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第5章:迷い道の先にある、あの日

入籍まであと一週間。僕たちは「独身最後のリフレッシュ」として、一泊二日で箱根へと車を走らせた。

 しかし、最新のカーナビを過信しすぎたせいで、僕たちは山道で迷い込んでしまった。電波も怪しくなり、目的地とは真逆の寂れた展望台に辿り着いた頃には、すっかり日が暮れ始めていた。

「ごめん、菜摘。せっかくの旅行なのに……」

「いいよ。こういうのも、私たちっぽくて」

 菜摘は怒るどころか、車から降りて澄んだ山の空気を吸い込んだ。

「ねえ、健太。覚えてる? 二人が初めて出会った、あの大学のサークルの飲み会のこと」

「忘れるわけないよ。君、端っこの席でずっと不機嫌そうにコーラ飲んでたじゃない」

「違うよ! 人見知りしてただけ。でも、健太が隣に来て、『この唐揚げ、レモンかけていい?』って緊張した顔で聞いてきたから、なんか面白い人だなって思ったんだよ」

 あの日、ただの偶然で隣り合った僕たちが、今こうして結婚しようとしている。

 もしもこれから先、年月が経って二人の間にすれ違いが生じたり、相手の嫌なところが目についたりした時は、今日のこの迷い道の風景や、あの日出会った瞬間の、少しぎこちない空気を思い出そう。

「これからも、どうぞよろしくね」

 菜摘が僕の腕に自分の腕を絡める。

「こちらこそ。一生、返品不可の契約だからね」

 不便な山道での小さなハプニング。でも、それが僕たちにとっては最高の思い出のスパイスになった。

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