!この通りを走って、貧民街を抜けたところにあいつのアジトがある!俺も行くよ!!」


俺はプラチナさんに跨りエンジン音を響かせる。


「お前はここで待っていろ、他のチビガキ共の面倒見てやってくれ」


それだけ言うと俺はアクセル全開でプラチナさんを走らせる。

しっかし、貧民街って結構狭いのな、多分3キロくらい、しかも信号は愚か車もないわ、馬車すら居ないし、道路のど真ん中がら空きなのでものの30秒かそこらで到着。なんか追い抜いてった奴らがいたけど気のせいかあれ誘拐犯共だったような?

俺の目の前には【中華料理・味都】という看板が見える。あじ・・・・・・と?と言うか、この世界に中華あんのかよ。


「コラー!お店の前でうるさいネ!ってなんでバイクがこの世界にアルヨ!?」


プラチナさんのエンジンが巻き起こす爆音を聞いて味都からチャイナドレスの妖艶な美女が現れる。なんだと、バイクを知っているだと!?


「ひょっとして地球の人か?」


「そうアルヨ。ワタシこのお店のオーナーしてるグルメールの妻のリンリン、アンタは?」


マジかー、後藤少年といい、俺の転移者遭遇率高くね??


「俺はアイアンヘルムと言う名前のバイク乗りの元日本人だ。単刀直入に言うが、シータと言う女の子を拐った奴らがここの手下だと聞いたんで話し合いに来たんだが、同じ世界出身の縁で穏便になんとかならない?」


「アイヤー!?アンタあのクソガキ共の知り合いか!?ダメよ?あいつらダメダメだヨ!!」


リンリンは切れ長の目がまん丸になるほどの驚きぶりでガキ共のダメ出しをする。美女な上に表情がコロコロ変わるとか、グルメールの野郎、羨ましいなコノヤロウ、処すぞ!?


「アンタダマサレテルヨ!アイツらは食い逃げの常習犯アルヨ!厨房に潜り込んで作りかけの料理も食べちゃうし、お店に来てもお金なんか置いてかない癖に1人3人前は食べてくネ!!」



おい、話の風向きがなんか変わってきたぞ?


「離せよ!どこ触ってんだよクソジジイ!!テメーらの店の飯に払う金なんかねーんだよ!!ぺっ!今に頭のヤベー鉄仮面野郎がお前の飼い主ぶっ殺しにいくかんなー!?て・・・・・・アイアンヘルムさん!!たすけて!!」


ちょうどタイミングよく悪態付きながらシータが連行されてきた。


「こいつ食い逃げ常習犯ネ!金がないなら体で払わせるネ!!働かざる者食うべからず!皿洗い、給仕、出前もやれば賄いも付けるし住み込みも可、お給料もちゃんと出すって言ってるのに毎回食い逃げするヨ!!アンタ達!グルメールオーナーを呼んでキナー!」


なるほど、辻褄あうね。そりゃ体で払わせるわ。て言うか、舐めとんのかクソガキがあ!!


「全部聞こえてるんじゃボケぇぇぇぇ!!反省チョップ!!」


俺のチョップがシータの頭に炸裂する。


「いだ!?何するんだよジジイ!?」


ジジイじゃねえし!!まだおっさんだし!!


「ええい、クソたわけが!てっきりクズ野郎がいかがわしいお店で働かせようとしてるのかと思っちまったじゃねえか!リンリン、話は分かった。ガキ共には俺が説明しておくから後は頼む」


「他の子供たちも家出した子とかだからなるべく働かせるか親御さんの元に帰して請求書送るネ」



俺はさっさと戻って全員連れて味都に戻った。



「裏切り者!!」


「鉄仮面野郎!!」


「びえええん!!」


「ちくしょう、いつか覚えてやがれ!!」



強制労働させる契約魔法のアルバイト版があるそうで、ガキ共は全員それがかけられている。

社会の厳しさを勉強して大人になれよ。

リンリンとその夫のグルメールとも会話したがいたって常識的な夫妻だった。責任もって一人前の料理人に育てるとの事なので俺はお土産に肉まんを貰うとまた会うことを誓って再び次の目的地を探すのだった。



後日、旅先でグレイシティの貧民街が大火災で焼失したとのことを聞いた。

そう言えば、グルメールさんのとこにガキ共連れてって焚き火の始末しないまま旅立ってしまったのだが・・・・・・まさか、俺か?また俺か?




今回のコメント


遠くの王様「食い逃げとか100叩きで」

衛兵「通報されました」

特級厨師「本日の味都では新鮮なフカヒレスープがお安くなってるヨー」

ベテラン剣士「ギルドのワニ討伐・・・・・・運ばれてきたサメ型魔人・・・・・・安いフカヒレ・・・・・・まさか、な?」


リンリン(29)

中華人民共和国出身の料理人。拳法も達人。勇者パーティーの武道家として呼び出されたが、アイアンヘルムの前の豆腐メンタル勇者のパーティーだったためあっさり解散した。実業家にして美味しいもの大好きなイケメン紳士のグルメールさんと結婚、貧民街のガキ共については故郷の村のガキ共と被るので面倒見てやりたい人。


グルメール(33)

実業家。商売の護衛に雇った勇者パーティー解散後にフリーになっていたリンリンと旅するうちに結婚した。

決めゼリフは「いくら欲しい?言ってみろ」

プロポーズの言葉は「一生貢ぐから結婚してください」

キレると札束でぶん殴る。覚醒すると札束の入ったアタッシュケースでぶん殴る。

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