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第4章:不慣れなエスコートと、最高のご褒美

五月、僕たちは婚約記念日を祝うために、普段は足を踏み入れないような西新宿の超高層ホテルにあるレストランへと向かった。

 僕は数日前からネットで「スマートなエスコート術」を検索し、テーブルマナーの動画を何度も見返していた。当日は、柄にもなく新調したスーツに身を包み、背筋を伸ばして彼女をリードしようと決めていた。

「健太、緊張してる? 肩、ガチガチだよ」

 タクシーの中で菜摘に笑われる。彼女は、先週一緒に選んだ紺色のワンピースを纏い、いつになく大人びて見えた。

 レストランの入り口で、僕は震える手で彼女の背中にそっと手を添え、案内係の後を追った。椅子を引くタイミング、カトラリーを使う順番、ワインのテイスティング……。頭の中はパンク寸前だった。正直、料理の味なんて半分も分からなかったかもしれない。

「……ねえ、健太」

 デザートが運ばれてきた頃、菜摘がテーブル越しに僕の手を握った。

「無理してかっこつけなくていいよ。私は、私のために必死になって、慣れないエスコートをしてくれる健太が一番かっこいいと思ってるから」

 見透かされていた。でも、その言葉で憑き物が落ちたように体が軽くなった。

「……ありがとう。来年は、もう少しスマートにできるように修行しとくよ」

「ううん、今のままがいい。あ、でも、写真は綺麗に撮ってね! 映えが大事だから」

 結局、最後はいつもの通り。彼女の指示に従って何度もスマホのシャッターを切る僕だったけれど、レンズ越しに見る彼女の満面の笑みは、どんな高級ディナーよりも僕の心を豊かにしてくれた。

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