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冒険者ギルドの入口とルリオロン子爵

 「グラウトさん」


 クレアに声をかけたのはグラウトだった。

 グラウトはそのままツレに「席とっといて」と行ってクレアを連れて一階に降りた。

 受付前に無造作に置かれた適当な机にもたれる姿は冒険者らしく様になる。


 「クレアちゃんなんでここに?」

 「冒険者登録にきたんですよ」

 「へえ!冒険者すんのか」

 「なれるように頑張ります」

 「サルケン討伐できるなら大丈夫だろ」


 ガシガシとクレアの頭を撫でて大笑いをしている。


 「ルーファウさんと一緒じゃないんですね」


 グラウトとルーファウは昨日まで外でしばらく依頼をこなしていたため、本日は休日として別行動を取っている。

 宿にいると仕事を手伝わされそうになり、逃げるために街をフラフラしていたところ、ギルドへ依頼完了報告に向かっている友人と出くわし、そのまま一緒にきたようだ。


 「ギルドにこれんなら、明後日はギルドで待ち合わせするか?昼食ならこの上でも取れるしな」

 「え、嬉しい!そうします!さっき覗いたらいい香りするし気になってたんですよね!」


 そうかそうかと笑いながらじゃあルーファウにも伝えとくと言って空間に文字を書き飛ばした。

 空間に魔力で文字を書き、誰に飛ばすかを明確に頭に浮かべ書いた文字をまるで囲んで魔力の玉を作る。その玉を投げると相手に届くという魔法なのだが、書いた文字の分だけ魔力消費をする。よって、誰でも使えるが魔力が少ないものは単語しか書けなかったりする。

 よく利用される場面は買ってきて欲しいものをいうときに使われているらしいが、残念ながらクレアが使ったことはない。

 この魔法の欠点は受け取った者の目の前で文字が浮かぶ。つまり、誰でも閲覧できてしまうという欠点がある。

 そのため、軍や貴族はほとんど使わない。


 二階が騒がしくなってきた。

 どうやら昼に入ったらしい。

 クレアもそろそろエストレミオンが帰宅することを思い出し、グラウトに挨拶をしてギルドを出ようとすると、グラウトがついてきた。


 「グラウトさん、大丈夫ですよ?」

 「……いや送ってく。あぶねえ。ぜってえあぶねえ」


 なにが、とは言わない。クレアはわかっていないが、これだけきょろきょろしていれば冒険者登録したばかりの新人だと丸分かりである。

 しかもクレアの容姿はさすがエストレミオンの知り合い。おそらく貴族だということをグラウトはお見通しだった。で、なくてもそれなりのお嬢さんだとは傍目でもわかる。

 このまま放置すればカモとされるか、整った容姿からゲスいハエどもがよってくるだろうと想像はかたくない。


 「はいはい行くぞ、クレアちゃんが歩いてくれねぇと俺の飯の時間がなくなる」


 そう促し、食い下がるクレアを外へ追い立てると、しぶしぶクレアはそれに従った。


 「で、どこだ?店か?」

 「子爵邸」

 「までは無理だが、近くまで送り届けてやらァ」


 歩き出したグラウトについて行くようにクレアも歩き出した。

 クレアがついてくることを確認したグラウトは、途中からクレアに合わせる。


 「ねえグラウトさん。聞いてもいい?」

 「ん?」

 「ギルドの入口ってなんであんな風になってるの?どうなってるの?」


 ギルドの入口。

 クレアが入るときに自動で開いたと思ったドアは初めから開いていた。

 厳密に言えばクレアが入ろうとすると薄い膜みたいなものが開いたといった感じである。


 「あれなぁ、この街の冒険者ギルドしか多分ないシロモンだ」


 グラウトの説明によると、昔は木製の扉だった。

 しかし冒険者は血の気盛んな者が多く、朝や夜など冒険者が多く出入りする時間帯は入口が壊れるなど日常茶飯事だった。

 そのため開けっ放しにすることにしたのだが、やはり夜間のセキュリティーが心配だと壊れるたびに付け直していたらしい。

 冒険者ギルドは国の補助が出るため商会が職人に発注を掛けて取り付けるのだが、どんなに取り付けてもすぐに注文にくる。いくら商業都市といえどモノには限りがあるし、毎日どこかの職人が時間を取られる。気に入らないという理由で壊すアホもいるくらいだ。それが月に何回も回ってくるのだから職人としては怒りたくもなるだろう。

 ついに職人たちがブチギレストライキ。流通が止まった商人たちがブチギレ、商業ギルドに直談判。翌日、商業ギルドによって作られたのが今の扉。

 魔道具らしいが詳しいことはグラウトも知らない。ただ、今の扉に変わってから開いているのに中は見えないというものになった。


 「気になるならクレアちゃんが子爵様に聞きゃあいい。作ったのはルリオロン商会だって話だしな」


 おっかなびっくり。どうやら商業ギルドもルリオロン商会が関わっているらしい。


 「じゃあギルドの三階は何?」

 「あそこはギルドが貸出してる宿。あそこはあんまり行くなよ。男しかいねえからあぶねェ」


 すでに行ってしまったことをグラウトに言うと、呆れた表情で「好奇心旺盛なのはいいがマジで気を付けねえと痛い目みるぞ……」と言われてしまうクレアであった。

 一方でグラウトは昨日みたエストレミオンの行動や表情から見るにクレアを溺愛していることは傍目からでも気がついていた。

 エストレミオンはクレアのこの行動力に気がついているのであろうか。

 もしクレアが危ない目に合ってしまえば、おそらく自分たちも巻き込まれるような気がする。がとき既に遅し。

 クレアは破寒のことをエストレミオンに昨夜の夕食のときにモルバルトと共に話しているのだ。そう、モルバルトと共に。


 「ほい、あそこが子爵邸。誰か立ってんな?」


 グラウトの言葉にクレアも子爵邸に目を向けるとマリーが立っていた。どうやらクレアが帰ってきたのを出迎えてくれたようだ。


 「じゃ、もう大丈夫だな。俺行くわ」


 クレアに背を向けてもと来た道を戻ろうとグラウトが歩き出したため、その背中に向かって「ありがとう」と見送り、クレアはマリーのもとへ走った。


 「おかえりなさいませ、クレア様」

 「ただいま!迎えてくれてありがとう、マリー」


 マリーがクレアを連れて部屋に戻るとすぐに着替えさせられる。


 「クレア様、思っていたより遅かったですね」

 「グラウトに会ったから話してた」

 「あちらが昨日おっしゃっていた破寒のグラウト様ですか」


 クレアは「あれ?言ってたかな?」と疑問を持つが多分どこかで話を聞いていたのだろうとその話題には触れずに黙々とエストレミオンとの外出のための準備を進めていた。


 「クレア様、きのうおっしゃっていたごかぞくへのごれんらくをどうされますか?」


 ゆっくりはっきりクレアに話しかけたのはシュウワンだった。

 シュウワンの言葉ですっかり忘れていたが、連絡をするために少し早く帰ってくるつもりだったのだ。


 (マリーが外で待っていたのは私の帰りが遅かったからだ…あちゃー)


 このタイミングでシュウワンに言わせたのはマリーの指示であることはクレアは知らない。


 「マ、マリー。今からでも間に合うかしら…?」


 にっこり笑顔を作ったマリーは

 「ええ大丈夫ですわ。クレア様がおっしゃっていたので準備しておりました。いつでもご連絡できますよ。……幸い、旦那様は少し遅れるとご連絡がございましたので」


 マリーはあえて『ご連絡』を強調した。

 お客様といえどクレアは家族として扱う。これはエストレミオンがクレアの専属をマリーたちに下すときに言った言葉である。

 仕える主人ではあるが、諌めるのもまた彼女たちの仕事だ。


 「クレア様、ご連絡なさるのであればご昼食は旦那様とお取りください。ご昼食をお取りになってからご連絡なさると間に合わないと思います」

 「わかったわ」

 「シュウワン、クレア様をご案内しなさい」


 シュウワンに連れられてクレアは通信の間に向かい、その間にマリーは家令のサーメットに連絡を入れていた。


週末は更新をおやすみします。

さてクレアちゃんが昨夜ほくそんでいたましたが、

うまくいってるのでしょうか?

誰がクレアちゃんと連絡を取るのでしょうね。


ヒント:クレアちゃんきょうだいいっぱいいます。


よい週末を

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