魔剣を買ったので自慢してみる回・・・・・・のはずだった
※毎度の事ながらこのようなことをすると法律に触れるのでご注意ください。
石造りの壁に囲まれた薄暗い空間に後ろ向きの黒髪の細身の男が映る。
「ちーっす、いつもと違うアングルで登場!どうも、アイアンヘルムでーす。突然だけど、撮影機材の記録水晶について説明をさせて欲しい。いつもはヘルムの額ら辺の記録水晶をオンにして俺の視界に近い見え方でお送りしてるけど、実はこのヘルム遠隔操作も可能だからこうやって俺自身も撮影することが出来るのさ!顔出しはする気がないから後ろ向いててごめんよぉ!さて、今回はァ・・・・・・魔剣を買った!!いやほら、俺今まで何度かよく考えたらこれ命の危険だよなー?って魔獣に遭遇してるのに工具は持ってっても武器らしい武器持ってなかったんだよね」
闇市の店主が120ボルで売ってくれたから相当やばい物だと思われる。(※1ボルはだいたい日本円なら1円相当。なんならもう少し低めのである。本日のパンの相場は黒い硬いパンが130ボルのため
非常に安い。)
「で、街にせっかく来たし?武器見てみようと思ったら街の大きな武器屋さんの武器って職業レベル制限がきついのよ。強い武器はその職業のレベルが高い人でないと持てないように出来てるらしい。何持っても上手くいかないからさ、そこで俺のレベル聞いたら驚いたよね。レベル1だって!生まれたての赤ん坊でもなきゃレベル1の冒険者とかいないらしいからすげーショックなんだけど。で、闇市ならレベル制限が緩い掘り出し物があるかも?って聞いて行ってみたら店主の目つきが悪いのなんの」
歩行者天国状態の街中でバイク乗り回すと人轢きそうだし、プラチナさんは宿の馬小屋に置いてきた。
だから今日はフルプレートもコンパクトモードの部分鎧(ヘルムはそのまんまなんだけどな!!)にしてたから半袖ハーフパンツで原付乗ってる奴みたいに軽く見られたのかもしれない。
偉そうな態度で話を聞いてLv1の俺を笑い、自信満々に商品を見せてくれた目つきの悪い店主曰く
・そこのパンを盗んで食ってるガキは盗賊Lv6。強盗スキルもあるらしい。
・すげーバインバインのあっちのお姉さんは暗殺者Lv35で結構やばい。
・あそこで武器を見てる強面のオッサンは戦士Lv6で才能がないから迫力で誤魔化してるんだとか。
俺の職業はなんだかよく分からんけどLv1らしい。なんかこの店主にしてはごにょごにょ歯切れ悪く言って誤魔化された。
「で、問題なのは俺が持てる武器がマジでない。何持っても使いこなせないし、どうせならでっかい剣とかすげー切れる刀とかがかっこいいじゃん?ことごとくダメで、相変わらず目つきの悪い店主がダメ元で誰も装備出来ない魔剣を出してくれたらなんとこれだけ持てたというね!」
魔剣のくせに無銘らしい。能力も不明。逆にそういうのって凄いパターンだし大歓迎。むしろ俺しか使えないとかなんかプレミアム感ある。僅かに薄紫の怪しげな刀身、シンプルだが神秘的な雰囲気の材質不明な束、なんとも厨二病を刺激する逸品。
「で、これ嬉しくなって闇市で鞘から抜いて振り回してみたらさ、衛兵飛んできたよね・・・・・・」
あいつ抜きやがったぞ!?何考えてんだ!
おい、ここは抗争禁止区域だろ!頭おかしいのか!?
衛兵呼べ、こっちだ!!
「あれよあれよという間に囲まれちゃって、この動画はなんと、留置場の中からお送りしてまーす!没収されたヘルムが檻の向こうの机にこっち向いて置いてあるから遠隔起動でやってるせいでこんな形になっちまったのさ。これ見てる関係者の偉い人、ちょっと俺がそんな悪人じゃないと衛兵さんに説明お願いします!!身元引受け人とか俺こっちの世界にいねーからマジでたあすけてーーー!!」
同時刻
魔術学院魔導技術部部室にて
今日もなんか面白そうな動画流してるのね・・・・・・て、あら?この闇市って学院の近所じゃないかしら。
近くまで来たなら顔ぐらい出せばいいのに、お茶とお菓子くらいならいつでも出せるのよ・・・・・・って。
ハァッ!?なんで逮捕されてるのよ!?ちょっと待って何これ、ぷっ・・・・・・ありえないわ、笑えるー!!
「キャサリンどうしたの?」
部員のグレイが、突然笑い出した私に怪訝そうな顔を向ける。違うの、おかしいのは私じゃないから。おかしいのはアイツよ。
私は携帯石版をグレイに見せる。
「ブフォ!?捕まってるじゃないか!!と言うかこの人最近召喚された異世界の人だろ」
「ええ、そうよ。そして私達の研究している通信魔法を誰でも利用できるようにする技術のある世界から来た人。何より彼自体がとにかくめちゃくちゃで面白いのよ?」
「確かにめちゃくちゃだよね。リアルタイムで捕縛されて動画を配信した人ってまだ居ないでしょう。どうするの?」
「うーん―――――迎えに行くわ!」
「えー、テストテスト。ハロー、こんにちはー、やっぱりヘルム被ると落ち着くね!無事救助されたアイアンヘルムでーす!」
「ちょっと、久しぶりに顔見せたと思ったら直ぐにそれ被るの!?しかもリアルタイムで撮ってるし!?意味わからないわ!」
すっかり馴染んでしまったので俺はヘルムをズッポリ被っている。これ被ってるとなんか落ち着くまである。さて、目の前のテンション高い金髪ショートの幼女・・・・・・いや、中学生位はあるか?なんにせよ小柄な彼女は俺の身元引受け人として来てくれたキャサリンだ。
見た感じ地球の白人ぽい白い肌、やや幼さが残るがもう少しすればすごい美人になるだろう甘い顔立ちの美少女が不満そうに半目になって俺の行動にツッコミを入れる。こういう時容姿がいいと様になるから世の中は不公平だ。俺がやっても相手を怒らせるだけだし、多分動画でコラボしたらきっと、消えろアイアンヘルムとか彼女のファンに書かれるんだぜ。
彼女こそが魔法的な技術で俺の旅をサポートしてくれた魔術学院の魔導技術部部長でもある。プラチナさん魔改造の恩人なので俺としては非常に友好的な人物でもある。
「ところで次はどこに行くか決めてるの?」
おっと、仕事の話が出たよ?って、多分どっか行くだけで仕事なのって俺しかいないと思う。うーん、引きこもりが部屋から出ただけでク〇ラが立った!みたいな感動を起こすレベルでレベル低いな俺の仕事!?というか下手すると感動の錯覚すらない分負けてるまで有り得る。
「荒野やって、森林行って、街で買い物と逮捕されたから今度は海岸攻めてみるつもりさ!なんかリクエストあった?」
「決まりね、私も行くわ!南の魔海の調査がしたかったけど行く人が誰も居ないのよ。その鎧に追加機能の実験もしたいから貴方も手伝ってちょうだい?」
まさかの1人旅に女の子が同行、だと!?俺のバイク人生で初の経験に一瞬固まる。
「ん?どうしたの?私何かおかしなこと頼んだかしら?」
「次回の動画は潮風を感じながら海産物をひたすら食うつもりだったが、予定を変更!キャサリン水着回でお送りしマース!!」
俺の頭の中で何かのネジが外れた気がする。
「何言ってるか分からないけどとりあえず貴方は海底に沈めるから」
え、次回俺土左衛門確定!?
以下今回のコメント欄
遠くの王様「何してんのこいつ。衛兵にパクられる〇〇とか初めて見た
んじゃけど」
海の四天王「え、次いつ来るん?地元なんやけど(笑)」
東の賢者「こっちの海キレイだけど南の海なんか色悪くなかった?」
海の四天王「東の賢者、うちディスるとかやめてくれへん?気分悪いわー」
灰色の魔術師「いや、そんなのどうでもいいけど、あいつ殺すわ」
衛兵「通報しました」
次回も安定の空回り迷惑〇ouT〇berぽい!
実際に存在していたら、ナチュラルにいい事考えた!とか、サムネ詐欺とかタイトル釣りとかするんだろうなこいつ・・・・・・と思うとなかなか難しいアホキャラになってきました。
森林火災も街中で逮捕もやったし海で何しよう(おい)