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俺と許嫁  作者: シラバス
1/13

始まりの内定

読者だったのが執筆にまで手を出してしまいました。

これから精一杯頑張っていきたいと思いますので宜しくお願いします!

 俺は大学四年の就活生だった。







 世の中はニュースでも何度か真剣に取り上げられる程の就職難だ。ここ数年で大学生の人は本当にご愁傷様としか言えない。態々このタイミングで就職難になるなんて想像もしてなかったし、実際此処まで大変だとは思わなかった。



 とはいえ、俺もその一人だ。



 本当に何社受けたか最早曖昧だし、何度も他県に行って辛い思いもした。理不尽な面接対応や厳しい筆記試験、やる気はあるのに認めて貰えない悔しさは就活中にもう十分体験した。


 重ねて言おう。



 俺は就活生だった。(・・・・)





「有難うございます! 宜しくお願いします!!」




 そう、大学四年の七月。



 そろそろ決まらないと厳しいというところで何とか俺、西城(サイジョウ) 悠斗(ユウト)は東京のとあるソフトウェア会社の内定を貰った。


 地元の宮城に就職出来なかったのは残念だが……。今、この瞬間も内定が貰えず頑張って就職活動を続けている人達がいるんだ。贅沢は言えない。


 といっても宮城で一人暮らしをしてまで工業系の大学に通っていた俺にとっては希望に沿った進路先と言える。

 今後について色々期待や不安があるが今は純粋に内定を貰った事が嬉しい。



「皆にも一応報告するか」



 一応色々相談に乗って貰ったり心配も掛けたりしたので研究室の同級生や教授、サークルの仲間、交流のある先輩や親戚に次々にメールで報告する。


 送った直後にお祝いの返事が次々に届いた。



『おめでとう~!』

『ちくしょうおおおおおおお! 先を越された!!』

『おめでとうございます!』

『来年は東京か、俺を見つけられるかな?』

『よっしゃ! 飲みに行こう!!』



 一部おかしいが次々と届くお祝いメールに熱い気持ちが湧き上がるがまだ報告をしていない人物に気付いた。



「そうだ、祖父ちゃんと祖母ちゃんは携帯もパソコンも無いから直接電話で報告しないと」



 祖父母は宮城県の北部に住んでいる。

 両親や弟に妹も俺の住む仙台に住んでいるが、俺は一人暮らしというものに憧れていたので大学進学と同時に一人暮らしをしている。


 その時に同じ町にいるのに態々別々に住む必要はないと、両親と揉めたときに助けてくれたのが祖母だった。お盆や正月に家族と一緒に帰るといまだにお小遣いをくれて頭が上がらない。

 最後に会った時も就職活動について心配していたので直接報告して安心させてあげたかった。


 早速番号を押し何度かの呼び出し音の後に通話先の受話器を取ったのが分かる。



『もしもし?』

「あ、お祖母ちゃん? 悠斗だけど」

『ユウちゃんかい? どうした?』

「ああ、内定を貰ったから報告をね」

『あらら~! 良かったね~!!』

「うん、ありがとう」



 お祖母ちゃんは田舎訛りのある声でお祝いの言葉をくれた。言葉が弾んでいる事からも心から喜んでくれている事が分かる。自然と自分も嬉しい気持ちになった。



 直接報告して正解だったな



「じゃ、詳しい事はお盆に帰った時にでも話すよ」

『あ、ユウちゃんちょっと待って』



 そのまま通話を切ろうとするとお祖母ちゃんに止められた。



「ん、どうかした?」

『えーとねえ……、無事内定も貰って来年ユウちゃんは社会人でしょ?』

「まあ、無事卒業出来ればそうなるね」



 しかし既に必修以外の卒業に必要な単位は全て取っているため余り心配する必要はない。この調子だと四年の後期も碌に学校に行かなくても卒業出来るだろう。心底一年から三年まで真面目に勉強していてよかったと思う。



『それでね、今まで黙っていたけどユウちゃんにはね許婚がいるのよ。 本当は卒業するまで言わないつもりだったんだけど――』

「……ん? ゴメンもう一回言ってくれる?」



 疲れているんだろうか、何かお祖母ちゃんが変な事を言った気がする。



『だからね、ユウちゃんには許婚がいるのよ』

「とうとうボケましたか御婆様」

『まだまだ若い者には負けません。 信じられないのは分かるけど詳しい話をしたいから今度の土日こっちに来てくれない?』



 うん、お祖母ちゃんは俺のボケも華麗にスル―。え? ていうか……



「……マジなの?」

『マジもオオマジ』



 無理して若者の言葉に合わせるも田舎訛りのイントネーションでおかしな肯定だったがそれがトドメだった。



「うそお!?」





 俺にとって内定を貰い、限りなく最高の日になったその日、それは今まで知らなかった許婚の存在を知る日でもあり――




――俺にとってかけがえのない日々の始まりでもあった。


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