プロローグ
広告、ってあるだろう?
ネットとかを見てるとブログの右側とかに出てくる、あれだよ。
その広告に、最近よく見かける言葉があるんだ。
その広告を見た人は、男であれば結構惹かれただろう。
女でも目には留めたかも。
その言葉ってのが――
『モンスター娘を×しまくれ!』
ってものなんだけど。
明らかに18禁ゲームの広告だよね。
まさにそう、この広告は18禁ゲームの広告なんだ。
そして、その広告をクリックするとゲームの登録ページに飛ぶ。
たくさんの男たちが、胸をわくわくさせながら登録したね。
かくいう俺も、その1人。
で、登録完了して、クライアントをダウンロードして。
ゲームを開始した人はみんなこういうんだ。
「そっちかよ!」
と。
俺は最近、とある1つのゲームに嵌った。
特に革新的な要素を取り入れているわけでも、最新の綺麗なグラフィックを使ってるゲームってわけでもないんだが、そのゲームはよく作りこまれていて、自由度も高かった。
ゲーム自体の最終目的はあるものの、それを無視して普通に暮らすもよし、農家になるもよし、建築業になることだってできた。というより、ゲームの最終目的が少しアレなため、最終目的目指してゲームを進める人のほうが少なかったぐらいだ。
そのゲームは18禁ゲームなのにもかかわらず、まったく官能的なシーンが含まれていなかった。それもそのはず、今ゲームはそういう理由で18禁になったわけではないからだ。
まあ、18禁ということとゲームの謳い文句である『モンスター娘を×しまくれ!』という言葉に騙されてこのゲームを始めた人が大量にいるのはご愛嬌というか。
で、18禁になってしまった理由というのは、ゲームの最終目的にある。
このゲームの最終目的は謳い文句そのままだった。
『モンスター娘を×しまくれ!』
――というのがゲームの最終目的なのだが、この×の存在が多くの人が広告をクリックしてしまった原因だろう。
なにせこの×が取れたら、実際には――
『モンスター娘を殺しまくれ!』
になるのだから。
ゲームを始めて最初に出てくる言葉がこれ。
真っ暗な画面に赤の文字でモンスター娘を殺しまくれ!と出てくるのだ。
エロゲーと勘違いして始めたやつからしたらたまったもんじゃない。
まあ、ゲーム自体は作りこまれているしエロゲーっぽい謳い文句に不満を漏らすやつはいなかったが、このゲームのことは一気に話題になった。そりゃあ、エロゲーの皮を被った18禁になるほどのリョナゲーだ。どれだけグロいのか、試してみたくもなるだろう。
そして試してみたやつの大半が――気分が悪くなってやめた。
あたりまえだ。ゲームの中でモンスターと呼ばれ、住民に恐れられているのは少しケモミミが生えたりしているだけの、美少女なのだから。
主人公は住民の依頼を受けてモンスター娘を倒し、報酬を受け取る。のだが、依頼を受けたモンスター娘を倒すときだけ、ボイスつきアニメ付きモザイクなしのグロシーンが流れるのだ。
掛け値なしに、世界最高レベルのリョナゲーといえるだろう。
ほとんどの人はこのゲームの世界に胸糞が悪くなってやめていったのだが、それでもゲームをやめなかった、むしろ「これが俺の捜し求めていたリョナゲーだ!」といわんばかりにやり込む猛者たちがいた。
――俺含む、リョナラーたちだ。
世界屈指のリョナラーたちが、このゲームを始めて歓喜に震えた。
「まさか、こんなリョナゲーがこの世にあったなんて!」
「規制される前にイベントCGをかき集めろ!」
「やっほーい!」
などといいながら、ゲームをすすめ、イベントCGをかき集めた。ちなみにソースは俺。
実は確立で
○○が仲間になりたそうな目でこちらを見ている!
どうする?
仲間にする
殺す ←
なんて選択肢が出てきたりもするのだが、俺は全て下を選んだ。
そんなことをすれば最後まで仲間なしでクリアしなければならないのだが、そこだけは譲らなかった。
リョナラーの名に懸けて。
そして俺は、ついに最後のイベントCGを見る段階まできた。
最後のイベントCGは魔王のモンスター娘。さぁて、どうしてくれようか――
その瞬間だった。
俺の意識が飛んだのは。