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私について、ミエネコの一人称

 私はネコである。

 ネコ年齢21才の乙女盛りの、悔しいけれど差別用語では雌ネコ、名をミエネコという。名付け親は主人ゆーさんだ。

 私達ネコは、幼少期から覚醒しているらしい。

 以前、ゆーさんが話をしてくれた。どこのお宅でも、そこに子供(子ネコ)がいるとすれば、ふにゃふにゃの体で弱々しく転がり、寝てばかりいる事だろう。でも瞳だけは大人ネコに負けない知性の輝きを放つ筈で、それは既に脳機能が完成しているからだ、と。

 そういえば私も。小さい頃手足がガタブルの反面、頭だけはしっかりとしていた。だからゆーさんとの日々を克明に振り返る事ができる。

 ここはひとつ、その時代から語ってみる、半分は寝ていましたが。

 

 私の始め。

 私は多分、夢を見ていたと思う。愛に包まれた幸せな気分で、ともかくフワフワの浮遊感を感じた。次に我に返ると、私は見知らぬ部屋にいて、目の前に不思議そうにこちらを見ている人、ゆーさんがいた。

 私は何か言ったと思う。なぜか私には過去の前世の記憶だろうかがあり、閃くように固有名詞が浮かんで。あろうことかその時、初めて見たゆーさんに向かって「サル」と、言ってしまった気がする。

 なぜか、そこでゆーさんはニコッと笑ってくれた。ともかく、そこから私達2人の生活は始まった。

 当時の私は賢い少女ネコで、この頃は無言作戦でゆーさんの気をこうと、やっきになっていた。

 無言作戦というのは、絶対に喋らない事。何が何でも口を利かない、お腹が空いても寂しくても、喋らないし話さない。小さな、てのひらに乗るネコがそれ?って不思議でしょう。案の定、ゆーさんはいつ何時も、私の事を気にしてくれたのです、にゃはは。

 この無言作戦のせいか、で、私の生き方は、普通のネコと違うものとなった。

 部屋の空気がゆーさんの話し方専門となった、私は聞き手となり、首を傾げたり頷いたり。私は、次第に人間の言葉に通じるようになったのだ。そして、彼の袖机の一番下の引き出しにあった物は、百科事典・国語辞書・生活の医学などで、てんこ盛りに輝く『電子辞書』だった。

 ゆえに、それを発見した日から、私はその引き出しの中でくる日もくる日も、勉強をした。そこで生活したといっても良い位もくもく、と。よく画面に顔をうずめて寝た。タッチパネルが反応してバックライトがいていた。


 かくして私は、人の言葉を解するネコとなった。

 ひらがなや簡単な漢字なら読める。アルファベットも解るが順番は覚えていない、単語はさっぱりだ。勿論暫くして私がお喋りを始めるようになると、私自身にも意外だったが普通のネコの鳴き声だった、けれど。

 そんな私だったから、ライフスタイルについても、ゆーさんからたくさんの事を学んだ。

 食べ物はよく噛んで食べなさい、と。これは咀嚼そしゃくして食べなさいという事だ。ゆーさんの代表的なしつけだ。

 彼は私の少女時代から、私の食事の横に張り付いては制止して、よく噛みなさいと小言した。小魚を食べられるようにならなければ、丈夫に育てないからだ。見ると、ゆーさん自身が歯を見せカチカチ鳴らしてゼスチャーしていた。私も真似てみながらもう一度横目で見ると、ゆーさん、ネコ目線でしつこくやっていて、あれ、楽しいかも?

 2人でもぐもぐ食事をする、というその習慣は今も続いている。それはつまり、夫婦のように食事はいつも一緒にという事だ、にこっ。

 他に、道路を横断する時は左右をよく見て渡りましょう、とか、実るほどこうべを垂れる稲穂かな、とか薀蓄うんちくを含めご披露したいが、長くなるのでそこは割愛する。


 ここで今更ながら、私の容姿について語っておく。

 私は三毛ネコだ。

 背中が薄いキャメル色、お腹から口元に定番の白、尻尾がちょっぴりしかないのが減点ポイントだけど。優しい姿をしていると、ゆーさんは言ってくれる、が、まるで自信がなく体重も明かさない。ぽっちゃりですとだけ、ぽつり。

 首から下げているのは、ターコイズのネックレス。チャームポイントであり、人の目を惹くところだろう。

 これはある日ゆーさんが買ってくれたもので、旅のお守りらしい。友人のアサミネコもほしがっている、私のお気に入りアイテムだ。


 友人の名前が出たので、ここで紹介をしておこう。

 私とゆーさんがこの町に越してきて1年と少し経つ。今や私にも友人がいて、その一人がスレンダーな美人黒ネコ、アサミネコだ。シャムと三毛のハーフさんだ。

 私が散歩をしていると、いつの間にか横にいたのが彼女で、話してみると同い年だった、意気投合したに決まっている。

 名前を尋ねると本人が知らずだった。砂地まで行ってヒントになる物を描かせてみると、彼女の爪はそこに『亜早海』と、漢字を引っ掻いた(不思議な事に、彼女はそれを形だけ覚えていたのだ。もしかしたら主人の名前かもしれない)

 だから、彼女の名前はアサミネコ。なんと美しい名前だ、と思う。

 彼女は、我が家にも頻繁に遊びに来る。食事も一緒(あれ?ゆーさんと私、2人きりじゃないじゃん)テレビも一緒に観る。

 ただしゆーさんと彼女の関係は、未だギクシャクしている。ゆーさんは胸襟を開いているが(すごい表現を知っているでしょう?にゃはは)アサミネコが彼の目を見ない、というか彼女は人と目を合わせようとしない。そこは変な女の子だと思う。

 友人かどうかは別にして、町の外れにあいつがいる、白い大ネコ、これまた三毛の竜介。ネコ年齢自称30才の異性。

 彼は私達の散歩コースの最後にいて、いつも声を掛けてくる。悪い奴でなくむしろ私達に優しい位だが、容姿もカッコ良くないし、性格が気に入らない。人のゆーさんと比べては悪いと思うが、あまりに気軽すぎる(きっと他の女の子にも声をかけているに決まっている)

 更に図々しいにも程があって、彼は時折ここに押しかけてくる。巨体では私達の専用口に入り込めないから、決まって扉の前で大騒ぎをして帰って行く。本当に困ったものだ。が、実は散歩コースを変えない私とアサミネコの心理を、上手く表現できないのだ。そこも困っている。

 不思議な友人もいる。博学ケイトさん。純白の美しすぎるペルシャネコ、年齢不詳の女性だ。

 彼女は人語を解する点で私に似ているが、知識は膨大で、町中のネコに知られる神秘的なネコだ。

 町の丘の上に主人のいる飼いネコで、時々私達の集会場に現れてくれる。為になる話をしてくれるのだ。前回のお話は、地球温暖化の危機に私達ネコの精霊は立ち向かえるか?だった。もっともっと話を聞いて、いつかゆーさんにも語ってあげるのだ。私は彼女に会うのが楽しみなのだ。


 それではいよいよ本題に入ろう。

 私とゆーさんは以前、ドッペルゲンガーという物に出会って…(長いので、作者により割愛されました)



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