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数多の世界の可能性  作者: 鈴木 啓
14/20

14話

「それで?これからどうするんだ?」

カーネは止まったままの世界の中で首を捻る。

リアレイはニヤリと笑うと一言

「修行」

と言った。

呆れた返ったカーネの視線が突き刺さり、リアレイは居心地悪そうに身じろぎをする。

「まぁ、それは冗談として、今のカーネさんでは『陰剣』さんには勝てないんですよ、どう頑張ってもね」

リアレイに痛いところを突かれ、歯痒そうにカーネは俯く。

「………まぁ、それは分かってる」

「だからこそ、絶対に感知できないこの空間でカーネさんに必要な最後のピースをはめるって訳ですよ」

リアレイは何処か楽しげに人差し指を立てる。

すると、人差し指の先に青白い光の玉が浮かび上がる。

「最後のピースって?」

リアレイは浮かべた光の玉をカーネに飛ばす。

光の玉はヒュンッと音を立てて飛んで行きカーネの腕に弾かれ消えた。

「魔術ですよ、魔術」

そう言いながらリアレイは光の玉を五つ程浮かべる。

「カーネさんは魔術を使ったことあります?」

「いや、体術とか剣術とかはしてたけど、そっちは講義も受けたことは無い」

「はぁー、そうですか。」

リアレイは無造作に光の玉をカーネへ飛ばすがやはり腕に弾かれ消えてしまう。

「……あの、さっきから何を?」

「え?」

むきにでもなっているのか、今度は十個以上の玉を作り出したリアレイにカーネは呆れ気味に問う。

カーネの呆れた視線に正気を取り戻したのかリアレイはパタパタと手を振って何でもないと告げる。

「いや、適正検査の魔術をかけようとしてるんですけど、なんか弾かれちゃうから……

カーネさんちょっとだけ無防備になってもらえます?」

どうやら、知らず知らずの内に魔術を拒んでいたらしい事に驚いたカーネは慌てて心を落ち着かせる。

リアレイは無数にあった光の玉を一つにし、カーネの胸の辺りに当てた。

すると、今度は弾かれる事なくカーネの身体へ吸い込まれていった。

「これで魔術の適性が分かるのか?」

「はい、もう暫くすると多分頭の方から光が……ほら、はじまった」

リアレイが指を向けると、俄かにカーネの額が光り始める。

やがて、光は一ヶ所に集まり小指の先ほどのガラス玉に姿を変えた。

「で?どうだったんだ?」

カーネは少しはしゃぎ気味にリアレイに聞く。

聞かれたリアレイは少し驚いた様な顔をしている。

「これはまた変わった適正ですね…見てください、ガラス玉になるほどの強い魔力があるのに強化系の能力しか適性が無いですよ、これ。

しかも、他人に施す適性まで皆無ときた。本当に自分だけ強くなる為だけの適正ですねこれは」

リアレイはいやー凄い、と言って笑っている。

「お前の話は解かり辛い……結局何が言いたいんだ?」

そんなリアレイの態度に苛ついたのか、少しキレ気味にカーネは詰め寄る。

しかし、詰め寄られた本人は全く意に介さず口の端を引き上げた笑いのままカーネを見ている。

「なぁに、救出の兆しが見えてきたって事ですよ」

リアレイはそう言うとある話をカーネに語った。

それは、カーネの身体の謎の答えのような話だった。

まず、カーネの弾丸すら弾く強靭な身体についてだ。

カーネは何が原因かは分からないが生まれた時から強化系の魔術を行使し続けていた。

強靭、剛力、俊敏、と言った身体強化系だ。

そして、それを無意識に行っているからこそ常に強靭な身体と未来予知に近い反応速度となるまで昇華していけたのだろう。

リアレイはそこに目を付けた。

本来出来るはずのない強化魔術の重ねがけだ。

本来は魔術を構築し実行すれば身体能力が上がる。そこから更に魔術の行使するのは不可能だ。

それこそ、空を飛びながら地面を走るようなもの、出来るはずがない。

だか、カーネならそれを可能に出来る。

「と。まぁ、そういう訳なんですよ」

一通り話し終えたリアレイは軽い調子で締めくくった。

「………そうか、つまりその魔術が使えるようになれば今よりもっと強くなれると、そう言いたいんだな?」

「ま、ぶっちゃけてそうなります」

リアレイは何でもないかのように言い放つ。

だが、カーネはと言うと年相応の笑顔を見せ喜んでいた。

その内容が今までよりももっと敵を殺せる、と言うことを知らなければ微笑ましく目に映るだろう。

そんなカーネの様子を微妙な顔で見ていたリアレイは短く息を吐くと、


「さて、特訓を始めますかね」


そう言っていつもの様に本を開いた。



ティファニーは眠れぬ日々を過ごしていた。

それはカーネが心配だからと言う理由もあるが、一番の理由は突発的に起こる絞首だ。

グレイシアが戯れでやっているのか突然首輪が締まりティファニーの首を締め上げるのだ。

「もう、いっそ殺してくれれば良いのに…」

ふと、零れた弱音にシトリーは悲しげに息を吐く。

突然、苦しみ喘ぐティファニーを心配なのか、最近シトリーはずっとティファニーの側に付き添っている。

しかし、ティファニーが締め上げられている間、声をかけ、手を握る事しか出来ない事に酷く傷付いていた。

ティファニーの頭の中に怒りは無い。

今あるのは唯々カーネの事ばかりだ。

酷い目にあってないだろうか、苦しくて泣いていないだろうか、そんな思考が堂々巡りし、不安をさらに煽った。

「カーネ……ごめんなさい…無事でいて……」

はらはらと雫が零れる。ティファニーの押し潰された心が悲鳴を上げ切なく軋む。


まだ誰も知らない悲劇の幕が上がる。

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