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夜明けの星の黙示録  作者: アレクサンドル・スケベスキ
第五章 vs赤竜編

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第080話 緊急事態

ペンドラゴンの仲間たちとともに、ゴブリン討伐へ向かう。


今回は山岳地帯での戦いになるため、

“黒馬”ヘングローエンは留守番だ。


まずはアウラとフィズルで、

それぞれ別方向に"探知魔法(エクスプロラーレ)"を展開。

同時に、俺が"円形の探知魔法"を重ねて掛け、情報の確度を高める。

こうして互いの魔法を補完し合いながら、目的地を絞り込んでいくのだ。


そして目的地が決まれば、俺の空間魔法で一気に移動する。


ペンドラゴンでは、こうした"サーチ"&"ワープ"を訓練しながら、クエストに挑む。


訓練を兼ねた実戦だ。

仲間たちと共に、今日も一つ、確かな経験を積みに行く。


「旦那様…見つけました。

 左前方、200m…10体以上。ゴブリンらしき反応です」


左側の索敵を担当していたフィズルが、敵影を捉えた。

その反応は、どうやら何かを追いかけているようだ。

追いかけられているのは弱い生命反応…小動物だろうか?


「ああ、12体いる。

 これは…狩りをしているのか?

 2体は生命反応が強いぞ」


俺は情報を補完しながら、仲間たちに声をかける。


「皆準備してくれ。

 敵から20m程離れて、ワープホールを設置するぞ」


「「はい!」」


イヴとリーシャが魔法を唱える。


「「ディグ(良質な)ノドス(無属性)バリス(盾の魔法)」」


まだ彼女たちは、戦闘中に盾の魔法を展開することはできない。

なので、こうして事前に展開してから移動するのだ。

もっとも、質の方もまだ低く、

物理的な衝撃にわずかに抵抗できる程度なのだが。


一方、盾魔法を使えないアウラは、

すでに弓を構え、矢を番えて待機していた。

その姿は、静かに獲物を狙う狩人のように凛としている。


「では行くぞ‥」


"ワープ"


まずは俺からワープホールから身を乗りだす。

周囲を目視したその時、

目に飛び込んできたのは、見覚えのある姿だった。


「ん?」


■ネイ

挿絵(By みてみん)


「ネイ!」


「…!!?アレク!」


俺の声に、ネイが振り向く。

その瞳が俺を捉えた瞬間、彼女は迷うことなく懐に飛び込んできた。


まさか追われているのがネイだとはな…

なぜ一人なのか、色々聞きたいことはあったが、

今は状況の把握が優先だ。


すぐに探知魔法を掛けると、敵全員の位置を特定した。


―――――――――――――――――――

・小鬼(上位種):ゴブリン・ファイター Lv.51

・小鬼(上位種):ゴブリン・アーチャー Lv.44

・小鬼(中位種):ボゴブリン Lv.35

・小鬼(中位種):ボゴブリン Lv.35

・小鬼(中位種):ボゴブリン Lv.28

・小鬼(下位種):ゴブリン Lv.18

・小鬼(下位種):ゴブリン Lv.16

・小鬼(下位種):ゴブリン Lv.16

・小鬼(下位種):ゴブリン Lv.12

・小鬼(下位種):ゴブリン Lv.10

・小鬼(下位種):ゴブリン Lv.9

―――――――――――――――――――


敵の数は11体。数的不利。

上位種も混ざっており、油断はできないが、

…俺達なら問題ないはずだ。


アウラがワープホールから顔を出したのを確認すると、

俺はすぐに指を伸ばし、敵の位置を伝えた。

まずは厄介なアーチャーから仕留める。


「アウラ、100m先だ」

「うん!」


アウラは静かに探知魔法を唱え、敵の位置の補足に努める。

そして、少しばかり集中した後、魔弓を射た。


※シュパン!※

※ギュゥゥゥン※


放たれた矢が、蛇のような唸りを上げながら敵へと向かっていくと、

視認できない森の奥から、探知魔法の反応が一つ消えた。


■アウラ

―――――――――――――――――――

★ 魔法弓 【夢弦(むげん)・オロチ】

└突撃+80 / 貫通+50 / ☆属性魔法+50 / ★追尾+100

―――――――――――――――――――


ゴブリンたち、突如現れた俺たちに一瞬面食らった様子を見せるも、

すぐに態勢を立て直し、こちらを囲むように動き始める。


少し驚いた。

上位種に率いられたゴブリンたちは、こうも動きが違うのかと。


だが、それだけだ。

突如ボゴブリンの1体が、味方のゴブリンたちに襲い掛かる。


■リーシャ

―――――――――――――――――――

★ 魔導書 【八咫の記(やたのき)

└外練+100 / 魔導+80 / ☆詠唱速度:大↑↑↑ / ★神使

―――――――――――――――――――


こちらに向かって突進してきたゴブリンたち。

だが、その足元の土が、突如として崩れ始めると

数体が落とし穴に呑まれた。


■フィズル

―――――――――――――――――――

★ グランドスタッフ 【第六天魔王(だいろくてんまおう)

└外練+100 / 魔術+80 / ☆詠唱速度:大↑↑↑ / ★六重奏

―――――――――――――――――――


混乱に陥った敵陣に、アウラの矢が容赦なく降り注ぐ。

視認できる敵には、"麻痺の魔法(ヴィム・マギア)"を試している様だ。


気が付けば、あれよあれよという間に敵の隊列は崩れ、

生き残ったゴブリンは敗走し始めた。


「後は俺がやる」


仲間にそう伝えると、★ 大金棒 【大激震(だいげきしん)】を取り出した。


俺も対赤竜に向けた戦闘訓練をする。


―――これまで二度の交戦で、分かったことがある。

奴は"抗体"の能力を持っているせいか、

"麻痺の魔法"がほとんど効かない。


だが、"王級の(レガーリス・)雷の光線(ジグス・デル・レイ)"で

赤竜を撃墜できた。雷の魔法は通りがいいのだ。


そして★ 大金棒 【大激震(だいげきしん)】のダメージが通ることも分かっている。


問題は防御面だ。

赤竜の攻撃に、盾の魔法で耐えようとすると、

ジリ貧に追いやられて、死が待っている。


攻撃をくらわせた後は、必ずワープで移動し、

その場に居続けない戦い方を徹底しなければならない。


雷×空間×無属性魔法。

赤竜には、この三重奏で挑む―――



早速、逃げ出すゴブリン・ファイター目掛けて、

威力を下げた魔法を念じる。


"雷の光線の魔法(ジグス・デル・レイ)"


バチっとした音と共に、

ゴブリン・ファイターは雷に貫かれて転倒する。


"空間魔法(ワープ)"


すかさず、ゴブリン・ファイターの元へ移動し、

軽めに【大激震(だいげきしん)】をぶち込む。


「ふんっ!」

※ドゴッ!※


打ったらすぐに移動。そして次の攻撃。


"空間魔法(ワープ)"

"雷の光線の魔法(ジグス・デル・レイ)"



こうして、俺達はゴブリンを全滅させた。


※シャン※

※パァァァア※


イヴが全員に回復を施してくれる。


■イヴ

―――――――――――――――――――

★ 巫女鈴 【聖鈴・神楽(せいれい・かぐら)

└外練+100 / 魔法+40 / ☆魔法(音)+80 / ★魔法(癒)+100

―――――――――――――――――――


「ふぅ…ありがとう、イヴ。皆、怪我は無いか?」


俺が声をかけると、仲間たちはそれぞれ頷き、無事を確認し合う。

ネイは胸を撫で下ろしながらも、目を丸くしていた。


「す…すごい。さすがペンドラゴンっ!」


どうやら安心よりも驚きのほうが勝っているようだが、

こちらとしても、ネイがここにいること自体が驚きだ。


ここはドラコニス山脈の中層~深層に位置する場所である。

上位種が出るような危険地帯で、1人でうろついていい場所じゃない。


「一体どうしたんだよ?」


俺は水とルビー・ブドウを分け与えながら、

ネイに事情を聴くことにした。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


話によると、ネイの所属する"猫耳探検隊"の5人は、

例の年次依頼を受けたかったらしいのだが、

ランクが足りずに正式受注できなかったという。


それでも諦めきれなかった彼女たちは、

ギルドにもクランにも相談せず、

勝手に依頼を遂行することにしたらしい。

一応、ネイはこっそりと受付に報告だけは入れて来たようだが…


(まじかよ……)


最初は、ドラコニス山脈の表層でゴブリンを発見し、追跡していたという。

だが気づけば、いつの間にか森の奥地まで足を踏み入れてしまった。


(いつの間にか"狩られる側"に回っていた、という奴か。

 カラドクもそんなこと言っていたなぁ)


そして、突然の待ち伏せ。

ゴブリンの集団に囲まれ、“猫耳探検隊”は二手に分断されてしまったらしい。

少なくとも、二人はゴブリンに捕らえられたとのことだった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「事情は分かった。俺に任せておけ。

 一先ず、ネイはガルフ・バウまで帰ろうか。送るぞ?」


俺がそう言うと、ネイはすぐに首を振った。


「私も行く!」


その瞳に宿る決意は、揺るぎなかった。

俺は少しだけため息をつき、説得を諦めた。


「……仕方ないな。ネイ、これを貸してやる」


そう言って、以前のレイドで貸した短刀を手渡す。

―――――――――――――――――――

★ 短刀 【地獄痺刃(じごくびじん)

└突撃+80 / 斬撃+50 / ☆貫通+80 / ★麻痺+100

―――――――――――――――――――


ネイは短刀を受け取ると、ウットリとその短刀を眺めた。

そして、その瞳に戦う意思の炎を灯す。


緊急事態だ。

訓練は中止し、強力な探知魔法を展開する。


"偉大なる広域の探知魔法"


魔力が地を這い、周囲の情報を一気に洗い出すと、

すぐに、ゴブリンの巣と思しき反応を捉えた。

ここから約1キロ先の、最も近い巣に標準を定める。


連れ去られているとすれば、ここが一番可能性が高い。


…だが、懸念もある。

強力な生命反応が二つ、はっきりと浮かび上がっているのだ。


「巣と思わしき場所を捉えた。数は52体。

 …飛びぬけて強いやつが、2人いる。

 幻獣種以上だ―――」


仲間たちにそう告げると、一気に空気が張り詰める。

全員が、戦闘に向けた準備を始めた。


入念に装備を確認し、防御魔法を展開。連携の準備を終える。

そうして俺は、空間魔法を展開した。


"ワープ"


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