第088話 ☆教皇暗殺
―――星歴992年12の月
神聖ロザリ法王国:聖都サンクタリア。
4大都市を掌握する4人の《枢機卿》たち、
それらを束ね、頂点に君臨する【教皇】キアン・オブライエン。
5人の君主たちが、ここに集っていた。
これより、旧:ガウガレル百獣王国の王都――
現:ディアブルムの町へ向かう聖騎士たちの出征式を執り行うためである。
■ロザリ出征計画
わざわざ、遠方から枢機卿たちを呼び寄せたのは、
教皇の胸に巣食う懸念を払拭するためだ。
これは、【叡聖】ルシエン・バエルが進言した策であった。
各聖騎士団の総帥である枢機卿たちを
教皇の管理下である聖都サンクタリアに集め、ここに作戦本部を設立。
情報・命令系統を統合し、作戦を遂行する。
―――というのは表向きの理由。
実際には枢機卿たちを人質とし、
裏切りを防ぐ狙いも含まれていた。
それほどまでに、今回の遠征計画は強硬策なのだ。
この記念すべき日に、ルシフルの村から
ラフィン、ルシエン、バルバラの3人も
聖都へ馳せ参じていた。
ラフィンは補給部隊の副官、
ルシエンは作戦参謀、
そしてバルバラは教皇の愛人として。
「…ここまでは順調」
「ふぅ~。このままええ感じでいってくれや。
ワシも今だけは女神さんにすがらせてもらうで」
3人は、教皇と枢機卿たちの会議が終わるのを待ちながら雑談を交わしていた。
会議の方は紛糾しているらしく、
怒号が外にまで響いてくるほど白熱している。
やがて扉が勢いよく開かれ、秘密会議が終わったことを告げた。
怒りを隠しきれない表情の枢機卿たちが姿を現すと、
待ちわびた関係者たちが、わらわらと押し寄せていく。
「冬の荒道を越えてまで老骨を呼び寄せるとは、
作戦参謀殿は、さぞ奇策がお得意と見える」
そんな中、枢機卿の1人が挨拶代わりにルシエンに嫌味を垂れる。
見慣れた光景だ。
ルシエンは、ただじっと頭を垂れながらやり過ごす。
「ねぇねぇ、ママー?
どうして売女がここに居るのー?」
1人の修道女の少女が、バルバラ・ベレトを指さして声を上げた。
■修道女:モニカ
■修道女:バルバラ・ベレト
ギョッとするようなもの言いだが、
"ママ"と呼ばれた修道女の女はそれに同調した。
「あら、男を漁りに迷い込んだのかしら?」
■修道女:グレース
そしてバルバラに詰め寄り、威圧した。
「ここは神聖な場なんですけど?」
「…グレース様」
バルバラは不快感を表に出さず、静かに頭を垂れると、
ラフィンもそれに続いた。
「グレース様、モニカ様、へへぇ」
異様な光景だった。
ラフィンは司祭である。
下の立場であるはずの修道女に媚びへつらうなど…
だが、ここでは不思議な光景ではない。
グレースは教皇の公然の秘密の愛人、その1号。
モニカはその娘なのだから。
「ママ、近づき過ぎると奴隷臭がうつるよ」
「それもそうね」
そのやり取りを、会議室から出て来たばかりの教皇が目にすると、
慌てて声を荒げた。
「こら!何をしておる!公務中だぞ」
言葉こそ強い調子だったが、内心腰が引けていた。
戦場のような会議を終えてみれば、
愛人1号と2号が鉢合わせているではないか。
もう勘弁してくれ。アップアップだ。
そこにルシエンが助け船を出す。
「猊下、そろそろお時間になります。
こちらへお願いします」
「う…うむ」
モニカは頭を垂れるラフィンたちに、
"ご丁寧な挨拶"をして、その場を離れていった。
「キモ(笑)」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
民衆の前に、枢機卿と教皇が姿を現すと、
広場の空気は一層熱を帯びた。
ざわめきは歓声へと変わり、
押し寄せる人々の息遣いが波のように重なっていく。
やがて、教皇が壇上に立ち、静かに右手を掲げると、
その仕草だけで群衆は息を呑み、一瞬にして沈黙が訪れた。
そんな中、【教皇】キアン・オブライエンによる演説が始まった。
「聖なる子、聖騎士たちよ。
目下、我らの町ディアブルムは、悪魔の影に覆われている。
そこに住まう者たちは恐怖に縛られ、祈りの声すら届かぬ闇に沈んでいる。
しかし忘れるな。
神は我らに剣を与え、信仰を与え、そして使命を与えた。
悪魔の支配を打ち破り、光を取り戻すことこそ、我らが歩むべき道である。
聖都サンクタリアに集いし枢機卿、
そして選ばれし聖騎士たちよ。
汝らの槍は悪を貫き、汝らの盾は民を守る。
ディアブルムの町を解放し、神の光を取り戻せ。
進め、聖騎士たちよ。
悪魔を退け、再び聖なる鐘を響かせよ!」
演説が終わると、再び民衆は熱狂の渦に包まれた。
"第二回 金星十字軍"の敗戦は暗黙の了解だ。
――教皇だけではない。
民衆もまた、勝利を望んでいたのだ。
我々は再び結束し、悪に立ち向かうのだと。
もちろん、ディアブルムの町が悪魔の影に覆われたなどでっち上げである。
確実な勝利の為、遠く離れた自国領の町を標的に選んだ。
ルシエンの作った単純なストーリは、民衆の心の隙間を埋めた。
聖歌隊は歌い、枢機卿は祈る。
華やかな熱狂と共に、一万の軍勢が聖都サンクタリアを出立した。
――――――――――――――――
・聖騎士:3,000 人
・従士:6,000 人
・修道士/修道女:1,000 人
[計:10,000 人]
――――――――――――――――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「猊下、凄まじい演説でございました。
もはや栄光は約束されました」
「おお。ここまで来れたのも、
お前のおかげだ。ルシエン」
「猊下、計画通りこの後はルシフルの村での指揮となります。
実務は私が取りますゆえ、そこでお休みください」
「うむ。頼もしいぞ、ラフィン」
一仕事終えたばかりの教皇だったが、
すぐに枢機卿からの呼び出しがかかる。
「教皇猊下、まだ話は終わっておりませぬぞ…」
また缶詰めにする気か。もう勘弁してくれ。
「ああ、望む所だ。
だが私はこれから補給部隊の直接の指揮を執らねばならん
今日はこれにて失礼する」
そう言って、教皇はそそくさとその場を後にした。
(何が直接の指揮だ)
(自分たちを軟禁しながら、当の本人は女の所か)
枢機卿たちは、逃げるように立ち去る教皇の背中を冷ややかな目で追う。
もはや枢機卿たちと教皇は、目に見えて決別していた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「先ほどの演説、勇ましかったですわ…猊下」
「二人の時はキアンと呼べと言っているだろう。
君が見ていたからな。久しぶりに張り切った」
ルシフルの村へ向かう道中の馬車で、
教皇とバルバラの二人はいちゃついていた。
「それよりも、さっきは大丈夫だったか?
グレースに何か意地悪されなかったか?」
「いいえ、特に。グレース様は、
キアン様を支えるために精一杯のご様子でした」
――嘘だ。
本当は、言いがかりをつけているのを見かけたのだ。
愛人2号の立場でありながら、1号であるグレースを庇うなど、
なんて出来た女なんだろうか。それに比べて……
「グレースなど…脱げばただのブタだ。
態度まで醜くなりやがって…っ」
だいたいあの態度はなんだ。
ちょっと抱いてやっただけで、付け上がりやがって…!
「それに比べて、お前は美しいな。
愛しのバルバラよ」
そう言いながらバルバラの肩に手を回して、胸を揉む。
やはり女は若い方がいい。
この弾力にいつも癒されるのだ。
すると、馬車の中に"メスの香り"が充満していることに気付く。
まさか、もう発情しているのか?
「勇ましい演説が子宮にキちゃったみたい…♡
排卵が…始まりましたわ♡」
バルバラは目を蕩けさせながら、股間を弄って来た。
もはや栄光は約束されている。
その記念に、今日はこのメスを孕ませてやるか。
62歳の教皇は、年甲斐もなく勃起していた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
―――神聖ロザリ法王国:ルシフルの村
日が沈み、運命の夜が来た。
いつも逢瀬を重ねている協会のヤリ部屋で、
教皇とバルバラ・ベレトは二人っきりになっていた。
「ふむ…十字架刑で頼む」
最近のお気に入りだ。
教皇は自ら十字架に磔になると、
完全に身動きが取れなくなった。
猿ぐつわを咥えさせられ、空気が薄まる。
コックリングをハメられ、射精を抑制される。
完璧な準備だ。
神の試練に挑むにふさわしい。
バルバラの苛烈な奉仕が始まった。
快感が脳天を突き抜け、膝が笑う。
薄い酸素が天国を近くし、
朦朧とする意識の狭間に、女神を感じる。
ヴィーナス神への忠誠を必死で声で叫ぶ。
「モ゛ー゛!モ゛ー゛!」
目がチカチカし、流れ星が落ちる。
バルバラが吸引力を強め、次の失神へ向かおうとしたとき、
パッと奉仕をやめてしまった。
!?
急に快感を取り上げられた教皇は、
声にならない抗議の声を上げる。
「モ゛ー゛!モ゛ー゛!」
すると、バルバラは手を床に着き、
尻を天高く掲げた。
……忘れていた。
これまでのは、ほんのウォームアップにすぎない。
本番は、これからなのだ。
だが、ここに来てかつてない程の
信仰心の高まり具合だ。
祈りを捧げればすぐに叶うだろう。
(女神様、お助け―――)
※ズドンッ!!※
祈り終える前に、
バルバラが腰を思いっきり打ちつけた。
始まったのだ。
魔王軍の侵攻が始まったのだ。
※スパンッ!スパンッ!スパンッ!※
鬼の猛攻で本丸が潰される。
こちらも負けじと"金玉十字軍"を編成し、
本拠地への侵入を試みようとするも、
すぐに尻圧で押し返されてしまう。
あまりにも苛烈なグレート・ウォー。
あまりにも厳しい神の試練。
※スパンッ!スパンッ!スパンッ!※
いかん……敗けるッ!!!
と思ったその時、バルバラが告白してきた。
「私ね…枢機卿に…なったの♡」
「フゴッ♡フゴ!♡……?」
一瞬、何を言っているのか意味が解らなかった。
枢機卿になるためには、
一万人以上の信者数…
"大聖堂"の十字聖印の管理者でなければならない。
■祭祀
※ガチャッ※
その時、開かずのはずの扉が開いた。
姿を現したのは、ラフィン・ダンタリオン、
ルシエン・バエル、それと…
だれだっけ。名前もよく知らない男。
いずれにせよ心強い援軍だ。
苦しい中でも私には彼らがいる。
不思議と、違和感を感じなかった。
正常な思考をするための酸素など、
とっくに奪われていたのだ。
「なんや楽しそうやなぁ」
いつもとは違う、
ラフィンの軽はずみな言動を浴びせられても、
どこか夢見心地。
頭はボーっとしていた。
いつの間にか"仲良し"をやめたバルバラが、
その手にレイピアを持っていることにも気づかなかった。
「バイバーイ♪」
そう言って、バルバラは腹にレイピアを突き刺してきた。
!?
あまりの激痛に意識が覚醒する。
「モ゛ー゛!モ゛ー゛!」
まずい。何だこれは!?何が起こっている!?
助けてくれ!ルシエン!!
「はぁ。もう少し
まともな方かと思っていましたよ…」
そう言いながら、ルシエンもレイピアを突き刺してきた。
!?!?!?
ルシ…エン…おまえもかっ…!
次にレイピアを渡されたのはオルフ。
息を整え、覚悟を決めると突き刺してきた。
~~~っっ!!
誰だお前は!?
死ぬ寸前の教皇を目の前にして、
バルバラはかつてないほど興奮を覚えていた。
「ねぇ、ラフさん♡
ヤッてい?ヤッてい?」
「お前という奴はしゃーないな♪
好きにせぇ」
すると、バルバラは"仲良し"を再開した。
※パンッパンッパンッ※
やめっ!出ちゃう!
大事なモノ!飛び出ちゃう!
ラフィンが持っているのは立派な両手剣だ。
「この剣な、前のワシの奴隷主が持っとった剣や
どや、ええやろ?」
話を聞く余裕なんてない。
今すぐバルバラを止めてくれ。
「まぁ、奴隷主だった奴ぶっ殺して、
その嫁と娘、ワシの専属奴隷にしたったんやがな♪」
絶頂を感じたバルバラがスパートに入る。
出血の止まらない教皇の命は風前の灯火だ。
「10年……研ぎ続けて来たぞ」
ラフィンの声は低く、刃の重みを確かめるように響いた。
次の瞬間、剣を振り下ろすと、
教皇の首は音も無く絶たれた。
「……振るったのは…なんや一瞬やんけ」
同時に、首のない教皇の身体はコックリングをぶち壊して、
大量に射精した。
生存本能だろうか。命が終わるその瞬間に、
命のタスキをつなぎに行ったのだろう。
「アハ♡やるじゃん…孕んだら産んであげる♡」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
"第二回 金星十字軍"において、
既存勢力に見切りをつけたルシエンたちが
奴隷を集め始めたのは、今から2年前のことだった。
彼らは大量の奴隷保有に耐えうる社会を築き上げ、
この2年で集めた奴隷の数は、3万人を超えるに至った。
そして、集めた奴隷を3分割し、
密かに保有する3つの十字聖印へと登録したのである。
―――――――――――――――――――
・ルシエン・バエル:《枢機卿》
・バルバラ・ベレト:《枢機卿》
・オルフ:《枢機卿》
―――――――――――――――――――
そして、最後の時を待った。
「転職:"教皇"」
―――――――――――――――――――
・ラフィン・ダンタリオン:【教皇】
―――――――――――――――――――
「あっひゃっひゃっひゃっ♪
彼岸花が咲いたぞ♪」
ブクマ・評価いただけると大変助かります(>ㅅ<)




