終
「君さぁ、本当に友達はここにいるの?」
疑わしそうな警官に、伸介自身も曖昧に答える。
「だから、僕がアイツを最後に見たのは、ここなんですって。独りで入っちまって、僕もすぐに追いかけたんですけど、見つからなくって。てっきり帰ったんかな、と思って、僕もすぐに帰ったんですけど、結局その後からアイツいなくなっちまって」
警官はその屋敷を振り仰ぎながら溜息をつく。
「でもねえ、入ってみたけど、誰もいなかったよ? 結構、隅々まで探してみたんだけどなぁ。これで三回目だし……他に心当たりないの?」
晃一と伸介がこの廃屋の探検に挑んでから、もう一週間になる。
つまり、晃一が姿を消してから、一週間だ。
伸介は疑わしげな眼差しを向けてくる警官を睨みつけた。
「わかりませんって。僕の方が、アイツが今どこにいるのか知りたいくらいですよ」
「何なんだろうなぁ。ここは、時々、こういうことがあるらしいんだよなぁ。記録を見るとずいぶん久し振りみたいだけど。まったく。隠し部屋とか、気付かない穴とかでもあるのかなぁ」
首を捻りながら、警官が呟いた。その台詞につられるように、伸介も屋敷を見上げる。
どの窓にもべニア板が打ち付けられていて、外から中を窺うことはできない。
大きな、古びた屋敷。
ただの、家だ。
その時、ふと。
「あ、今、声が聞こえませんでしたか?」
パッと伸介が警官を振り返ると、彼は訝しげに眉をひそめた。
「え? 声?」
そう言って耳を澄まし、ややしてかぶりを振る。
「いや……気のせいじゃないの?」
「でも、女の子の声が――」
言いよどむ伸介に、警官が笑う。
「こんなところに女の子なんているわけないじゃないか」
「そう――そう、ですよね」
伸介が聞いた気がしたのは、多分幼稚園とかそのくらいの、幼い少女の声だ。確かに、そんな子がこんなところに、しかもじきに日が暮れようとしている時間に、いるわけがない。
「まあ、取り敢えず、もうここは捜しても無駄なんじゃないかな」
「はあ……」
「今日は送るからさ、他に思い出したことがあったら、また教えてよ」
「わかりました」
言外にもうお前は用済みだと言われ、渋々と、伸介は頷く。
警官に促されてパトカーに乗り込みながら、何故だか彼は、晃一の姿を見ることは二度とないような気が、した。
読んでくださって、ありがとうございました。
ほんの少しでも怖いと思っていただけたら、嬉しいのですが。