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負けヒロインと真剣勝負


「よし、ある程度俺がやれるのは分かっただろ?一試合くらい付き合えよ水瀬」


俺はそう言ってピン球を空中に投げて遊ばせる。


「でも……」


水瀬はあの程度で自分を倒せるわけがないと思っているのだろう。確かに先程見せたサーブは、初心者でも練習すれば体育の時間で覚えることは可能っちゃ可能だ。

それだけ見せられてもただ少し卓球ができる粋っている奴である可能性は捨てられない。だが、生憎俺が経験者であることを伝える方法はない何故なら俺は今世サッカークラブに入っていて、卓球部に入っていないし中学校や小学校の間していた訳でもないのだ。だからそれを証明しろと言われても不可能。だが、前世の俺の感覚的には良い勝負ができると囁いている。だから、無理矢理にでも試合をすることができれば後はどうにかなるはずだ。ここで引くわけにはいかない。


「それに、することがこれしか無いんだ。今更渋ってもしょうがない。やるぞ」


俺は空中で遊ばせていたピン球を掴み、サーバの構えをとる。

水瀬も俺が引く気がないと分かったのか、渋々とだが構えをとった。

実を言うと俺はかなり、ワクワクしていた。なんせこの世界はマンガの世界。前世では考えられなかった動きをこの世界に登場する人物達は可能にしているわけだ。そして、それは俺自身にも言えたことだ。

つまり前世自分が想像して、試しても物理的に無理だった技が使える可能性があるのだ。

そんなのワクワクしないはずがない。俺は、水瀬と対決するよりも早く技を試したいと言う欲求の方が正直勝っていた。


「いくぞ!」


俺はそう言って、サーブを打つ。そして、俺が打ったサーブはバウンドした瞬間スピンによって方向を真横に急転換ツーバウンド目は隣の台の上を跳ねていた。


「へっ?」


水瀬はまさかサーブでこんなにピン球が曲がると思っていなかったらしく、驚愕の表情を浮かべ固まっていた。


「だから、言ったろ?俺はかーなり強いって。さぁ本気でやり合おうぜ」


「っツ!?………うん!」


水瀬は俺の言葉に嬉しそうな笑みを零しながら頷き、ピン球を取りに行った。


そして、彼女がピン球を取って戻ってきた時には完全な集中モードになっていた。水瀬はふぅーと息を吐いて呼吸を整えると、サーバの構えをとる。


「いくよ!」


水瀬は気合の入った声で、サーブを打つ掛け声を出す。


「いや、まだ俺のマイボ」


「あっ…………////」


水瀬は俺の指摘を聞いた瞬間我に戻り、中に投げたボールを投げた方の手で掴み、顔を真っ赤に染めて俺に八つ当たりするかのような投げ方をして渡して来た。

おいおい、可愛いかよ。何か試合するために高めていた集中が少しだけ落ちたような気がするが、気にしない俺は前世出来なかった技を試せる高揚感と水瀬というこの世界で敵なしと思われる水瀬と本気でやれるのだ自ずとテンションも上がるだろう。

俺はそう思い、再びサーブの構えをとるのだった。









トットッ、トットッとラリーが続く音が数十分この体育館で響いている。周りにいた一般の客達は自分たちが遊ぶことを忘れ俺たちの試合に魅入っていた。


パチンっ、俺が打った緩めのボールを水瀬は見逃さずスマッシュを打つだが、水瀬の思っていた方向には向かわなかった。


「なっ!」


そう俺のかけた高速スピンによって軌道が変化し、俺のスマッシュのミートポイントど真ん中に飛んでくる。俺はそれの当然外すわけもなく水瀬の反対方向に思いっきりスマッシュする。


ガッ、さらにそこへ角にボールが当たり軌道が変化のおまけ付き、誰もがこの打ち合いは終わりだと思っただろうが相手は世界最強候補そんなのものともしない。

水瀬は一度のバックステップで、ボールを打てる位置にまで移動しそのスマッシュをもの凄いドライブをかけて返してくるその証拠に、ピン球はバウンドせず俺の台の上を走っている。俺はそのピン球が台から落ちたタイミングで今度は横回転をかけ、ネットの外から曲げながらいれる、だが、先程のドライブで余裕が生まれた彼女は当然ピン球に追いつき今度はカットをした。

そして、そのボールはバウンドするかのように思われたがまるでそこにだけ重力が何倍もあるのではないかとというほどの勢いで俺のネットを超えた瞬間落下し、その後バウンドをすることもなくその場で静止した。


「クソッーーー、後もう少しだったんだけどなーーー」


俺は自身が点を取られ試合が終わった瞬間、ドサッとその場に座り込み声を漏らした。


「ふふっ、何とか勝てたよ。でも、2セットも取られた時は本当に焦ったな。湊川君があんなに強いなんて知らなかった」


「いや、全部初見殺しでとったポイントだ。二度目は通じなかったからまだまだ、だな」


「ううん、湊川君は凄いよわたしから1セットもとった人なんていなかったのに、2セットも取っちゃうし、最後のセットも何回もデュースだったから本当に接戦だった。こんなに楽しい試合は生まれて初めて」


水瀬はそう言って大粒の汗を流しながらも、俺のそばに近づき笑顔で手を差し出す。


「それは良かった。ほら俺の言った通り、卓球もやってみたら案外楽しかっただろ?」


俺も水瀬につられ笑みを漏らし握手をする。


「うん、そうだね!でも、こんなこと出来るのは湊川君しか私知らないからまた誘ってもいい?」


「あぁ、俺にもプライドがあるからな。ぜひ、リベンジさせてくれ」


こうして、俺は水瀬にこそ負けたが彼女のトラウマを、一つ消せたことに成功した。彼女のトラウマを消せたのは素直に嬉しいのだがまぁ、そんなことよりも水瀬に負けた悔しさの方が大きい。憑物が落ちた彼女に勝てるかは分からないが、次は絶対に勝つんだと俺は闘志を燃やすのだった。










卓球は楽しいよ

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