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「幼女だったのか」

「ふぅ......」


 どさり、とふかふかの土に腰を下ろした。

 気持ちのいい草の感触が、まるでクッションのように俺をやわらかく包み込んでくれる。走り疲れた俺をねぎらってくれているかのようだ。


 そのまま地面に寝転び、目を閉じた。ひんやりとした風が頬をなでる。

 こうしていると、自分がついさっきまで死の間際にいたことが嘘のように思えてくる。だが、それは紛れもなく事実。

 このままだらだらしているだけではすぐに殺されるだろう。まずは、『逃げる力』と『生きる力』を手に入れなければ。


 普通に1人でハンターと戦っても、絶対に負ける。そりゃあそうだろう、最弱のモンスター娘にプレイヤーが勝てないとなるとゲームとして成り立たなくなる。

 つまり、1人ではあいつに絶対勝てない。あいつは俺の命を奪うことにまったく抵抗を感じていなかった。つまり、負ければ死ぬ。


 では、逃げていれば大丈夫かというとそうでもない。そのうちレベルアップして俺よりも素早さが高くなったあいつに殺される。

 幸い、ゲームの中でモンスター娘を殺そうとするのはプレイヤー1人。あいつから逃げ切れさえすれば、俺はこの世界でのびのびと暮らせるだろう。


 いや、本当にそうなのか?

 不吉な考えが頭をよぎった瞬間、思考を遮るように近くから音がした。


 かさかさかさ......



 もしかして、ハンターか....?

 俺は、ハンターじゃありませんように.....と祈りながらそっと目を開いた。

 するとそこには超至近距離から俺を見つめる2つの目が――


「うわあ!」

「きゃあ!」


 飛び起きた俺の額と相手の額が衝突、目の前に火花が散った。


「いったぁ」


 むくりと起き上がってきたのは、特徴的な青みがかった髪の毛をショートカットにした女の子だった。身長は今の俺と同じくらいで、けしからん実が2つたわわに実っていた。


「あ、目が覚めた?こんなところで寝てたら危ないよ?」


 どうやら俺が寝ていると勘違いしていたらしく、俺のそばで目が覚めるまで待っていたようだ。


「ほら、寝るなら集落で寝ないと人間に殺されちゃうよ?」


 かわいらしく首をかしげる女の子。

 台詞からしても見た目からしても、おそらく俺と同じスライム娘なのだろう。大方、ここで倒れている俺を見つけて心配になり、あわてて近寄ってきた、というところだろうか。


 立ち上がってぱんぱんとお尻を払うスライム娘。

 スライム娘はゲーム時から変わらず、水色の布切れとでも言うような服ともいえないような格好をしているため、この角度は正直まずい。

 俺もすぐに立ち上がった。


「ほら、集落にいこ?」


 そういって歩き出したスライム娘に、俺も付いていった。

 まさか、こんな風に寝床を確保することができるとは。この子を騙しているようで少し悪い気もするが、命には代えられないのでぐっと抑える。

 スライム娘になってしまったのは結構ショックだったが、こんなに優しい子がいるなら、そこまで悪いものでもないかもしれない。


 そんなことを考えながら、俺は後に続いた。





 しばらく前を歩くスラ娘についていくと、急に立ち止まって振り返ってきた。

 急に立ち止まるもんだからぶつかりそうになったが、ぎりぎりのところで踏みとどまった。


「あ、自己紹介してなかったね。私の名前はベル!よろしくね!あなたの名前は?」


 何かと思えば、自己紹介か。確かに名前を聞いてなかったな。

 ベルって名前なのか。ゲーム時代はモンスター娘に名前なんてなかったから失念していたが、確かに名前ぐらいはあってもおかしくないだろう。


「俺の名前は、京斗。知り合いからはけいって呼ばれてる」


 一瞬、友達からは、と言うか迷ったが、友達と言うほどの関係でもないため知り合いと言っておいた。


「うん、よろしくねけい!」


 それからまた、特に何もなく歩いていると、またベルが立ち止まった。

 今度は何だと覗き込んでみると、そこには小さな湖があった。いや、湖と呼ぶのもおこがましいほど小さな、泉と呼ぶのが相応しいような水場だった。


「ここから集落に入るんだよ!」


 元気欲説明してくれるが、何のことだか分からない。

 見たところ泉の深さは腰くらいまでしかないし、中に横穴があると言うわけでもないだろう。いったいここからどうやって集落に入るんだ?

 集落と言うからには相応の大きさはあるはずだし。


 ――などの疑問は、ベルが実演したことによって解消した。


 ベルがおもむろに泉の中に入った。

 そしてしゃがんで、水の中に潜る。はじめのうちは泡がぶくぶくと出ていたのだが、しばらくするとその泡も出てこなくなった。


 それからさらに1分ほど。

 さすがに不安になって泉の中をのぞいた。しかしそこにはベルはおらず、ただ魚が数匹泳いでいるのが見えるだけ。


「え?え?」


 なにがなんだかわけが分からなかったが、とにかくベルと同じことをすればいいのだろうか。何の説明もないのは困るのだが。


 とにかく、ここでおたおたしていても何の解決にもならないので泉の中に入ることにした。

 泉は思っていたよりも深く、胸あたりまではふかさがあるようだ。少し不安だったが、息を大きく吸って水に潜る。


・・・

・・・・

・・・・・


「ぷはっ」


 息が続かなくなるまで潜り続けても、結局は何も起こらなかった。ならベルはいったいどうやって泉から消えたんだろうか。


 そう考えながら自ら顔を出すと、そこには今までとはまったく違った景色が広がっていた。


 さっきまでは平原の端の、少し茂みの陰になったところにある泉だったのに、ここはまるで――いや、まさに洞窟の中だった。

 洞窟と言ってもゲームのダンジョンとかそんな感じのじめじめとした洞窟ではない。どちらかと言うと、神秘の絶景としてテレビで紹介されているような、鍾乳洞といった雰囲気だった。


「遅かったね。なにしてたの?」


 すこしぼーっとしていたようだ。

 気が付けば目の前にベルがいた。俺が来るのが遅かったのが心配だったようだ。


「いや、説明をしてくれないと分からないんだが.....」


 という俺の苦言は、こてん、と首をかしげてスルーされた。


「はぁ」


 溜息をついていると、ベルはそんな俺の気持ちを知ってか知らずか、スキップしながら鍾乳洞の奥へと進みだした。

 付いていかなければどうにもなるまい、と再び付いていく。


 今回はそこまで歩くこともなく、すぐに目的地についた。

 そこには洞窟の中なのにもかかわらず、多くの建物が立ち並んでいた。


「けいは他の集落からここに引っ越してきたんでしょ?じゃあまずは長老に会いに行かないとね」

「長老?」

「そ、長老。引越しのときは言わないといけないの」

「へぇ」


 長老か。どんなスライム娘なんだろうか。

 というか、長老なのに娘なのだろうか、それとも普通におばあさんなのか?


「ここが私の家だよ。きっと泊まるとこないよね?ここで泊まっていってもいいよ」


 そもそもゲームには集落システムなんてなかった。と言うことはシステム外扱いになっておばあさんなのか?


「ここが道具屋。いろいろ買えるよ~」


 もしかしたら意表をついておじいさんなんてこともあるのか?

 やばい、マジでどうなのか分からない。すごい気になる。


「ほら、ついたよ~。ここが長老の家。おじゃましま~す」


 う~ん、よし、長老はおばあさんに100円賭ける!


「この子がけいちゃんだよ。今日からここに引っ越すんだって、長老!ほら、けいちゃんも挨拶して!」


 さて、長老の家までは後どれくらい――


「ほら、挨拶して!」


 気が付いたら目の前に頬を膨らませたベルの顔があった。

 考え事をしているうちに、長老の家についてしまったらしい。


「ああ、ごめん」


 挨拶しようと、長老を探す。

 だが部屋の中には俺、ベル、そして椅子に座る幼女しかいなかった。


「あれ?長老は?」

「そこにいるよ~!早く挨拶!」

「どこだよ」

「そこにいる!」


 ........長老は幼女でした。

眠いから雑ですすいません。

ここって一番雑になったらいけないとこなんじゃあ.....。


1/21 主人公のあだ名、『ケー』を『ケイ』に修正。


2/12 主人公の名前を変更。あだ名を平仮名表記に。

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