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夜明けの星の黙示録  作者: アレクサンドル・スケベスキ
第五章 vs赤竜編

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第086話 黙示録の笛が鳴る

城を引き渡されたその日、

俺たちはどうしたらカナン一帯が豊になれるかを話し合っていた。


とはいえ、経済に関しては全員が素人で、

進め方に不安があったのだが、

俺達の中で一番頭のいいフィズルが議論を引っ張ってくれた。


"まずは現状把握が大事"ということで、

フィズルへ情報を渡すと、整理して絵に描き出した。


「頂いた情報をまとめると、このような形ですね」


■カナン一帯:経済圏

挿絵(By みてみん)


(すごい…俺のようなアホでも理解できるよう、

 絵にしてくれたのか……助かる)


こうして見ると、グラントハルはうまく回りだしたが、

カナンと、エル=ネザリの経済的な課題が解消できていない。


「カナンは温泉街を作って経済を回そうと思う。

 後はエル=ネザリか…」


「温泉街はいい案ですね。

 ですが、他にも問題はあります」


フィズルが指摘したのは、以下の2点だった。

1.全体の経済と武力が、アレクに依存している

2.カナンの農業に改善の余地あり


「むぅ」


これに対する回答として、フィズルが上げた案は、


・カナンの立地の良さを生かし、

 グラントハル↔カナン↔エル=ネザリで経済導線を作り、

 経済依存の脱却を図る


・武力をエル=ネザリへ委託し、

 武力依存の脱却を図る


・カナンの農業を改善し、食料を他の里へ販売する


というものだった。

絵にまとめた将来像はこうだ。


■カナン一帯:経済圏(将来)

挿絵(By みてみん)


■やるべきこと

―――――――――――――――――――

アレク:

・経済が立ち上がるまで、カナンに食料と金銭を供給する。


カナン:

・農業の改善

・道を整備し、隊商の経由地とする


エル=ネザリ:

・傭兵として立脚


グラントハル:

・カナン温泉街の建設

―――――――――――――――――――


「おお、いいな!

 凄いぞフィズル。早速次の金曜会で提案しよう」


まるで目の前を覆っていた霧が晴れたかのように、

視界が一気に開いた感触を得た。


その日は、ご機嫌のまま愛奴達全員と温泉に浸かり、

全員とベッドを共にした。


経験を積んで来たことで自信があったのだが、

それは錯覚だったようだ。

5人同時に相手するには、戦力を見誤っていた。


最初はこちらが攻め立てていたものの、

リーシャの奉仕で思考を奪われたあたりから形勢逆転。

最後はイヴに搾り取られ、情けない声を上げながら失神してしまった。

……くそっ……くそっ


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


――そして翌朝

日課としている朝練を終え、

全員で朝食をとっていた時だった。

―――――――――――――――――――

・☆☆☆☆奇跡の パンケーキ〈ウェルス・ケーキ〉

・☆☆☆希少な 「ルビー・ブドウ」

・☆☆☆希少な ハーブティー「ウェルス・ブリュー」

・☆☆☆☆☆伝説の 紅茶『プリンス・オブ・ウェルス』

―――――――――――――――――――


タリオンが姿を現した。


「アレク様。探しました……

 とても立派なお城ですね」


「おお、タリオンか。"聖女"の件か?」


タリオンは、金星十字軍のトップであるアーサーの呪いを解くため、

ラエルノアの命を受けてグランストンとやらに向かっていたはずだ。

そのタリオンが姿を現したということは、

つまり、そういうことなのだろう。


「いえ、そうでは無いのです…」


そして、タリオンはとても残念そうに、

アーサーが解呪を希望しなかったことを報告した。


「主である皇帝を失ったことが尾を引いているのかもしれません

 …とても誇り高い男なので」


この男もアーサーの呪いが解けることを望んでいたのか。

アーサーという男は一体どれほどの男なのだろう。

俄然、興味が湧いてきた。


肩を落とすタリオンが不憫だったので、

"ルビー・ブドウ"と"プリンス・オブ・ウェルス"を

分け与え、一緒に朝食をとった。


「ご馳走様でした…大変美味でございました」


だらしなく恍惚の表情を浮かべていたタリオンであったが、

やがて顔つきを改め、本題へと切り込んだ。


「実はこちらに参りましたのは、別件なのです」


曰く、

"赤竜"使役をすでにラエルノア魔法教団は検知しており、

ラエルノアは共に"世界樹"へ向かうと張り切っているらしい。

俺を魔法教団まで引っ張ってくるよう命じられ、馳せ参じたのだとか。


何じゃそりゃ。

俺としては、世界樹をどうこうするつもりはない。

重要な樹だと説明を受けている訳だしな。

世界樹を見たいなら、勝手に向かえばいいじゃないか…


と思ったが、せっかちなラエルノアを放っておくのは得策ではない。

城を破壊した借りを、どのように取り立てられるか分からん。


「では早速向かうか…」

「助かります…」


こうして、俺達はタリオンと共に魔法教団へ移動することにした。


"ワープ"


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


――ラエルノア魔法教団


城の前へワープすると、

すでにラエルノアが城門に立っていた。

隣にいるナイレアは護衛なのだろう。


「遅いぞアレクよ」


遅いって、ほぼ最速で来たはずなのだが…

せっかちが過ぎる。


以前破壊した城は完全に修復していたようなので、

その件で挨拶しようとするも…


「ほれ、何をしておる。"世界樹"へ向かうぞ

 "アレ"を出してくれ。"アレ"」


挨拶も無しに、いきなり"ワープ出せ"と催促されてしまった。

まさかその為に呼んだのか!?

無料タクシーじゃねえんだぞ!?


俺もいつの間にかパシリにされてしまったようだ。

タリオンがNo.1パシリなら、俺はNo.2パシリってところか。

トホホ…


"ワープ"


言われるがまま、

"赤竜"アルバストラスのいる丘に"ワープ"を設置した。


光の魔法(ルクス・マギア)


すると、ラエルノア達は光の魔法を纏い始めた。


「何しとるんじゃ?呪われるぞ?」


!?

(光の魔法を纏うと、呪いへの耐性になるのか?……知らなかった)


"光の魔法(ルクス・マギア)"


俺達も同じように光を纏って

ワープホールを潜った。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇

―――ドラゴン・ヒル


「おー、"赤竜"…ようやったのう」


丘の上でくつろぐアルバストラスを見ながら、

ラエルノアは感心した様子で、ペタペタと触り出した。


あまりに危なっかしくて肝が冷える。

俺はすぐに話題を変えることにした。


「それで、世界樹はこの近くにらしいが、場所はわかるのか?」

「"あれ"じゃ」


ラエルノアが指さしたのは、

この丘から見える、ひと際存在感のある一本の樹だった。


「なっ!?」


指された方を見て衝撃を受けた。

その樹には、確かに見覚えがあったのだ。


「嘘だろ…俺が転生した時に寝そべっていた樹だ」


動揺を抱えながらも、俺は世界樹へと足を向けた。


「注意せよ、いつ攻撃されるか分からんぞ」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


世界樹の根元まで行き、"解析"を掛ける。


■世界樹

―――――――――――――――――――

名前:ー Lv.590

HP:ー / ー MP:9680 / 15890

種類:神獣類 種族:樹(神樹種) 種別:世界樹

性別:ー 年齢:3895歳 身長:21m

ジョブ:ー

スキル:

 ・【無詠唱】

 ・【六重奏】

 ・《擬態》

 ・『隠密』

―――――――――――――――――――


本当に世界樹だ。間違いない。

"擬態"に"隠密"のスキル…おそらく俺が識別できなかった原因だろう。

能力も確認する。


■世界樹:魔法

挿絵(By みてみん)


世界樹の能力は魔法に限られていた。

それだけでLv.590。驚異的な能力だ。


さらに、噂に聞いていた"魔素生成の魔法"と"豊穣の魔法"。

やはり、この樹はカナンにとって欠かすことのできない存在なのだろう。


――その時だった。

"離れろ"


突如、第六感が警告を鳴らす。


同時に、上空にグリフォンの群れが現れ、

デーモン、アークエンジェルが召喚された。

"幻獣種"祭りだ。


「まずいぞ…俺から離れるなよ!」


大激震(だいげきしん)】を取り出し、戦闘態勢に入る。

が…なにやら様子がおかしい。

いつもならもう矢が飛んできてもおかしくないのだ。


そんな中、リーシャが戸惑いながら話かけて来た。


「あの…ご主人様…

 世界樹、使役出来ちゃったみたいです…」

―――――――――――――――――――

★ 魔導書 【八咫の記(やたのき)

 └★神使

―――――――――――――――――――


「はぁ!?」

思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。

どういうことだ。

今までリーシャの★神使は、グリフォンの使役に苦戦していたはずだ。


幻獣種以上の使役は難しいものだと思っていた。

だが、もしかすると、既に世界樹が使役していたため、

競合し合っていただけなのか?


それで、使役元の世界樹を使役することで、

全権を奪ってしまったと…

嘘だろ……

リーシャは、ドラコニス山脈において最強の存在だ。


目の前に現れた幻獣種たちは、

しばらくすると俺たちを護衛するような動きを見せた。

そして、その様子を見たラエルノアは、勝ち誇ったかのように笑った。


「カッカッカ!ようやった!

 リーシャ!さすがじゃ!」


そしてその勢いのまま、命を下した。


「アレク!お主を世界樹の守護者に任命する!」


(守護者ってなんだよ)


※あー、やっと解放されたわい※


ボソッと聞こえて来たラエルノアの呟きで、

だんだん話が見えて来た。


ラエルノアは魔素生成の要である世界樹の保護に努めていたが、

面倒でもあったのだろう。

そこで今日は、丁度良く現れた俺に、その役目を押し付けに来たのか。

俺にとっても"豊穣の魔法"は無くてはならんしな。


いつからこの計画を立てていたのだろう…

俺に赤竜を使役するよう誘導したあの時からだろうか。

チクショー。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


リーシャが世界樹を使役下に置いた後、

改めてその姿を見渡す。


さすがは3,000年以上を生き抜いた樹だ。貫禄がある。


「でけえな……」


背後へ回ると、根元に人が入れるほどの穴があるのを見つけた。

樹洞(じゅどう)という奴だろうか。

ふと覗き込むと、薄暗がりの中に祭具らしき影が見える。


「おーい。何かあるぞ」


!?


その声に反応して、ラエルノアも中を覗き込む。

すると、驚いた様に身を乗り出し、

ためらいなく中へ入っていった。俺も後に続く。


闇に包まれた空間を、ラエルノアの

"光の魔法"が少しずつ照らし出す。

淡い光が広がり、隠されていた全容が姿を現す。


「これは…」


それは、世界樹の木肌に直接刻まれた文字列だった。


※星暦987年9の月※

※七姉妹、並び立つ※

※神の座は一つ※

※異教徒どもを薙ぎ払わんことを※

※クルトゥス・ソリス※


「…クルトゥス・ソリスってどういう意味だ?」


「"太陽教万歳"という意味じゃ…

 女神ヴィーナスに恨みを持つ、太陽教徒の仕業かの?」


そう説明しながら、ラエルノアは動揺していた。


(今は星暦992年……

 今から5年前に異教徒が世界樹を攻略して印を刻んだ?

 そんな馬鹿な…)


※星暦999年4の月※

※闘争の果ての虚無※

※大覇星帝、遂に現れず※

※まもなく黙示録の笛が鳴る※


「未来じゃと……どういうことじゃ……」


その時、フィズルが青ざめた顔で告げた。


「ラエルノア様……

 この樹の年輪(ねんりん)が……

 ……1,000年以上前を示しております」


!?


――文明再帰説

文明は1000年周期でリセットされ、

再び勃興を繰り返すという説だ。


「誰も触れるな!」


この文字列は、文明再帰説を裏付ける重要な証跡になり得る。

"終末の予言"の解明へと、一歩近づくかもしれない。


※女神様。お助け下さい※


※女神様。お助け下さい※


※女神様。お助け下さい※


その文字列は、星暦999年7の月で途絶えていた。

これにて第一部完です~

第二部は七王国の物語を予定しているよ。


ここまで読んでくれてありがとネ。

ブクマ・評価いただけると大変助かります(>ㅅ<)

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