誠の草たち
プランターのすみっこで、朝の光をあびながら、
草たちはのんびり立っていました。
「うーん今日もあったかいねえ」
いちばん背の低い草が、葉っぱをゆらしながら言いました。
「うむ、昨日の雨のおかげで、根っこが気持ちいい」
少し背の高い草が、土の中をくすぐったそうに答えます。
「ぼくたちのこと“雑草”って呼ぶけどさ」
別の草が、ひそひそ声で続けました。
「名前がないって、自由ってことじゃない?」
「たしかに」
みんなでくすっと笑います。
風が吹いて、葉っぱ同士がカサカサと触れ合いました。
「今日はどんな一日になるかな」
「鳥が来るかも知れぬな。」
「それとも、また水をもらえるかな〜」
そんなことを話しながら、
草たちは急ぐこともなく、競うこともなく、
ただ同じプランターの中で並んで立っている。
人には聞こえないけれど、土と光と風のあいだで、
今日も雑草たちのおしゃべりは、ゆっくり続いているのでした。
―
冬の朝。プランターの土はひんやりして、霜が白く光っていました。
「冬だねえ……」
「うむ、 冬だ」
葉っぱが少し茶色くなった草が、小さく息をはきます。
すると、静かな声がしました。
「あー、僕、またお別れかも。」
まわりの草たちが、そっと揺れました。
「でも、」
その草は、土の下を感じるように、ゆっくり続けます。
「まだ、根っこ生きてるから。」
風が吹いて、残った葉がかさりと鳴りました。
「春になったら、また、新しい葉っぱがでてくるよ。」
「うむ」
「じゃあ、僕さきに眠るね」
「土の中で、あったかくしてさ」
「今生は穏やかでよかったな」
「嫌だな 斎藤くん 僕たち
春にまた会えるんじゃないかな」
「うむ、 定めはわからぬが、 そうであればいい」
「違ったら、そのとき! じゃあ、さようならだね」
「うむ」
冷たい土の中で、根っこたちは静かにねむる
光の記憶を抱えたまま、
春の足音を、のんびり待ちながら。
ーおしまい➖




