その6.男は中身で勝負‼
オカンはここ二、三日PCに向かわず取り溜めしていたTVドラマを観ている。
けっこう熱しやすく冷めやすいタイプなので、もしかして「なろう作家」生活に
ピリオドを打った??
「もう小説家やめたん?」
また俺のお節介な一言が・・・
「ううん、土日にまとめて投稿したから、ちょっと小休止中なの。
あーあー…これが本物の作家なら、鄙びた田舎の温泉宿に籠ったり、海辺の
リゾートホテルのプールサイドで次の執筆まで鋭気を養うんだろうなぁ……」
と、のたまい大きな溜息をついた。
まあ、確かに大女流作家先生ならジャージでカウチに寝ころびポテチしながら
連ドラ鑑賞はないよな。
てか、オカンまた標準語モードに切り替わっとる!
「Kちゃん、この人の方言どう思う?」
ドラマを見ながら、福井県出身の料理人役を演じている男優を指さした。
そう、オカンの次の小説に出てくる若手イケメン俳優のSTさんである。
なんでも、(オカンのお花畑脳内で)彼に大阪弁を喋らすとか・・・
「時々いるやろ、ほんまに方言指導入ってるんかと思うようなヘタクソな
関西弁のセリフしゃべる俳優とか女優さん。あれって、関西人はめっちゃ、
ムカつくんよね」
はい、確かにいます。アクセントやイントネーションが大げさ過ぎたり微妙
過ぎる役者さん。
「てか、STって背、低いやん…」
オカンの脳内イケメン設定では、高身長・大阪弁NGがデフォのはず?
「これまでイケメン4連発やったやろ、あんまり高級フレンチとか懐石料理が
続くと、なんかB級グルメっぽいもんが無性に食べたくなるんよ、女って…」
オカンはニンマリと “大阪のオバちゃん風味” の微笑を浮かべた。
「勘違いせんといてよ、そのイケメン設定はあくまで小説やドラマの中だけや
からね。現実社会では男は外見やない、やっぱり中味やわ。
なんぼ美形で高身長でも口開いたら、“うわっ” とドン引きするようなん、
たまーに、いるやろ…」
ああ、クイズ番組やトーク番組、インタビューとかでアホさらけ出してしまう
イケメン俳優とかアスリートみたいにね。
「…けど、顔はともかく男はやっぱり身長は必要やね。背低いと、どんな高級な
ブランドもんのスーツ着ても “青木” の吊るしにしか見えへんもんなあ…
背があると顔が少々残念でも体形がカバーしてくれるもんなあ…
Kちゃん、アンタ、ホンマよかったな!」
身長だけは無駄にある息子に向かってオカンは親指を高々と掲げて見せた・・・