現実だと認識してる少女
初めてこの系統の小説を書いたので、矛盾点があるかもしれません。
ありましたら遠慮なく教えてください。
また、初投稿です。
目の前で行われてる茶番を冷めた目で見る。
「違う…私じゃない…!」
そう言って否定する人。
その人の言うことは本当のことだ。
腰までの蒼い髪、透き通ったアクアブルーの瞳。
珠のような肌は本当に美しく、唇は桜色。
綺麗な顔立ちにモデルのような体躯。
身長は目測で約170。
この人の名前は水無月玲。
水属性の魔法に特化した魔法使いの一族で貴族だ。
貴族としての位は公爵。
「水無月さん、まだシラを切るの!?今までずっと私に嫌がらせしてきたのに…」
偽りを吐く少女。
この世界ではヒロインな少女。
金色にも見える茶髪はウェーブがあって腰と背中の真ん中まであり、瞳は銀色。
白い肌に薄い色の唇。
可愛い系の顔立ちに対し、その体はやけに肉感的だ。
ちなみに肉感的とは、性欲をそそるさまという意味だ。
この少女は藤宮聖。
稀少な光属性と魔力をその身に宿す者。
彼女は平民である。
さて、まずはこの状況について説明しよう。
私の名前は悠姫、めんどくさいので姓は名乗らない。
玲とは一緒に、今日もいつも通り昼休みになったので私お手製弁当を食べていた。
そしたら藤宮聖が玲に近づき、放課後にこの空き教室に来てほしいと言って立ち去った。
心配なので玲と一緒に行ったら藤宮玲は突然、自分の教科書を破って玲の足元に放り投げた。
そこからは罵声のオンパレード。
ドン引きしてる玲に構わず、藤宮聖は満足したらしい。
その直後に慌てた攻略対象達が来た時には一瞬で泣き真似したのには、呆れたが。
そして今に至る、と。
……ああ、先ほどのヒロインと攻略対象という言葉の意味を教えよう。
この世界は「魔法使いのプリンス」、通称「まほぷり」と呼ばれる乙女ゲームの世界だ。
ヒロインは藤宮聖だが、こいつは転生者だ。
私も転生者だけどな。
攻略対象どもを説明すると。
柔和な第二王子、俺様ガキ大将な炎属性特化な魔法使い、腹黒メガネな氷属性特化な魔法使い、チャラいナンパな大地属性特化な魔法使い、寡黙わんこな風属性特化な魔法使い、不良ヤンデレな雷属性特化な魔法使い。
不良とヤンデレは別かもしれないが、だいたいはテンプレだ。
ストーリーは突然、光属性を宿してると判明したヒロインが魔法の学園に入学し、恋をする学園ファンタジーなもの。
エンディングはトゥルー、ハッピー、逆ハー、ノーマル、バッドとある。
そのゲームの中で玲は悪役だ。
逆ハーの条件は、悪役に苛められてるのがバレること。
だが、玲がいつまで経っても苛めないから、自作自演をすることに決めたらしい。
確かに、ゲームの玲は高慢で自己中、腹黒メガネとは婚約者で相手にベタ惚れしてる。
だが、ここは現実。
玲の性格はゲームと違う。
それに、私がいるしね。
「ん?」
私の足元に封筒が現れたので、それを拾う。
封を切って中の手紙を取り出して広げる。
どうやら手紙の差出人はお父様からのようだ。
読み進めていくと、あっさりと許可が出たらしい。
悩んでたのが馬鹿みたいだ…。
未だに茶番劇を演じる婚約者達とヒロイン、それに付き合わされる玲。
そろそろ助けるか。
雰囲気的にキレる寸前だし。
「玲」
名前を呼べば安心したような表情の玲、驚いた表情の攻略対象達と藤宮聖。
いつからいたんだって感じだろうが私、最初からいたんだ。
「とりあえず、はじめまして。私は闇羅悠姫です。たった今から水無月玲様の婚約者となりました」
私の言葉に玲が目を輝かせる。
「本当か、悠姫!?」
「当たり前だ」
「っ、ちょっと待て!」
バリトン(・・・・)の声で私を抱き締め、蕩けるような笑みを浮かべる玲。
玲の声を聞いて腹黒メガネこと氷河涼が声をかけてくる。
ちなみに氷河涼の容姿について伝えよう。
白銀の髪は肩甲骨まであって首筋辺りで一本に括り、瞳はアイスブルー。カッコイイ顔立ちで体躯はモデル並。
玲よりも長身とは生意気だ。
ついでに私の容姿も教えよう。
髪は胸元までで漆黒、瞳は玲含む水無月家と我が家(どちらも使用人含む)曰くルビーのように紅い。
玲は可愛いと言うが平凡な顔立ちで普通よりは少し上なだけのスタイル。
目以外は前世と変わらないんだよね……。
一瞬で氷魔法使いじゃないはずの玲の背後に吹雪の幻覚が現れたように見え、私は氷河涼に内心で合掌する。
玲が私から離れ、氷河涼へと向き直る。
「何だ、氷河?私はやっと愛しい悠姫と婚約した上に姿を戻せるから機嫌が良かったんだが」
……玲、キレてるな。
「北条……いや、闇羅さんと婚約したってどういうことだ?俺と婚約してたんじゃ……それにその声…」
その瞬間。
玲は盛大に鼻で笑った。
「私は産まれた時かられっきとした男だから、悠姫との婚約や声は自然なことだ。そもそもお前の言う婚約ってのは、小さい頃にされたプロポーズのことか?」
そう、玲は男だ。
体が弱いために親によって丈夫に育ってほしいと願掛けのため、女装していた。
本当だったら既に男に戻っていたんだが、パーティーで会った氷河涼がプロポーズしたせいで戻れなくなった。
しかも氷河涼は了承もされていないのに自分は玲と婚約者だと言いやがった。
玲はノーマルだ、いくら女にも見えるからって男を好きになることはない。
てか、男だというのは事情とともに周知である。
知らないのは攻略対象達と藤宮聖だけ。
ちなみに氷河涼が私を北条と呼んだのは、ただの偽名だ。
私も貴族だから。
玲はノーマルだ、いくら女にも見えるからって男を好きになることはない。
てか、男だというのは事情とともに周知である。
知らないのは攻略対象達と藤宮聖だけ。
ちなみに氷河涼が私を北条と呼んだのは、ただの偽名だ。
私も貴族だから。
氷河涼を除く攻略対象達が、藤宮聖を困惑の目で見る。
対して藤宮聖は俯いて肩を震わせている。
あまりにもゲームと違いすぎたからだな。
だが、もう遅い。
私は自分の影から記録用の石を取り出し、それを第二王子に投げ渡す。
第二王子は受けとると、戸惑ったように私を見た。
「それ、この教室に入った瞬間から今までを記録として保存したものです。一度、ご実家で確認してはいかがですか?」
もっとも、君達には絶望しかないが。
その言葉は飲み込む。
私の言葉に顔を勢いよく上げ、青ざめた表情の藤宮聖は急いで第二王子から取ろうとする。
氷河涼以外の攻略対象達が彼女を疑いの目になる。
だが必死な彼女は気づかない。
私には興味ないが。
だって。
「悠姫、帰るぞ。さっさと男の姿に戻りたい」
「分かった」
いつの間にか足元に縋りついていた氷河涼を蹴り、玲が手を差し出してくる。
笑顔でそれに手を繋ぎ、私達は空き教室を出る。
愚かなヒロイン。
あなたはここをゲームだと認識したからダメだったんだ。
この世界は現実なのに。
さようなら、認識の選択を間違えた人。
私は愛しい人と幸せになるよ。
end
攻略対象が氷河以外、ほぼ空気ですね……。
申し訳ありません。